会社設立のメリット・デメリットは?法人化の損益分岐点

会社設立の形態選択
投稿日:2026.10.21
会社設立のメリット・デメリットは?法人化の損益分岐点

会社設立の主なメリットは、法人税率と所得税の累進課税を比べて選べること、赤字を10年繰り越せること、取引や採用で選択肢が広がることです。主なデメリットは、社会保険への加入が必要になること、赤字でも法人住民税の均等割がかかること、決算・申告の手間が増えることです。

どちらが大きいかは、利益の水準や役員報酬の設定、家族の状況で変わります。そのため「年収◯万円から法人化が得」とは一律に言えません。判断の軸になるのが、法人化で増える負担と減る負担がつり合う利益の水準、いわゆる損益分岐点です。

この記事では、メリット・デメリットを早見表で整理し、損益分岐点の考え方と試算で見落としやすい項目を、国税庁や協会けんぽなどの公的資料にもとづいて解説します。

会社設立のメリット・デメリット早見表

根拠は次の章で確認します。


観点

メリット

デメリット

税金

法人税率が適用される

申告する税の種類が増える

社会保険

厚生年金に加入できる

保険料の半分を会社が負担する

赤字

欠損金を10年繰り越せる

赤字でも均等割がかかる

消費税

資本金1,000万円未満なら最大2期は原則免税

登録や売上次第で免税にならない

信用・取引

法人を条件とする相手と取引できる

設立と維持にコストがかかる

お金の管理

会社と個人のお金が分かれる

役員報酬は原則毎月同額

手続き

会社として事業を区切れる

決算・申告が増え、解散時は清算が必要

メリットを確認する:税率・赤字の繰越・消費税

税率の仕組みが変わる。 個人事業主の所得税は、所得が増えるほど税率が上がる累進課税です(5%〜45%、速算表は後述)。資本金1億円以下の中小法人は、年800万円以下の所得に15%、超える部分に23.2%の法人税率が適用されます(国税庁No.5759、令和7年4月1日以後開始の事業年度)。ただし法人化すると、会社の利益に法人税等がかかり、受け取る役員報酬にも所得税・住民税がかかります。 赤字を長く繰り越せる。 法人の欠損金は、青色申告なら10年(平成30年4月1日以後に開始する事業年度)繰り越せます(国税庁No.5762)。個人事業主の青色申告の純損失は3年です(国税庁No.2070)。


消費税が一定期間免税になる。 新設法人は基準期間がないため、期首の資本金が1,000万円未満なら、原則として設立1期目・2期目は免税です。適格請求書発行事業者の登録をしている場合や、2期目の特定期間(1期目の開始から6か月間)の課税売上高が1,000万円を超える場合などは免税になりません(国税庁No.6503)。詳しくは「資本金1000万円で設立は損?消費税が免税にならない条件」で解説します。

デメリットを確認する:増える固定費と手間

社会保険の保険料が発生する。 法人化すると、役員報酬を受ける代表者も健康保険・厚生年金に加入します。協会けんぽ東京支部の令和8年度の健康保険料率は9.85%(40〜64歳は介護保険料率1.62%が加わる)、厚生年金は18.3%で、会社と本人が折半します。令和8年4月分から、子ども・子育て支援金(0.23%)も加わりました(協会けんぽ、日本年金機構)。


赤字でも均等割がかかる。 東京23区に本店のみで、資本金等1,000万円以下・従業者50人以下の法人は、年7万円です(東京都主税局)。金額は自治体や規模で異なります。維持費は「法人化の費用と会社設立後の維持費は?赤字でもかかる年7万円」で解説します。


役員報酬を自由に動かせない。 役員報酬は、毎月同額の「定期同額給与」などでないと損金に算入されません。期中に変えられるのは、期首から3か月以内の改定、臨時改定事由、業績悪化改定事由の場合に限られ、一時的な資金繰りは含まれません(国税庁No.5211)。

法人化の損益分岐点とは

損益分岐点とは、ここでは「法人化で増える負担と減る負担が等しくなる利益の水準」を指します。上回るほど法人の総負担が小さくなる可能性があり、下回るほど個人事業のほうが小さくなる可能性があります。比べる負担は次のとおりです。


  • 個人事業のまま:所得税・復興特別所得税、住民税、個人事業税、国民健康保険料・国民年金保険料
  • 法人化後:法人税等、役員報酬への所得税等、社会保険料(会社・本人負担分)、均等割、決算・申告費用、設立費用


結果は役員報酬の額や家族構成で変わり、利益額だけで一つの金額は決まりません。参考に、個人の所得税の速算表を示します(国税庁No.2260)。ほかに復興特別所得税と住民税がかかります。


課税される所得金額

税率

控除額

195万円未満

5%

0円

195万円以上330万円未満

10%

97,500円

330万円以上695万円未満

20%

427,500円

695万円以上900万円未満

23%

636,000円

900万円以上1,800万円未満

33%

1,536,000円

1,800万円以上4,000万円未満

40%

2,796,000円

4,000万円以上

45%

4,796,000円

損益分岐点の試算で見落としやすい5項目

試算の前に、次の5項目を確認してください。


① 役員報酬の額。 会社の利益と個人の給与に分かれ、期中に調整しにくい点も織り込みます。


② 事業税。 個人事業税は業種別に3〜5%、事業主控除は290万円です(東京都主税局)。法人事業税は別の計算です。


③ 社会保険と将来の給付。 国民健康保険・国民年金から健康保険・厚生年金に変わり、被扶養者の扱いや将来の年金額も変わります。


④ 免税期間の終わり。 免税は最大2期です。終了後の納税額も試算に入れます。


⑤ 初期費用と維持費の回収期間。 設立費用は「会社設立の費用の総額はいくら?かかる費用の内訳早見表つき」で内訳を確認できます。


なお、本記事は制度の一般的な説明です。個別の判断は、税理士や所轄の税務署、年金事務所にご確認ください。

法人化を決めたら読む記事

判断材料がそろったら、次の記事へ進んでください。


出典

今すぐ変更登記手続きを始める