合同会社を設立する際に、決めなければならないことの1つに「公告をする方法」があります。定款で公告の方法を決めたうえで、登記簿にも記載することになっています。
しかし、一般的には馴染みがうすい言葉のため「そもそも公告って何?」「どんな種類があるの?」と疑問をもたれる方が多いのが実状です。
そこでこの記事では、公告の概要や種類、会社法で決められている3つの公告方法などについてわかりやすく解説します。合同会社の公告義務についても説明しますので、参考にしていただければ幸いです。
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公告とは?
公告は、会社の重要な情報を広く世間に知らせる手段であり、法的な義務をともないます。ここでは、公告の概要や種類、違反した場合のペナルティなどについて解説します。
合併や分割、決算内容など会社の重要事項を広く知らせること
公告とは、会社の合併や分割、決算内容などの重要事項を、株主や債権者・取引先、さらには社会全体に対して広く知らせることです。
特に、会社の合併や分割など法的手続きを行う場合などには、公告は不可欠です。公告を行うことで、利害関係者は会社の現状を正確に把握することができ、取引の安全性や信頼性を確保することができます。
公告の内容は会社法で定められており大きく2つに分かれている
公告の内容は、会社法によって決められており、大きく分けて「決算公告」と「決定公告」の2つに分類されます。
決算公告は、会社の決算に関する事項を取り扱うもので、多くの株式会社は定時株主総会が終わった後に公告を行います。
決定公告は、会社の合併、解散など、会社の組織変更や重要な決定事項を関係者に通知するために行われ、官報への掲載が義務付けられています。
義務違反は100万円以下の過料が課される可能性がある
会社法では、会社に対して公告を行う義務が課されています。この義務を怠ったり、不正な公告を行ったりすると、100万円以下の過料が課される可能性があります(会社法976条)。
公告の義務は、会社が透明性を保ち、利害関係者に対して正確な情報を提供するためのものであり、その義務を果たさない場合には法的な制裁が科されることになります。過料の金額はケースバイケースで異なりますが、いずれにせよ、公告の適切な実施は法令遵守の観点からも重要です。
コンプライアンスに違反するような行為を企業が行うと、上記のような罰則が科されます。その結果、損害賠償の発生や信用・ブランドイメージの失墜、企業存続の危機といった社会的な不利益が発生することにつながります。
また、自社のみならず、ステークホルダーにも影響を与える場合がありますので、十分にご注意ください。
決算公告
決算公告は、会社法で以下のように定められています。
会社法 第四百四十条(計算書類の公告)
株式会社は、法務省令で定めるところにより、定時株主総会の終結後遅滞なく、貸借対照表(大会社にあっては、貸借対照表及び損益計算書)を公告しなければならない。
引用:e-GOV法令検索(計算書類の公告:会社法440条)
これは、株主や債権者などの利害関係者に対して、会社の経営成績や財務状態を明らかにし、不測の事態を防ぎ、取引の安全性を保つことを目的としています。これにより、投資家や取引先は会社の財務状況を正確に把握し、信頼性のある取引を継続することができます。
合同会社については、決算公告の義務はありません。しかし、合同会社であっても、透明性を保つために自主的に決算情報を公開することは、信頼性の向上につながるため推奨されるケースもあります。
決定公告
決定公告は、決算以外の会社の重要事項を取り扱います。例えば、会社の合併や分割など、会社の構造や経営に重大な影響を与える事項が発生した場合に行われます。
会社の重要な変更事項を広く知らせることで、利害関係者にその情報を提供し、適切な対応を促す役割を果たします。合同会社においても、「債権者保護手続き」の観点から、決定公告は基本的に義務となっていますので、どのようなケースで必要になるか把握しておきましょう。
3つの公告方法がある
会社の公告方法は、会社法939条で定められています。それぞれの方法のメリット・デメリットを把握し、会社の状況や目的に応じて最適な方法を選ぶことが重要です。
「官報・日刊新聞紙・電子公告」の3つから選択する
会社の公告方法は、「官報に掲載する方法」「日刊新聞紙に掲載する方法」「電子公告で公開する方法」の3つから選択することができます。
公告方法は、会社設立時に定款で定めます。定款への記載は義務ではありませんが、特に事情がないケースでは記載しておくのが一般的です。無記載の場合は、「官報に掲載する方法」を選択したことになりますのでご留意ください。
官報に掲載する方法
最も一般的な方法として、官報に掲載する方法があります。官報とは、国が発行している機関紙で、法律の改正や制定などを伝えるためのものとなり、その中には各企業の公告を掲載するページが設けられています。
官報は、土日祝日と年末年始以外は毎日発行されており、広く国民に情報を提供する手段として利用されています。また、官報はインターネットでも閲覧可能で、紙ベースでも販売されています。
■決算公告の記載例
参考:国立印刷局「官報(公告記載例)」
官報に掲載することのメリットは、公式の公的な記録として残る点です。信頼性が高く、後から確認することも容易です。また、掲載費用はリーズナブルで、公告方法として多くの企業に利用されています。
【料金目安/税込み】
■枠公告:決算公告or決算公告+決定公告
1枠 | 37,165円 |
2枠 | 74,331円 |
3枠 | 111,497円 |
4枠 | 148,662円 |
5枠 | 185,828円 |
6枠 | 222,994円 |
8枠 | 297,325円 |
12枠 | 445,988円 |
決算公告のみであれば、一般的な会社で「2~4枠」程度、大会社(資本金5億円以上または負債が200億円以上)で「4~8枠」程度が一般的です。
■行公告:決定公告
1 行 | 3,589円 |
10行 | 35,893円 |
15行 | 53,839円 |
20行 | 71,786円 |
25行 | 89,732円 |
30行 | 107,679円 |
35行 | 125,625円 |
40行 | 143,572円 |
記載内容によりますが「10~15行」程度が多くなります。
参考:全国官報販売共同組合「官報公告掲載料金」
日刊新聞紙に掲載する方法
日刊新聞紙とは、会社法939条1項3号で定められている「時事に関する事項を掲載する日刊新聞紙」を指し、公告を掲載するためには、新聞社に依頼する必要があります。
日刊新聞紙に掲載することのメリットは、広範囲にわたる読者層に対して情報を提供できる点です。特に特定の地域や業界に強い新聞を選ぶことで、ターゲット層に対して効果的に情報を届けることができます。
しかし、官報に比べて費用が非常に高いケースが多いです。費用は数十万円から数百万円におよぶこともあり、予算に余裕のある大企業でないと選択しにくい方法です。
公告スペースの大きさによって異なりますが、決算公告で100~300万円程度、決定公告で50~150万円程度かかり、かなり高額になります。
【日経新聞|料金目安/税抜き】
| 2段 | 3段 | 4段 | 5段 |
全幅 | 4,560,000円 | 6,840,000円 | 9,120,000円 | 11,400,000円 |
1/2頁 | 2,280,000円 | 3,420,000円 | 4,560,000円 | 5,700,000円 |
1/3頁 | 1,520,000円 | 2,280,000円 | 3,040,000円 | 3,800,000円 |
1/4頁 | 1,140,000円 | 1,710,000円 | 2,280,000円 | 2,850,000円 |
1/5頁 | 912,000円 | 1,368,000円 | 1,824,000円 | 2,280,000円 |
1/6頁 | 760,000円 | 1,140,000円 | ー | ー |
1/8頁 | 570,000円 | 855,000円 | ー | ー |
1/10頁 | 456,000円 | 684,000円 | ー | ー |
1/12頁 | 380,000円 | 570,000円 | ー | ー |
1/14頁 | 326,000円 | 489,000円 | ー | ー |
※法定公告は朝夕刊ともに同一料金で掲載は全国版となります
※上記の表にある規格サイズ以外の公告料金は1段×1cmあたり62,000円となります
※法定公告の申込は天地2段以上からの申込みとなります
参考:日経マーケティングポータル「法定公告料金(決算公告および決定公告)」
電子公告
電子公告は、会社のホームページ等、インターネット上で情報を公開することで行う方法です。この方法は、平成17年2月1日に施行された「電子公告制度の導入のための商法等の一部を改正する法律」により、新たに認められた方法です。
電子公告の最大のメリットは、コストをかけずに迅速に公告を行うことができる点です。自社のホームページを利用する場合、特別な掲載費用はかからず、自分で簡単に情報を更新できます。
ただし、電子公告で決算公告を掲載する場合、貸借対照表の要旨の要旨だけでなく、貸借対照表のすべてを公開する必要があります。さらに、公開した情報は5年間継続して掲載し続けなければならないため注意が必要です。
また、電子公告で法定公告を掲載する場合は、電子公告調査機関にて継続して法定公告が掲載されているかの調査が必要となり、その委託費用が必要になります。
参考:法務省「電子公告」
合同会社に公告義務はある?
合同会社の義務は決定公告のみ(決算公告の義務はない)
合同会社は、株式会社と異なり、決算公告の義務がありません。これは、合同会社の設立趣旨や運営形態が、株式会社とは異なるためです。
しかし、債権者などに多大な影響をおよぼす事柄については、決定公告をすることが義務付けられていますので、しっかりと把握しておく必要があります。
公告が必要なケース
合同会社にも義務付けられている決定公告の具体例は、以下のようになります。
合併公告 | 合併で複数の会社が1つに統合 |
吸収分割公告 | 会社の中から事業の1部、または全部を切り出して既存の他社に承継 |
新設分割公告 | 会社分割の1種で、分割した事業を新設会社に承継 |
共同新設分割公告 | 複数の会社が共同で新設分割 |
組織変更公告 | 合同会社から株式会社へ会社種類を変更 |
解散公告 | 会社を解散 |
資本金額の減少公告 | ー |
資本金及び準備金の額の減少公告 | ー |
準備金の額の減少公告 | ー |
合同会社の義務は決定公告のみ
合同会社における公告方法と公告義務について詳しく解説しました。合同会社には決算公告の義務はありませんが、特定の条件下で法定公告を行う必要があるため、公告が必要なケースをしっかりと把握しておきましょう。
公告方法としては、官報、日刊新聞紙、電子公告の3つがあり、それぞれに利点と注意点があります。
自分の会社で想定される公告から適した公告方法を定めてください。
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執筆者:GVA 法人登記 編集部(GVA TECH株式会社)/ 監修:GVA 法律事務所 コーポレートチーム
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