合同会社における役員報酬の決め方や注意点

合同会社の基礎知識
投稿日:2024.07.31
合同会社における役員報酬の決め方や注意点

近年、合同会社の設立が増加しています。s-Statの統計では、2011年の9130件に対し、2021年では、37,072件と10年で約4倍となっています。

株式会社も合同会社も会社を経営するのは、役員です。役員に対する給与・賞与・その他の報酬として、役員報酬が存在します。

合同会社の役員報酬について、「株式会社の役員報酬と何が違うのか」「決定方法はどのように行うのか」「税務上の取り扱いの違いはあるのか」といった疑問点があります。
そこで、本記事では、合同会社の役員報酬について、詳細を記載します。

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合同会社における役員報酬とは?

合同会社の役員報酬とは、どのようなものを指すのでしょうか
まずは、役員報酬の意義に触れ、株式会社との違い等について触れていきます。

役員報酬とは?

合同会社における役員報酬に触れる前に、役員報酬の定義を明確にしておきます。

役員報酬とは、役員に対する給与等になります。役員とは、会社法等の規定による取締役、執行役、会計参与、監査役及び清算人のほか、法人の使用人以外の者でその法人の経営に従事している者等も含まれます。(法人税法第2条の15、法人税法施行令7)

役員報酬と従業員の給与は区別されます。勘定科目も「役員報酬」「(従業員)給与」というように、役員報酬と従業員の給与は、別科目として計上されます。

科目以外にも、役員報酬と従業員給与の違いはいくつかあります。

まず、決定のプロセスが違います。従業員給与は、一般的には、職務上の地位、職級などにより決められます。また、人事考課などにより、年々昇給をしていくものとなります。一方、役員報酬は、株主総会で役員報酬の総額を決め、その後の取締役会で、株主総会で決議された役員報酬を各役員の年間報酬として配分していきます。

次に、税務上の取扱いです。従業員給与は、一般的にはすべて損金に計上することが可能です。一方、役員報酬は一定の要件を満たさなければ、損金に計上することができません。

合同会社における役員報酬とは?

株式会社でも合同会社でも、経営者=役員という定義であれば、どちらも役員は存在します。しかしながら、厳密にいうと、合同会社には、役員は存在しません。その理由は、以下のとおりです。

まず、合同会社は、出資者=経営者となります。株式会社の場合、出資者は株主であって、必ずしも株主=経営者とはなりません。しかしながら、合同会社は、出資をしている者が経営者であり、「社員」と呼びます。

したがって、株式会社と合同会社の「社員」の意味合いは違います。株式会社の「社員」は従業員という意味合いが強いですが、合同会社の「社員」は「出資者、経営者」となります。その中でも、役員に相当するのが、代表権を持つ「代表社員」、業務執行権限を持つ「業務執行社員」となります。「代表社員」は、株式会社の「代表取締役」、「業務執行社員」は、株式会社の「取締役」や「執行役員」に該当するといえるでしょう。

合同会社の「社員」に対する報酬は、株式会社同様、定期同額給与として期ごとに設定されます。したがって、期の途中で自由に変更をすることができません。もし、自由に変更ができてしまった場合、利益を減らして、節税を見込みたいという理由で、役員報酬を期の途中から高くするという利益操作ができてしまうためです。

定期同額給与とは、以下の図1のように、決算期において、毎月同額の給与の支払を行うことをいいます。期初から3か月以内などの一定の要件を満たせば、図2のように期の途中でも改定が可能です。



合同会社の役員報酬を決める上での注意点

前述のとおり、合同会社の役員報酬には、損金不算入要件があるなど、注意点がいくつかあります。本項では、合同会社の役員報酬を決める上での注意点について記載します。

合同会社の役員報酬の損金不算入要件として、前述の定期同額給与でないもの以外に「過大な役員給与の損金不算入」があります。「過大な役員給与」とは、役員の職務内容や法人の収益を基準として、過大と判定されるもの、また、類似(業種や規模等)法人の役員給与の支給状況等を基準として、過大と判定されるものを指します。

同業種や同規模の会社と合わせる

合同会社の役員報酬を決める基準の一つとして、同業種や同規模の会社と合わせるということがあげられます。これらの基準に沿って報酬決定を行えば、過大と判定されることはないでしょう。株式会社が中心とはなりますが、国税庁の「民間給与実態統計調査」などを参考にするのも有効です。

簡単に金額を変更できない前提で設計する

合同会社の役員報酬を決める際に、会社の年間計画に合わせて決めるという方法があります。会社の売上と役員報酬以外の経費計画を立て、それに基づき、利益の目標値を決めます。その後、利益の目標を達成できるように役員報酬を決めるというものです。役員報酬が高いため、目標が達成できない、赤字になってしまうということにならないよう役員報酬を調整して決めます。

また、役員に対する賞与は、原則、損金算入をすることができません。従業員に対する賞与であれば、定期支給でも臨時支給でも、損金に算入できます。しかし、役員に対する賞与を損金算入できてしまうと、自由に臨時賞与等を支給し、利益の操作等が行えてしまうため、損金算入ができないようになっています。

では、役員報酬を増やすことはダメでも、減らすことはできるのかというと、決してそうではありません。正当な理由が無く減額をした場合、減額前の役員報酬のうち、一部の金額が損金不算入となります。
減額をし、かつ、損金算入をするためには、経営状況の悪化などによることなど、正当な理由が必要です。一時的な資金繰りの悪化や業績目標に達成しないためという理由は認められません(法人税法基本通達9-2-13)

このように役員報酬を変更することは、税務上様々なリスクがあります。一度決めたら、1年間は変更をしないという意思決定をすることが重要です。

社会保険料や税金とのバランスを考慮する

合同会社の役員報酬は、ルールに沿えば、会社や個人の節税につなげることができます。期初に立てた目標で利益が多く出る見込みであれば、役員報酬を高めに設定しておくことで、損金に算入でき、法人税負担を緩和することができます。

役員報酬の支払いを受けた個人は、給与所得となり、給与所得控除が適用され、所得緩和効果があります。会社や個人にとってリーズナブルとなるポイントを探ることが重要です。

例えば、合同会社である法人(実効税率を33%と仮定します)で役員報酬が0円の場合の税引前利益が1,000万円とします。当合同会社の法人税等は1,000万円 × 33% =330万円となります。この場合において、役員3人に対し、それぞれ300万円ずつ役員報酬を支給していたとします。当法人の税引前利益は1,000万円 – 300万円×3 = 100万円となり、法人税等は、100万円 × 33% = 33万円となります。

法人税が緩和された分、各役員の所得税に転嫁されるだけかもしれません。しかし、所得税には給与所得控除があり、さらに配偶者控除・扶養控除・基礎控除等の所得控除も存在します。

ある役員が300万円報酬を受けていたとします。まず、給与所得控除が適用でき、給与所得は、202万円となります。配偶者控除の対象となる配偶者、扶養控除の対象となる16歳の子がいるとします。さらに基礎控除も適用できるため、所得控除額は38万円+38万円+48万円 = 124万円となります。先ほどの202万円から124万円を差し引くと、課税所得は78万円となり、78万円の所得税率は5%であるため、78万円×5%=39,000円が所得税となります。先ほどの法人税の税率33%よりも28%低い税率となるため、節税効果があるといえます。

なお、上記例は、法定福利費や復興特別所得税は考慮しないのと、他に収入が無いことが前提となります。

役員報酬をゼロにすることも可能だが注意が必要

合同会社の役員報酬をゼロ円にすることは可能です。創業当初は利益も出ないので、役員報酬をゼロ円にするという考えもあるかもしれません。たしかに、役員報酬をゼロ円にすることによって、利益は出やすくなります。しかしながら、ゼロ円にすることによってのデメリットもあります。

まずは、利益が想定よりも多く出てしまった場合です。先ほど記載したとおり、利益に対し、法人税がかかってしまいます。また、会社に勤めている場合、社会保険に加入することができますが、役員報酬がゼロ円の場合は、できません。したがって、国民健康保険や国民年金への加入となります。国民健康保険や国民年金は所得に比例をして負担額が高くなるので、他に所得がある場合、負担が多くなる可能性があります。

役員報酬をゼロ円にするのであれば、創業当初の第一期目など、期間を限定して行うべきです。創業当初は、利益が出ず、キャッシュフローも厳しくなりがちですので、役員報酬をゼロ円にするメリットはあるかもしれません。しかしながら、早く利益が出る体制を構築し、適切に役員報酬を支払うことをできるようにするのが本来あるべき姿です。

合同会社の役員報酬を変更する方法

合同会社の役員報酬を決定・変更する方法を記載します。株式会社の場合、株主総会及び取締役会で決定しますが、合同会社は、株主総会も取締役会もないことがポイントです。

定款への記載、もしくは毎年の定時社員総会で決定

合同会社を設立する際に、定款を法務局へ提出する必要があります。定款に出資者とその者に対する報酬を記載することで、役員報酬を決める方法があります。しかしながら、この方法は、毎期員報酬を変更する前提であり、定款の記載事項の変更が毎期必要となるため、実務的ではありません。

一般的には、全社員の同意などで決定をします。定款とは別に全社員の同意書等の書面を作成し、保管します。

報酬をいくらにするか検討する

毎期役員報酬を変更する場合、役員報酬をいくらにするかという検討が必要となります。

前期は利益が出たため増額をするなど、会社の経営状態を勘案して決定します。この場合、増額後の役員報酬を損金参入するためには、決算日の翌日から3ヶ月以内に決定をする必要があります。

先にも述べましたが、期中に利益が上がったことにより、役員に賞与を支給することは、損金計上ができないので、定期同額給与に見込むことが望ましいです。

報酬決定の議事録を作成する

合同会社の役員報酬を決定した際は、必ず書面で残します。

書面のタイトルは総社員の同意書などとなります。記載する内容は、個人別の役員報酬をいつからいくら支払うか、それに同意をした証拠として、各自の記名、捺印が必要です。捺印する印鑑は偽造防止のため、印鑑登録を行なっているものが好ましいです。

記載方法の具体例は、下記リンクなども参考にしてください。


なお、報酬決定の議事録は、社内の議事録ですので、本店の移転、役員の変更、定款の変更のような法務局への手続きは不要です。

ポイントを押さえて役員報酬を決めましょう

本記事では、合同会社の役員報酬について記載しました。重要なポイントをまとめると以下のとおりです。

  • 合同会社に役員という概念は無いが、出資者=経営者のため、出資者に対して支払う報酬は、役員報酬となる。
  • 役員報酬を決める際は、過大にならないよう会社の業績または同業種・同規模の役員報酬を参考にして決める。また、決定した役員報酬は、期中は変更をしない。
  • 役員報酬を0円にすることは可能だが、メリットもデメリットもある。
  • 役員報酬を変更する際は、必ず書面を残す。


合同会社の役員報酬も株式会社の役員報酬と同じルール(定期同額給与等)が適用されます。ルールを理解し、正しく実務や税務を行うことが重要となります。

合同会社を設立するメリットデメリットは以下の記事で解説しています。
関連記事:合同会社とは?株式会社との違いやメリットをわかりやすく解説

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