合同会社は上場できる?上場するための手順・準備を解説

合同会社の基礎知識
投稿日:2026.02.18
合同会社は上場できる?上場するための手順・準備を解説

創業当時は「とりあえず安く法人化できればいい」と考えて合同会社を設立された方も多いはずです。それは決して間違いではありません。しかしステージが変われば、必要な「器」も変わります。

本人も思っていなかったレベルの成長の兆しが見えたときに「上場」を意識する方もいらっしゃるかもしれません。しかし、合同会社が上場するというのは果てしなく高いハードルがあるのです。

本記事では、なぜ合同会社では上場できないのか、そして上場を目指すためにはどのような手順で会社という「器」を作り変えていけばよいのかについて解説します。

結論として、合同会社は上場(IPO)できない

いきなり結論ですが、合同会社のままでは、日本のどこの市場にも上場することはできません。
「東証グロース市場ならベンチャー向けだからいけるのでは?」 「プロ投資家向けのTOKYO PRO Marketなら大丈夫では?」

このように考える方もいらっしゃいますが、残念ながら答えはすべて「NO」です。 日本国内の証券取引所に上場できるのは、会社法上の「株式会社」のみと定められています。

なぜ、合同会社が「上場できないこと」を知らなかったのか

創業時、多くの起業家は「目の前のお客さまを獲得すること」「来月の資金繰りをどうするか」で頭がいっぱいです。 「将来上場するときに困るから株式会社にしておこう」と先回りして考える余裕がある方は少数派です。また、合同会社は設立費用が安く(登録免許税が最低6万円)、手続きもシンプルなため、スモールスタートには最適な選択肢でした。

今の会社が合同会社であることは、過去の賢明な判断の結果であり、失敗ではありません。 ただ、事業が予想以上に成長し、次のフェーズ(上場)に進むためには、株式会社への組織変更という手続きが避けては通れなくなる可能性があるという事実だけは受け入れる必要があります。

合同会社が上場できない理由

「同じ法人なのに、なぜ合同会社はダメなのか?」 その理由は、単なる法律の規定以上の、会社の仕組みの根本的な違いにあります。

1. 「株式」が存在しない(所有と経営の一致)

上場(IPO)とは、自社の株式を証券市場で不特定多数の投資家に売買してもらう仕組みです。
株式会社は「所有(株主)」と「経営(取締役)」が分離しています。お金を出す人と、経営する人が別々でも成り立つ仕組みです。だからこそ、顔も知らない投資家が株主になれるのです。

一方、合同会社には「株式」がありません。あるのは「持分(もちぶん)」です。 そして、合同会社は「出資者=社員(経営者)」という「所有と経営の一致」が大原則です。 お金を出した人(社員)が経営を行う、というクローズドな組織形態なのです。


2. 資金調達の制限(投資家が参入できない)

上場の目的の一つは、市場から巨額の資金を調達することです。 しかし、合同会社は「株式を発行して資金を集める」ことができません。
ベンチャーキャピタル(VC)やエンジェル投資家は、出資の見返りに「株式」を受け取り、将来その株価が上がったときに売却して利益(キャピタルゲイン)を得ることを目的としています。 合同会社にはこの「株式によるキャピタルゲイン」の仕組みがありません。

また、合同会社に出資するということは「社員(経営陣)」になることを意味します。 投資家は「お金は出したいが、会社の債務に対する責任を負ったり、経営実務に巻き込まれたりするのは困る」と考えます。そのため、合同会社のままでは外部からの大規模な資金調達ができず、上場の前提となる資本政策が組めないのです。


3. M&Aや事業承継の難易度

上場企業は、株式交換などを使って他社を買収したり(M&A)、逆に買収されたりすることがあります。 合同会社の場合、持分を譲渡するには「社員全員の同意」が必要になるケースが多く、流動性が極めて低いです。 「いつでも、誰でも、公正な価格で売買できる」という上場企業の条件を、合同会社の仕組みでは満たすことができません。

合同会社が上場するための手順・準備

では、現在合同会社である企業が上場を目指すには、具体的にどうすればよいのでしょうか。 「とりあえず株式会社にすればいい」という単純な話ではありません。上場審査に耐えうる組織にするためには、綿密な計画が必要です。


手順1:株式会社への「組織変更」

最初の一歩であり、絶対条件です。 合同会社から株式会社へ、法人の種類を変更します。これを「組織変更」と呼びます。 新しく会社を作り直すのではなく、法人格を維持したまま中身を変えるため、契約関係や許認可の多くはそのまま引き継ぐことができます。

  • 期間:手続き開始から登記完了まで約1.5ヶ月〜2ヶ月
  • コスト:登録免許税(最低6万円)+官報公告費(約3.5万円)+専門家報酬


手順2:社内ルールの見直し(内部統制)

ここが最大のハードルです。 合同会社は「定款自治」といって、法律よりも社内の話し合い(定款)で自由にルールを決められるのがメリットでした。 しかし、株式会社、特に上場企業になると、会社法や金融商品取引法に基づいた厳格なルール運用が求められます。

  • 機関設計:取締役会、監査役会、会計監査人などを設置する。
  • 規程の整備:取締役会規程、経理規程、職務権限規程など、数十種類の社内規程を作成・運用する。
  • 予実管理:精緻な予算管理と月次決算を行う。

合同会社の「自由でアットホームな雰囲気」から、「規律ある上場企業」へとカルチャーを変革する覚悟が必要です。


手順3:監査法人による監査(N-2期問題)

上場申請するためには、直前2年間(N-2期、N-1期)の決算書について、監査法人の監査証明を受ける必要があります。 監査法人は「株式会社としての経理処理や内部統制」が適正かどうかをチェックします。

つまり、「上場したい!」と思った日から最短でも3年(3期)程度の準備期間が必要になります。
「株式会社に組織変更してからでないと、監査期間としてカウントされない」ということは原則ありませんが、管理体制の構築期間や資本政策の準備期間を考えると、株式会社に組織変更してからさまざまな準備を進めるのが現実的です。

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執筆者:GVA 法人登記 編集部(GVA TECH株式会社)/ 監修:GVA 法律事務所 コーポレートチーム

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