合同会社とは?個人事業主との違いを解説

合同会社の基礎知識
投稿日:2024.11.05
合同会社と個人事業主の違いを解説

事業を始めるにあたって、個人事業主か法人のいずれの形態を取るか悩む方も多いのではないでしょうか。また、法人には株式会社や合同会社など複数の種類があり、どの形態で起業するかも選択しなければなりません。

当記事では、合同会社と個人事業主の違いについて解説を行っています。税金面や責任の範囲など、両者には多くの違いが存在します。起業を考えている方や、両者の違いに興味をお持ちの方はぜひ参考にしてください。

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合同会社とは?

会社形態には複数の種類があり、合同会社もその1つです。では、合同会社にはどのような特徴があるのでしょうか。

米国LLCがモデルの新しい会社形態

合同会社は、アメリカのLLC(Limited Liability Company)を参考にして設けられた会社形態です。2006年5月に施行された新会社法により設立可能となった比較的新しい会社形態で、「日本版LLC」とも呼ばれています。

合同会社は、合名会社や合資会社と同様の持分会社に分類されます。持分会社は、株式会社と異なり株式を発行することなく、社員が持分として出資を行います。また、所有と経営が分離している株式会社に対して、合同会社をはじめとする持分会社は所有と経営が分離していないことが特徴です。

株式会社よりも低コストで設立・運営できる

会社の設立には少なからずコストが掛かりますが、合同会社であれば株式会社よりも低コストで設立可能です。

株式会社であれば、設立する会社の資本金に応じて、3万円から5万円の定款認証手数料がかかりますが、合同会社であれば、定款認証が不要なため認証手数料も不要となります。また、設立登記の際には、登録免許税が必要です。株式会社では、最低でも15万円の登録免許税が必要ですが、合同会社であれば最低6万円で済みます。

株式会社では、株主総会の招集や開催にもコストがかかってしまいます。しかし、株式を発行しない合同会社では、株主総会の招集や開催も不要です。また、合同会社の役員には、株式会社の役員と異なって任期に制限がなく、決算公告義務もないため、管理に要するコストも低くなっています。

認知度や資金調達面で制限がある

低コストで設立可能なメリットを持つ合同会社ですが、認知度や資金調達においては、不利な面も存在します。

一般的に会社といって思い浮かべるのは株式会社であり、合同会社は知名度において低いといわざるを得ません。また、合同会社では株式を発行しないため、株式による資金調達が行えません。そのため、資金調達は社員からの出資や金融機関からの融資などが中心になります。

合同会社を設立するメリットデメリットは以下の記事で解説しています。
関連記事:合同会社とは?株式会社との違いやメリットをわかりやすく解説

個人事業主とは?

個人事業主は、どのような特徴を持っているのでしょうか。本項では、個人事業主の特徴について解説します。

法人を設立せず個人で事業を行う人

個人事業主は、株式会社や合同会社といった法人を設立せずに個人で事業を行います。法人設立の場合に必要な登記手続きなどは不要で、管轄税務署に開業届を提出するだけで、個人事業主となることが可能です。

法人が事業で得た所得には、法人税が課せられますが、法人ではない個人事業主の所得に法人税が課されることはありません。個人事業主は個人として、所得税や消費税、個人事業税などを納付します。また、会社に勤めながらアフィリエイトなどの副業を行う方もいますが、このような場合も個人事業主に該当します。


自営業・フリーランスとの違い

個人事業主と似た意味を持つ言葉として自営業やフリーランスが存在します。個人事業主と自営業、フリーランスは、同じ意味として使われることもありますが、区別する場合も多くなっています。

「フリーランス」とは、雇用されずに働くことを意味します。フリーランスは、税法など法律上の区分ではなく、働き方を表す言葉となります。そのため、雇用されていなければフリーランスとなり、幅広く個人事業主や自営業も範囲に含まれます。

「自営業」は、雇用されずに独立して事業を営む形態を広く意味します。個人事業主と異なり、開業届を提出しているか否か、法人であるか否かも関係ありません。自営業に法律上の明確な定義は存在しませんが、個人事業主よりも対象の幅が広くなっています。

個人事業主は税法上の区分であり、働き方を意味するものではありません。また、自営業は法人を設立している場合もありますが、個人事業主が法人の形態を取ることはありません。個人事業主は、あくまでも税務署に開業届を提出した個人のみを指します。

合同会社と個人事業主の違い

ここまで合同会社と個人事業主の特徴について解説を行ってきました。では、両者にはどのような違いがあるのでしょうか。


法人であるかどうか

合同会社と個人事業主の最も大きな違いは、法人であるか否かです。個人事業主は開業届を提出した個人であるため、法人の形態を取ることはなく、法人である合同会社とは決定的に異なっています。

一般的に個人よりも法人の方が社会的信用度も高くなります。これは合同会社と個人事業主においても変わりません。そのため、金融機関からの融資においても合同会社の形態を取った方が有利に働くでしょう。許認可や補助金・助成金の申請においては、個人事業主と法人で要件が異なっている場合もあります。また、会社によっては個人事業主とは取引を行わないとする規定を置いている場合もあります。

税金面の違い

税金面においても合同会社と個人事業主には違いが存在します。法人であれば、所得に対して法人税が課せられますが、個人事業主の所得には、所得税が課せられます。また、企業規模や種類によって区分されるとはいえ、法人税率は一律です。

これに対して、個人事業主に課せられる所得税は、累進課税となっているため、所得が増えれば増えるほど税率も上昇します。そのため、所得が一定以上となった個人事業主は、後述する法人成りを行い、節税することが多くなっています。

経費にできる対象も合同会社と個人事業主では異なります。たとえば、法人であれば
条件を満たした経営者への給与(役員報酬)や、経営者家族への給与も経費とすることが可能です。また、法人から支給される退職金も経費の対象とすることができます。

責任の範囲が異なる

出資者や経営者の負う責任には、無限責任と有限責任が存在します。無限責任を負う場合であれば、倒産後の債務について全額を債権者に弁済することが必要です。これに対して、有限責任であれば、出資した額の範囲内でしか弁済の責任を負いません。

個人事業主は、個人の責任において事業を営んでおり、その責任は無限責任となります。そのため、事業が不調で弁済資金がない場合であっても、事業で発生した債務は全て弁済しなければなりません。一方で合同会社の出資者である社員は、有限責任しか負いません。そのため、会社が倒産したとしても、個人の財産には影響しません。

一般的に事業規模が大きくなればなるほど、負債の額も大きくなります。当初から大きく事業を展開する予定であれば、個人事業主よりも合同会社を選んだ方がリスクは低くなるでしょう。

なお、会社への融資時に経営者の個人保証を求められることがあります。この場合は無限責任に近いといえますので念頭に置いておきましょう。

一人会社として合同会社を設立する場合

会社と聞けば、オフィスを構え社員を雇用しているイメージを持つ方が多いでしょう。しかし、会社は社長一人でも設立可能です。主に節税を目的として設立されるマイクロ法人は、社員を雇用せずに社長一人で事業を営みます。

マイクロ法人などの一人会社の場合には、社員を雇用しない関係上、従業員を雇用しない場合の個人事業主と差異があまり感じられません。しかし、既に述べた通り、税金面や責任の範囲などにおいて、個人事業主とは明確に異なっているため、特徴を良く理解したうえで設立することが必要です。

個人事業主から合同会社に法人成りする

個人事業主と合同会社では、税金面で大きな違いが存在します。そのため、節税のために法人化を行う場合があります。

法人成りとは?

法人成りとは、主に節税を目的として個人事業主が株式会社や合同会社といった法人形態への変更を行うことです。

法人成りした会社も、設立当初から法人形態を取っている会社も「会社を設立する」という点では同じです。しかし、新たに事業を興すか、既にある事業を引き継ぐかという点で両者は異なっています。法人成りであれば、それまでに積み上げてきた事業や顧客そのほかの資産を引き継ぐことも可能です。

個人事業主から合同会社への法人成りは、良く見られますが、いったん合同会社となった後に個人事業主に戻る個人成りは稀です。個人成りが少ない理由には、有限から無限責任への責任範囲拡大や、社会的信用の低下、節税面でのデメリットなどあげられます。

また、旧商法では会社の設立に際して一定の最低資本金が必要でした。しかし、2006年5月に施行された新会社法では資本金が1円からでも会社設立が可能となり、法人成りの増加の理由となっています。

個人事業主が法人成りするタイミング・目的

法人成りを行う理由としては、増加した所得に対する節税が最も多くなるでしょう。タイミングとしては、法人化した方が税率の下がる所得600万円〜800万円が1つの目安となっています。

節税面で効果のある法人成りですが、目的は節税に限られません。たとえば、事業規模が大きくなり、取引先からの信頼を獲得する必要が生じたことで法人成りが行われる場合もあります。また、資金調達の必要性が高くなった場合にも法人成りは行われます。これは、個人事業主よりも法人の方が社会的信用度も高く、融資の審査が通りやすくなるためです。

株式会社へ法人成りすれば、株式の発行により、外部からの資金調達も可能となります。また、許認可の中でも労働者派遣事業などは、多額の資金を必要とするため、法人化した方が要件を満たしやすくなるでしょう。

違いを理解し事業に合った形態を選ぼう

合同会社と個人事業主では、税金や責任の範囲において大きな違いが存在します。責任範囲の限定や、節税面など法人成りを行うメリットは多いですが、社会保険への加入や事務手続きの増加などデメリットも存在します。

合同会社と個人事業主両方の違いを理解したうえで比較検討し、自身の営む事業に合った形態を選ぶことが重要です。

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執筆者:GVA 法人登記 編集部(GVA TECH株式会社)/ 監修:GVA 法律事務所 コーポレートチーム

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