登録免許税が半額7.5万円になる特定創業支援等事業の使い方

会社設立の費用
投稿日:2026.09.10
登録免許税が半額7.5万円になる特定創業支援等事業の使い方

株式会社の設立登記にかかる登録免許税は、資本金の0.7%、最低でも15万円です。ただし、市区町村が交付する「特定創業支援等事業による支援を受けたことの証明書」を設立登記の申請書に添付すると、この税率が半額の0.35%に下がり、最低額も7万5,000円になります。多くのケースで、7万5,000円の減額です。

この証明書は、申請すればすぐに交付されるものではありません。市区町村が実施する創業塾や個別相談を原則4回以上・1か月以上受け、経営・財務・人材育成・販路開拓の4分野を学んだ人に交付されるものです。設立登記を終えたあとに取得しても、遡って還付を受けることはできません。

この記事では、資本金別の軽減額、証明書の交付までにかかる期間、軽減を受けられなくなる7つのケース、2027年3月31日という適用期限を整理します。

特定創業支援等事業とは?市区町村が証明書を交付する制度

特定創業支援等事業は、産業競争力強化法にもとづく創業支援の枠組みです。市区町村が「創業支援等事業計画」をつくって国の認定を受け、その計画に位置づけられた創業塾・創業セミナー・個別相談などが特定創業支援等事業にあたります。実施するのは市区町村のほか、商工会議所や商工会、金融機関などの連携機関です。


中小企業庁によると、創業支援等事業計画は令和8年(2026年)6月25日現在で1,414件、1,580市区町村が認定を受けています。埼玉県、千葉県、神奈川県、大阪府、兵庫県、福岡県など25府県では、すべての市町村が認定済みです。


証明書の交付を受ける条件は、原則として4回以上かつ1か月以上の継続的な支援を受け、経営・財務・人材育成・販路開拓の4分野の知識を習得することです。講座を1回受講しただけでは対象になりません。受講料は無料のものから数十万円のものまで幅がありますが、証明書の交付手数料は多くの市区町村で無料です。

登録免許税はいくら安くなる?資本金別の早見表

株式会社の設立登記の登録免許税は、通常「資本金の額×0.7%(15万円に満たないときは15万円)」です。軽減措置が適用されると「資本金の額×0.35%(7万5,000円に満たないときは7万5,000円)」になります。税率も最低税額も、ちょうど半額です。


資本金

軽減なし

軽減あり

差額

100万円

15万円

7万5,000円

7万5,000円

500万円

15万円

7万5,000円

7万5,000円

1,000万円

15万円

7万5,000円

7万5,000円

3,000万円

21万円

10万5,000円

10万5,000円

5,000万円

35万円

17万5,000円

17万5,000円


定額(7万5,000円)と定率(0.35%)が切り替わる分岐点は、資本金2,142万8,572円です。つまり資本金がおよそ2,143万円以下であれば、軽減額は一律で7万5,000円になります。資本金の額の決め方は「資本金はいくらが目安?平均額と決め方の判断材料5つ(準備中)」、税額の計算方法と納付手順は「会社設立登記費用と登録免許税(印紙代)の計算と納付手順を解説(準備中)」で解説しています。


合同会社の場合は最低税額6万円が3万円になります。なお令和6年度税制改正により、合名会社と合資会社の設立登記は適用対象から除外されました。現在この軽減措置を使えるのは、株式会社と合同会社の設立登記だけです。

登録免許税以外に受けられる3つの優遇措置

証明書で受けられる優遇措置は、登録免許税の軽減だけではありません。中小企業庁は、あわせて4つの措置を挙げています。


優遇措置

内容

他市区町村での創業

登録免許税の軽減

株式会社は最低15万円が7万5,000円に

使えない

創業関連保証の特例

無担保・第三者保証人なしの創業関連保証を、事業開始の6か月前(通常は2か月前)から利用できる

使える

新規開業・スタートアップ支援資金

日本政策金融公庫の同資金で、基本金利から0.40%引き下げた特別利率が適用される

使える

小規模事業者持続化補助金<創業型>

補助上限200万円・補助率3分の2の創業型の申請対象になる

使える


注意したいのは右端の列です。登録免許税の軽減だけは、証明書を交付した市区町村の区域内に本店を置く場合に限られます。融資や補助金の優遇は他の市区町村で創業しても対象で、日本政策金融公庫の利率引き下げについては、国の支援施策の見直しにより令和8年(2026年)3月2日から他市区町村での創業も対象になりました。

証明書の交付を受けるまでの流れと必要な期間

手続きは、おおむね次の順に進みます。


  1. 本店を置く予定の市区町村が認定を受けているかを、中小企業庁の一覧で確認する
  2. その市区町村の特定創業支援等事業に申し込み、受講する(支援期間は事業により1か月〜6か月)
  3. 実施機関から修了証など、支援を受けたことを証する書類の交付を受ける
  4. 市区町村へ証明書の交付を申請する
  5. 交付された証明書の原本を、設立登記の申請書に添付して法務局へ提出する


期間の目安は、受講そのものに最低1か月、証明書の申請から交付までに大阪市の場合で概ね10日程度です。郵送期間も含めると、設立を希望する日の2か月前には受講を始めている計算になります。


ただし創業塾は開催時期や定員が決まっているものが多く、年に数回しか実施されない講座もあります。次の開講が3か月先ということも起こるため、設立スケジュールを決める前に自治体の講座の募集時期を確認しておくのが確実です。通年でオンライン受講できる事業を用意している自治体もあります。

登録免許税の軽減を受けられない7つのケース

証明書を取得していても、次のいずれかに当てはまると登録免許税の軽減は受けられません。


ケース

結果

対応

設立登記のあとに証明書を取得した

遡って還付されない

設立登記の前に取得する

証明書を交付した市区町村以外に本店を置いた

登録免許税の軽減のみ対象外

本店を置く市区町村で受講する

2社目の設立、または事業承継

証明書自体が交付されない

対象外

代表取締役以外が受講した

軽減を受けられない

代表者本人が受講する

代表者が複数いて分担して受講した

軽減を受けられない

代表者1名がすべて受講する

商号や本店が未確定のまま証明を申請し、登記内容と食い違った

軽減を受けられない可能性がある

商号・本店を決めてから申請する

証明書の交付後に本店所在地を変更した

証明書が無効になる可能性がある

変更後に再度交付を申請する


特に見落としやすいのが下の3つです。共同代表で立ち上げる場合でも受講を2人で分け合うと要件を満たさず、代表者1名が4回すべてを受講する必要があります。また、証明書には商号や本店所在地が記載されるため、社名が決まらないうちに取得しておくと、登記申請の内容と一致せず軽減を受けられないことがあります。


なお、会社設立以外の登記(役員変更登記など)や、設立済みの会社の組織変更は軽減の対象になりません。

適用期限は2027年3月31日|登記を受ける日が基準

この軽減措置の根拠は租税特別措置法第80条第2項です。令和6年度税制改正で適用期限が3年延長され、現行の期限は令和9年(2027年)3月31日までに登記を受けるものとされています。基準になるのは受講日でも証明書の交付日でもなく、設立登記を受ける日です。


証明書自体の有効期限も、この期限に連動しています。大阪市や川崎市の場合、有効期限は「証明日から令和9年3月31日」または「創業から5年を経過する日」のいずれか早いほうです。


延長されるかどうかは各年度の税制改正で判断されるため、2027年4月以降の取扱いは現時点では決まっていません。設立を予定しているなら、期限内に登記まで終えられるスケジュールかを先に確認しておくと安心です。


会社設立の費用は、登録免許税のほかに定款認証手数料などの実費があります。総額の内訳は「会社設立の費用の総額はいくら?かかる費用の内訳早見表つき」、抑えられる部分は「会社設立の費用を安く抑える5つの方法と削れない実費を解説」でまとめています。

出典

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