一般社団法人が拠点(主たる事務所)を移す際には、法務局での登記申請が義務付けられています。しかし、多くの代表者の方が「手続きが複雑で何から始めればよいかわからない」「必要書類や費用はどの程度かかるのか」「期限内に正しく手続きできるか不安」といった悩みを抱えているのではないでしょうか。
この記事では、一般社団法人の事務所移転登記について、基本的な仕組みから法務局での具体的な申請方法をわかりやすく解説します。初めて登記申請を行う方でも安心して手続きを進められるよう、事前に確認すべき注意点や申請方法の比較まで紹介するので最後までご覧ください。
一般社団法人の事務所移転登記とは?
一般社団法人の事務所移転登記とは、正しくは「主たる事務所移転登記」と言い、事務所の所在地を変更した際に、その変更内容を法務局に申請し、登記簿に記録する手続きです。
一般社団法人の事務所には、主たる事務所(本店)と従たる事務所(支店)があり、どちらも登記が必要です。ただし、主たる事務所の管轄法務局でまとめて登記できます。
主たる事務所移転登記は、2週間以内に行わなければならず、期限内の登記を怠った場合は、100万円以下の過料に処される可能性があります。
一般社団法人の事務所移転登記を法務局で申請する方法
事務所移転登記を法務局で申請するための具体的な手順と方法について解説します。
法務局で事務所移転登記を申請する流れ
事務所移転登記は、以下の流れで進めていきます。
- 必要書類を準備する:定款変更の有無により必要書類は異なります(詳細は次章を参照)
- 申請書を作成する:管轄外への移転では、移転前と移転後の両方の法務局向けに申請書が2枚必要
- 法務局に申請する:窓口、郵送、電子申請の3つの方法から選択
- 変更内容を確認する:登記事項証明書を取得して正しく反映されているかを確認
申請方法は、法務局の窓口での直接申請のほか、郵送による申請や電子申請システムを利用した申請も可能です。各方法にはそれぞれメリット・デメリットがあるため、状況に応じて適切な方法を選択しましょう。
事務所移転登記に必要な書類
事務所移転登記に必要な書類は、定款変更の有無によって異なります。
定款変更が必要な場合
書類名 | 内容 |
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主たる事務所移転登記申請書 | 法務局に提出する登記のメイン書類 管轄外移転の場合は、移転前と移転後の法務局用にそれぞれ必要 |
社員総会議事録 | 定款変更を決議した会議の記録 |
理事会議事録 (理事決定書) | 移転を決議した理事会の内容を記録 理事会設置会社でない場合は理事決定書を添付 |
委任状 | 代理人が申請する場合に必要 |
登録免許税(収入印紙) | 管轄外:6万円 管轄内:3万円 |
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定款変更が不要な場合
書類名 | 内容 |
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主たる事務所移転登記申請書 | 法務局に提出する登記のメイン書類 |
理事会議事録 (理事決定書) | 移転を決議した理事会の内容を記録 理事会設置会社でない場合は理事決定書を添付 |
定款の写し | 理事会設置会社、かつ理事会議事録の署名押印者が「出席代表理事及び監事」の場合に必要 |
委任状(任意) | 代理人が申請する場合に必要 |
登録免許税(収入印紙) | 3万円 |
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登記申請書は、法務局のウェブサイトからダウンロードできる様式を使用できます。
2025年4月の制度改正により、事務所移転登記において印鑑届書は原則不要となりました。必要書類は、定款の内容や法人の機関設計によって異なるため、事前に確認しておくことが大切です。
事務所移転登記の申請書テンプレート
事務所移転登記の申請書は、管轄登記所内で移転する場合と管轄登記所外で移転する場合とで、記載内容が異なるので注意が必要です。
〇管轄登記所内で移転する場合
主たる事務所を、管轄登記所内で移転する場合、登記の事由を「主たる事務所」とし、所在地には「変更前」の主たる事務所を記載します。変更後の所在地は、「登記すべき事項」に記入します。
GVA法人登記が提供するテンプレートもぜひご活用ください。
主たる事務所移転登記申請書のテンプレートダウンロード
〇管轄登記所外で移転する場合
管轄登記所外に主たる事務所を移転する場合は、「変更前の管轄登記所」宛てと「変更後の管轄登記所」宛ての申請書を1部ずつ作成します。申請書の記入では、以下の点に注意します。
- 「変更前の管轄登記所」宛て:「主たる事務所」には、変更前の所在地を記載
- 「変更後の管轄登記所」宛て:「主たる事務所」には、変更後の所在地を記載
上記の申請書を1部ずつ準備できたら、「変更前の管轄登記所」に提出します。この点もわかりにくいため、注意が必要です。GVA法人登記が提供するPDFフォーマットを活用し、スムーズに手続きを進めましょう。
主たる事務所移転登記申請書のテンプレートダウンロード
法務局で事務所移転登記を申請する前の注意点
スムーズな登記申請のために、事前に確認しておくべき重要なポイントを解説します。
定款変更が必要かどうかを確認する
事務所移転に際して定款変更が必要かどうかは、定款に記載されている主たる事務所の住所の表記方法によって決まります。
パターン1:詳細な住所まで記載している場合
定款に番地まで詳細に記載されている場合、住所のどの部分が変わっても定款変更が必要です。同じ建物内での移転や別の区への移転でも、全て社員総会での特別決議による定款変更と登記申請の両方が必要となります。
パターン2:最小行政区画までしか記載していない場合
定款に市区町村までしか記載していない場合、移転先によって手続きが変わります。
- 同じ建物内での移転:定款変更不要、理事会決議または理事の過半数同意で登記申請のみ
- 同じ区内での移転:定款変更不要、理事会決議または理事の過半数同意で登記申請のみ
- 別の区市町村への移転:定款変更が必要、社員総会での特別決議による定款変更と登記申請が必要
定款変更を行う場合は、社員総会での特別決議(総社員の議決権の3分の2以上の賛成)が必要となり、同時に定款変更登記も申請する必要があります。
移転先の所在地の管轄法務局を確認する
移転先の住所について、管轄法務局を確認しなければなりません。管轄法務局は、以下の法務局のページで確認できます。
法務局「管轄のご案内」
https://houmukyoku.moj.go.jp/homu/static/kankatsu_index.html
事務所移転登記にかかる時間を考慮する
登記申請は、事務所移転から2週間以内に行わなければなりません。登記は、申請してから完了するまで、一定の時間がかかりますので、必要書類の準備期間を考慮すると、遅くても1ヶ月前から準備をしておくと良いでしょう。
特に定款変更を伴う場合は、社員総会の開催や議事録の作成が必要となります。法務局の繁忙期と重なると、さらに時間がかかる可能性がありますので、移転が決まり次第、準備に取り掛かることをおすすめします。
一般社団法人の変更登記を申請する方法の比較
一般社団法人の変更登記には複数の申請方法があり、それぞれ特徴が異なります。最適な方法を選択するための比較をご紹介します。
比較項目 | 自分で 法務局に申請 | 司法書士に依頼 | GVA法人登記 (自動書類作成サービス) |
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費用(※1) | 0円 | 平均47,168円(※2) | 1.2万円~(※3) |
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登録免許税 | 3万円(管轄内移転) 6万円(管轄外移転) | 3万円(管轄内移転) 6万円(管轄外移転) | 3万円(管轄内移転) 6万円(管轄外移転) |
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手間・労力 | 時間がかかる | 必要な書類や情報の共有 | 必要な情報をフォームに入力するだけで書類作成が可能 |
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申請方法 | 自分で法務局に申請 | 司法書士にお任せ | 法務局へ提出、または 郵送申請オプション利用 |
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専門知識 | 必須 | 不要 | 案内に従い書類作成可能 |
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ミスのリスク | 高い | ほぼなし | 少ない |
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おすすめな人 | 費用をとにかく抑えたい方 | 忙しくて手続きを任せたい方 | 手間と費用をかけたくない方 |
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※1費用は登録免許税を除いた額です
※2 日本司法書士連合会のアンケートによる
※3 本店移転・役員変更・商号変更・目的変更・株式分割・支店変更・募集株式の発行(増資)・剰余金等の資本組入れ
司法書士に依頼して申請してもらう
比較表のうち、司法書士に依頼して登記申請をする方法について、メリットとデメリットをまとめます。
メリット
- 専門知識と豊富な経験により、確実かつ迅速な手続きが期待できる
- 書類作成や申請に関する時間と労力を大幅に削減できる
- 複雑なケースや特殊な状況にも適切に対応してもらえる
- 法務局からの補正指示などにも専門家が対応
デメリット
- 報酬が発生するため、総費用が最も高くなる
- 信頼できる司法書士の選定に時間がかかる場合がある
- 司法書士との連絡調整や必要情報の提供が必要
司法書士に依頼すれば、書類作成から申請まですべて任せられます。忙しくて手続きに時間を割けない方や、複雑な移転パターンで専門的な判断が必要な場合におすすめです。
書類作成サービスのGVA 法人登記を利用して申請する
GVA法人登記は、オンラインで必要事項を入力するだけで、登記申請に必要な書類を自動作成できるサービスです。司法書士報酬などのコストを抑えたいが、スムーズに手続きしたい場合に最適です。
メリット
- 専門知識がなくても、フォームに入力するだけで正確な書類が作成できる
- 司法書士に依頼するよりも費用は抑えられる
- 24時間いつでも利用でき、短時間で書類作成が完了
デメリット
- 特殊な状況や複雑なケースでは対応できない場合がある
- サービス利用料が発生する
登記申請を控えており、費用を抑えて確実に申請したい方は、以下のページで詳細をご確認ください。
https://corporate.ai-con.lawyer/
GVA法人登記なら法務局に行かずに登記申請できます
法人の変更登記について、「手続きが複雑で時間がかかりそう」「専門知識がないため不安」「司法書士に依頼すると費用が高額になる」といった悩みを抱えていませんか。このような課題を解決するのが、登記申請書類の作成サービス「GVA法人登記」です。
※GVA 法人登記では現在、一般社団法人の主たる事務所移転登記には対応しておりませんのでご注意ください。対応している類型はこちらからご確認ください。
GVA法人登記には次のようなメリットがあります。
- 専門知識がなくても、最短7分で登記書類が完成する
- 複数の申請書類がフォームに入力するだけで同時に作成できる
- かんたん郵送パックを選べば法務局に行かず登記申請が完了する
- 司法書士に依頼するよりも安価に書類が作成できる
このようなGVA法人登記の特徴や強み、自分で登記する場合や司法書士に依頼する場合と比べると、
- 初めて登記申請を行う方で手続きに不安がある
- 専門家への依頼費用を抑えたい
- 本業に集中しながら効率的に登記手続きを進めたい
などの方におすすめです。
GVA法人登記を活用して、効率的に登記手続きを完了させましょう。GVA法人登記では、どのようなことができるのか、どのような登記に対応できるかなど、詳しくは、以下のリンクからご確認ください。
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事務所移転登記は負担の少ない方法で申請しよう
一般社団法人の事務所移転登記は、準備と手順がしっかりしていれば、スムーズに進められます。法務局への申請は、定款変更の有無の確認、必要書類の準備、申請書の作成、法務局への提出、登記完了の確認という流れで進めます。
特に重要なのは、定款の記載内容や移転先の所在地によって、定款変更の必要性や決議の種類が異なることです。詳細な住所まで記載された定款では全ての移転で定款変更が必要ですが、市区町村レベルの記載であれば同一市区町村内の移転では定款変更は不要です。
登記申請の方法には、自分で全て行う方法、司法書士に依頼する方法、書類作成サービスを使う方法があります。それぞれにメリット・デメリットがあるため、費用、時間、専門知識の有無などを総合的に考慮して最適な方法を選択することが大切です。
GVA法人登記のような専門的な書類作成サービスを活用すれば、初めてでも安心して書類を準備でき、費用と手間のバランスを取りながら効率的に登記申請を進められます。適切な方法を選択して確実に手続きを完了させましょう。
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執筆者:GVA 法人登記 編集部(GVA TECH株式会社)/ 監修:GVA 法律事務所 コーポレートチーム
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