合同会社は、株式会社と比べ簡単に費用も安く設立できるため手軽に起業できる手段として近年では注目を集めています。
定款自治が広く認められ、強行法規による規律が少ない合同会社は、会社の運営・管理の仕組みを構成員自身で決定したいと考える場合にはメリットの大きい会社形態です。もっとも、手軽な手段とはいえ定款を作成が必要ですし、記載内容を変更する場合は定款変更の手続きが必要です。本記事では、合同会社の定款変更の手続き方法や必要書類をご紹介します。
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合同会社における定款とは
まずは、そもそも合同会社における定款とはどのようなものを記載した書面なのか、株式会社における定款との違いなど基本的な事項を説明します。
事業内容や会社運営のルールを定めた書類
定款とは、会社の組織・運営に関する基本的事項を定めたその会社の自主規範です。会社の基本的なルールが定められていることから「会社の憲法」と呼ばれることもあります。
会社の基本的なルールが定められているという点では、株式会社の定款も合同会社の定款も同じ性質を持っています。
定款の記載事項は、必ず記載しなければならない事項(絶対的記載事項)、記載しなくてもよいが定款で記載しないと効果が発生しない事項(相対的記載事項)、定款以外の方法で定めてもよいが定款で定めてもよい事項(任意的記載事項)の3種類があります。
定款は書面または電子定款(PDF)で作成し、電子定款の場合は電子署名を付与します。
株式会社の定款との違い
株式会社の定款と比較すると、合同会社の定款は内容がシンプルで簡潔な場合が多いです。合同会社は「社員」相互の人的信頼関係を基盤として設立・運営される会社であり、会社の憲法ともいえる定款はその人的信頼関係を反映させるものとすべきであることから、定款自治が株式会社よりも広く認められています。そのため、自社の特性に合わせた柔軟な定款を作成できます。
また、株式会社では会社設立時に公証役場で定款の認証を受けなければなりませんが、合同会社の場合は認証が不要となっており、より手軽に会社を設立できるでしょう。
近年は電子定款での作成が増えている
従来、定款は紙で作成するのが主流でしたが、最近は電子データ(PDF)で作成する電子定款が利用されることも多くなっています。
電子定款は印紙代が不要になり、物理的な紙が不要になるため保管のためのスペースも節約できます。
電子定款を作成するためには電子署名に対応したPDF編集ソフト、電子証明書やカードリーダーといった機器が必要になるため、設備の整った行政書士や司法書士などの専門家へ依頼することも選択肢になります。
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合同会社の定款の記載事項の種類
定款の記載事項には、絶対的記載事項、相対的記載事項、任意的記載事項の3種類があります。ここでは、これら記載事項がどのようなものなのかご説明します。
①絶対的記載事項
定款に必ず記載しなければならず、記載がなければ定款自体が無効となる事項を絶対的記載事項といいます。具体的には、下記6点です。
①商号(会社の名前)
会社の名前です。
②目的
会社の目的です。どのような事業を行うのか記載します。数に制限はありませんが、少なすぎると柔軟性に欠け、多すぎても何をする会社なのか不明となってしまうため自社の状況に合った記載が求められます。
③本店所在地
会社の本店(本社)の所在地です。番地まで記載する必要はなく最小行政区画までの記載すれば問題ありません。
④社員の氏名又は名称及び住所
合同会社では、会社の所有者は「社員」と定義されます。合同会社の「社員」は会社の所有者として地位であり、株式会社でいうところの「株主」です。社員の氏名(又は名称)と住所も絶対的記載事項です。
⑤社員が有限責任社員である場合はその旨
会社の債務に対して直接責任を負う無限責任と出資額を限度に責任を負う有限責任があります。
合同会社の場合は社員全員が有限責任社員となる会社形態のため、社員全員が有限責任として記載されます。
⑥社員の出資及びその価格
社員が何をいくら出資しているのか記載します。
有限責任社員が出資できる財産は金銭等に限られています。
②相対的記載事項
必ず定款で定めなければならない事項ではないが、かつ、効力を生じさせるためには定款において定める必要がある事項を相対的記載事項といいます。相対的記載事項は、社員の過半数の決定など、定款以外の方法で定めたとしても効力が生じないので注意が必要です。
相対的記載事項には、業務を実際に行う社員の定め、代表社員の定め、利益の配当に関する事項、社員の退社に関する定め、持分の相続に関する定め、解散の事由、残余財産の分配の割合といった事項があります。
③任意的記載事項
定款で定めなければならない事項ではなく、また、定款以外の何らかの方法によっても定めることができる事項を、任意的記載事項といいます。相対的記載事項との違いは、定款以外で定めても効力が生じる点です。
任意的記載事項をあえて定款に記載することで、会社のルールを明確化できます。事業年度に関する定めが典型的です。
合同会社の定款変更に必要な手続き
続いて、合同会社の定款変更に必要な手続きについてご紹介します。場合によっては登記申請が必要になるケースもありますので、合わせてご紹介します。
合同会社の定款変更とは?
定款に記載された事項を変更することを定款変更と呼びます。合同会社の定款変更には原則として業務執行社員や総社員の同意が必要になります。また、定款変更の対象項目の中には登記事項証明書への反映が必要なものがあり、これらは登記申請書や社内での同意を証する書類を添えて法務局に申請することで変更できます。
定款変更には、原則総社員の同意が必要
合同会社の定款変更をするためには、総社員の同意が必要になります(会社法第637条)。合同会社をはじめとする持分会社において株式会社よりも広く定款自治が認められており、そのため、変更においても原則社員全員の同意が求められるのです。
代表社員や業務執行社員が勝手に変更してよいものではありません。
同意があったことを証明するためにも、総社員の同意書を作成しておきましょう。定款変更に際して登記申請が必要となる場合も、総社員の同意書が必要となります。
なお、定款にあらかじめ定めておくことで、総社員の同意以外の方法で定款を変更することもできます。
定款変更対象が登記事項に該当する場合
本店所在地や事業目的など、おもに絶対的登記事項を変更する場合は、社員の同意だけでなく登記申請が必要となります。変更を生じてから2週間以内に法務局で登記申請を行わなければなりませんから、あらかじめ登記申請書や同意書を用意しておくとスムーズに手続きを進められるでしょう。
登記申請の後、法務局での審査を経て変更手続きが完了すると、会社の登記事項証明書(履歴事項全部証明書など)に反映されます。
登記申請が必要になる主な事項は、目的(事業目的)変更、商号(会社名)変更、本店及び支店の所在地の変更、資本金の額(増資等)の変更、業務執行社員の氏名または名称の変更、代表社員の氏名または名称及び住所の変更です。
定款変更時の登記申請における必要書類
最後に、登記申請の際に法務局へ提出しなければならない必要書類をご紹介します。スムーズに登記申請するためにも、必要書類をあらかじめ確認しておきましょう。
登記申請書および必要書類を作成
基本書類となる登記申請書を作成し、法務局に申請します。登記申請書に加え、変更についての社員の同意書も必要になります。業務執行社員のみ同意で登記申請をする場合には、業務執行社員の同意があったことを証する書面(決定書)を作成し法務局へ提出します。
登記申請は自分でも行えますし、手続きが難しかったり時間がなかったりする場合は専門家である司法書士へ依頼すればスピーディーに登記申請を進めてもらえます。司法書士へ依頼する場合には司法書士への委任状も必要となります。
また、登記申請書には登録免許税分の収入印紙を貼らなければなりません。登録免許税は3万円~となりますから、決して安い費用ではありません。
定款変更を繰り返すとそれだけ登録免許税の負担も増える可能性もありますので、定款変更をする際は他にも変更を要する事項がないかよく確認し、他にも変更を要する事項があるのであればまとめて変更登記申請をしてしまうとよいでしょう。登録免許税の削減だけでなく、登記申請の手間や法務局へ足を運ぶ時間の節約にもつながります。
登記申請の必要書類のひな形・テンプレート
登記申請書や同意書といった登記申請の際の必要書類のひな形は、法務局のホームページに掲載されています(法務局の書式・ひな形)。
法務局のHPには記載例も掲載されていますから、これを参考にしながら作成するとよいでしょう。他にも以下のような記載例があります。
登記申請に備えて書類を準備しましょう
合同会社には、株式会社における株主総会のように法定の会議体は存在しません。ただし、合同会社の定款変更を行うためには社員の同意が必要で、絶対的登記事項を変更する場合は加えて登記申請も必要となります。
登記申請も見据えて、登記申請書や同意書といった必要書類も同時進行で用意しておくとよいでしょう。
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執筆者:GVA 法人登記 編集部(GVA TECH株式会社)/ 監修:GVA 法律事務所 コーポレートチーム
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