定款の印紙税4万円はなぜ不要?紙と電子定款の違い

会社設立の費用
投稿日:2026.09.09
定款の印紙税4万円はなぜ不要?紙と電子定款の違い

電子定款で作成すれば、定款の印紙税4万円はかかりません。印紙税が課されるのは紙で作成した定款の原本だけで、電子データにはそもそも課税されないためです。

この4万円は「節約テクニック」として紹介されることが多いのですが、正確には割引や特例ではありません。課税の対象そのものに当たらない、という仕組みの違いです。この区別を知らないまま進めると、パソコンで作成した定款を印刷して公証役場に持ち込み、結局4万円を支払うことになります。電子定款とは、印刷せずに電子データのまま認証を受けるものを指すからです。

この記事では、印紙税が課される定款の範囲、電子定款が非課税になる根拠、紙のまま進める場合に印紙を貼る通数、紙と電子で変わる費用の内訳を、国税庁と公証人手数料令の規定にもとづいて整理します。

定款の印紙税は4万円。課税されるのは紙で作った設立時の原本だけ

定款は、印紙税法別表第一の第6号文書にあたります。税額は1通につき4万円です。


ただし課税されるのは、株式会社・合名会社・合資会社・合同会社・相互会社の設立のときに作成される定款の原本に限られます。この限定があるため、同じ「定款」という名前でも課税されないものが多くあります。


定款の種類

印紙税

株式会社の設立時に紙で作成した原本(公証人が保存する分)

4万円

電子データで作成・認証を受けた定款

かからない

設立後に変更した定款、原本の写し

かからない

一般社団法人・一般財団法人・特定目的会社などの定款

かからない


一般社団法人や一般財団法人の定款も公証人の認証が必要ですが、印紙税法で課税対象とされている会社には含まれないため、課税されません。また株式会社の定款は公証人の認証を受けることが効力の要件になっているため、認証を受けていない段階のものは印紙税法上の定款にあたりません。


いずれも国税庁の質疑応答事例「課税される定款の範囲」および「No.7141 印紙税額の一覧表(その2)」に示されています。

電子定款に印紙税がかからないのは「文書」に当たらないから

印紙税の課税対象は、印紙税法の課税物件表に掲げられた文書です。電磁的記録、つまり電子データは文書に含まれません。


国税庁は質疑応答事例「取引先にメール送信した電磁的記録に関する印紙税の取扱い」で、現物の交付がなされない以上、電磁的記録を送信しても課税文書を作成したことにはならず、課税原因は発生しないとしています。

つまり電子定款の4万円は、値引きされているのでも、免除されているのでもありません。課税される場面が最初から存在しない、というだけです。

印刷して提出すると、電子で作っても紙定款になる

同じ質疑応答事例は、電子データを送信したあとに現物を別途交付した場合には課税文書の作成に該当する、とも示しています。定款も同じ考え方です。


  • Wordで作成し、印刷して公証役場に提出する → 紙定款。4万円が必要
  • PDFに電子署名を付し、データのまま認証を受ける → 電子定款。印紙税なし


作成にパソコンを使ったかどうかは関係ありません。分かれ目は、公証人に提出するのが紙かデータかです。

紙定款は3通そろうが、印紙を貼るのは1通だけ

公証人法第62条の3により、認証を受けるには定款2通を提出します。1通は公証人が保存し、もう1通は認証後に返還されます。これに登記申請へ添付する謄本を加えると、手元には3通の定款がそろうことになります。


ここで「4万円×3通で12万円かかるのか」と迷う方がいますが、印紙を貼るのは1通だけです。公証人が保存するものだけが課税対象で、返還されるものは非課税物件と定められているためです(第6号文書の非課税物件欄)。


用途

印紙

公証人が保存する原本

4万円が必要

認証後に返還され、会社で保存する分

不要

登記申請に添付する謄本

不要


印紙の貼付と消印は、認証当日に公証役場で行うのが一般的です。事前に購入して貼っておくかは、予約時に公証役場へ確認してください。

紙と電子で変わる費用・変わらない費用

印紙税以外の費用も含めて並べると、差が出るのは印紙税だけではありません。


費用

紙定款

電子定款

印紙税

4万円

0円

定款認証手数料

1万5,000円〜5万円

同額

謄本・同一情報の交付

1枚250円

1通700円

電磁的記録の保存

─

300円


定款認証の手数料は、紙か電子かでは変わりません。 資本金の額等で決まり、100万円未満は3万円(発起人が全員自然人で3人以下などの3条件をすべて満たす場合は1万5,000円)、100万円以上300万円未満は4万円、それ以外は5万円です(公証人手数料令第35条)。条件の詳細は「定款認証の手数料|1.5万円になる3条件と資本金別早見表」で解説しています。


謄本の交付は紙定款が1枚250円(同令第40条第2項)なので、定款が8枚なら2,000円です。電子定款では代わりに、電磁的記録の保存300円(第41条の2)と、同一の情報であることの証明1通700円(第41条の3)がかかります。


差額はおおむね4万円弱と考えて差し支えありません。会社設立全体でかかる費用の内訳は「会社設立の費用の総額はいくら?かかる費用の内訳早見表つき(準備中)」にまとめています。

電子定款を自分で作るときに必要なもの

4万円が不要になる代わりに、電子定款には準備が必要です。法務省「電磁的記録の認証(定款を含む私署証書の認証)の嘱託」が示す前提は次のとおりです。


  • 電子証明書:マイナンバーカードの公的個人認証サービス、商業登記に基づく電子証明書、セコムパスポート for G-ID、e-probatio PS2のいずれか
  • ICカードリーダー:電子証明書がICカードに格納されている場合に必要
  • Adobe Acrobat:PDFの作成と電子署名の付与に使用
  • 登記・供託オンライン申請システム:申請者情報の事前登録と、申請用総合ソフトのインストールが必要
  • 電子媒体:認証後の定款はCD-RやUSBメモリなどで交付されるため持参が必要(インターネット経由の交付は不可)


ソフトの購入費とICカードリーダー代、環境構築の時間を考えると、1社だけ設立するために自分で環境を整えると、4万円の差が小さくなることもあります。手順の詳細は「電子定款の作り方|自分で作る手順と必要なソフト一覧」で解説しています。


司法書士や行政書士に依頼する場合は、依頼先が電子署名を行うため、これらの準備は不要です。

印紙の貼り忘れ・消印漏れをしたときの扱い

紙定款で印紙を貼らなかった場合、過怠税がかかります。


状況

過怠税

印紙を貼らなかった

本来の印紙税額とその2倍の合計。4万円なら12万円

調査を受ける前に自ら申し出た

本来の印紙税額の1.1倍。4万円なら4万4,000円

貼ったが消印をしなかった

消印されていない印紙の額面と同額


国税庁「No.7131 印紙税を納めなかったとき」に定めがあります。消印は、作成者または代理人の印章か署名で行います。


なお、印紙を貼らなかったことによって定款そのものが無効になるわけではありません。印紙税は文書の作成に対する課税であり、定款の効力の要件ではないためです。ただし過怠税は本来の3倍になるため、紙で進めると決めた場合は貼り忘れに注意してください。

誤って貼った印紙は還付を受けられる場合がある

逆に、貼る必要のない定款に印紙を貼ってしまった場合は、還付を受けられることがあります。国税庁「No.7130 誤って納付した印紙税の還付」が対象としているのは、次のようなケースです。


  • 課税文書に該当しない文書を課税文書と誤認して、収入印紙を貼り付けたもの
  • 課税文書に貼り付けた収入印紙が、必要な税額より過大なもの
  • 課税文書の用紙に収入印紙を貼り付けたが、使用する見込みがなくなったもの


定款で起こりやすいのは1つ目です。返還されて会社で保存する分にも4万円を貼ってしまった場合、その1通は非課税物件なので、課税文書と誤認して貼ったことになります。定款を作り直して使わなくなった用紙に貼っていた場合は、3つ目に当たります。


手続きは、「印紙税過誤納確認申請(兼充当請求)書」に記入し、印紙が過誤納になっている文書の現物とあわせて、文書の作成場所を管轄する税務署に提出・提示します。


ここで注意したいのが、印紙を切り取ったり、用紙からはがしたりすると還付の対象にならないという点です。貼ってしまったと気づいても、そのままの状態で持ち込んでください。


一方、公証人が保存する原本に貼った4万円は、正しく納付したものなので還付の対象になりません。還付されるのは過誤納の場合に限られます。


定款に何を書くか、どの順で作成を進めるかは「株式会社の定款の作り方|記載事項の全項目とひな形(準備中)」にまとめています。


執筆者

執筆者:GVA 法人登記 編集部(GVA TECH株式会社)/ 監修:GVA 法律事務所 コーポレートチーム

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