有限会社(特例有限会社)では、社歴の長い会社も多いため、事業内容の変更や新規事業への参入などで登記されている目的と実際の事業内容がかけ離れてしまうことがあります。このようなケースでは、登記簿謄本の目的を変更する必要がでてきます。
しかし、目的変更のための登記申請にはどのような手続きが必要か、どのような書類を準備しなければならないのか、申請に費用はかかるのかなど、疑問が解消できないままの方も多いのではないでしょうか。
そこでこの記事では、特例有限会社の目的変更についての基本的な知識をはじめ、具体的な申請方法や必要書類、費用の目安などについて詳しく解説します。
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有限会社(特例有限会社)の目的変更とは
登記簿に記載されている事業目的が実態とかけ離れてしまうことがあります。ここでは、特例有限会社の目的変更について解説します。
目的は会社設立時に定められ、登記事項証明書に記載される
有限会社を設立したときに、事業目的が定款に記載され、公証役場にて認証を受けることになります。設立後、その事業目的は、登記簿謄本(登記事項証明書)に掲載されます。
事業の目的が幅広く、多方面の分野に及ぶ場合は特に、どこまで記載するか迷うかもしれません。登記に掲載された目的と実際の事業内容が異なっていたとしても、即座に罰則が科せられるわけではありません。
しかし、金融機関に融資を依頼する場合や補助金・許認可の申請をする場合、新たな企業と取り引きする場合などでは、登記簿謄本が審査書類になっていることもあるため、実際の事業内容に即しているかどうかの確認が必要です。
掲載する事業目的に分量の制限はありませんが、関連性の低い事業を含めてしまうことがデメリットになることもあるため、注意しましょう。
有限会社と事業目的の関係
有限会社は、株式会社と比べるとその歴史は長く、設立から何十年も経過している会社は少なくありません。社歴が長ければ、現在の事業実態とはかけ離れた内容が登記されている可能性もあります。
また、有限会社の創業者が高齢を理由に後継者へ事業を引き渡す際、事業の見直しをするきっかけになることがあり、そこで事業内容を大きく変更すれば、登記簿の内容とズレが生じるケースも考えられます。
このように、意図しないところで登記簿謄本の目的と食い違う可能性があるため、古くからある会社や事業承継したばかりの会社などでは、必要に応じて登記簿の変更手続きを検討しておきましょう。
目的の変更・追加には登記申請が必要
前述のように、有限会社の事業目的は、新規事業を開始したり、事業の統廃合を行ったりすることで、変更や追加の必要性が生じることがあります。
社長の思い付きだけで、目的の変更や追加・削除を行うことはできず、会社法の規定に基づき、株主総会での決議を経て、法務局に登記申請すれば、正式に事業目的の変更が反映されます。
目的を変更する際には、将来の事業展開を見すえて、ある程度の幅を持たせておく方法もひとつです。しかし、事業と関連性の薄い目的などを安易に含めてしまうと、取引先や金融機関から不審に思われてしまうリスクもあるため、バランスを考えたうえで決める必要があります。
事業目的の変更が社内で決議されたら、2週間以内に登記申請を行わなければなりません。変更が登記されると、登記簿謄本に記載される目的も更新され、対外的に正式な目的として明示されることになります。
「特例」有限会社とは?
2006年に会社法が施行されたことにより、それまで存在していた「有限会社」という会社形態を新規に設立することはできなくなりました。会社法施行以前からあった有限会社は「特例有限会社」となり、株式会社の一種として存続することが認められています。特例有限会社は、商号として引き続き「有限会社」と名乗ることも認められています。
有限会社(特例有限会社)における目的変更の手続き
特例有限会社が事業目的を変更する際には、会社内での手続きと法務局への登記申請が必要です。ここでは、その流れについて詳しく解説します。
会社内での目的変更の手続き
特例有限会社における目的変更の手続きは、基本的に有限会社と変わらず、大きく①会社内での定款変更の手続き、②登記申請の2つに分かれます。
まず、会社内で定款変更の手続きを行い、株主総会で変更案を議決します。そのあとに、登記申請書を作成し、法務局に提出します。それぞれのステップについて、詳しく確認しましょう。
①会社内での定款変更の手続き
特例有限会社が事業目的を変更する場合、まず社内で定款変更の手続きを行います。2006年の会社法施行前は、社員(有限会社の出資者)によって構成されている「社員総会」が意思決定機関でした。しかし、2006年以降に有限会社は、株式会社の一類型に分類され、社員は株主と呼ばれるようになったことから、特例有限会社でも社員総会は「株主総会」として開催・決議されるようになっています。
目的変更のために、株主総会を開催し、定款変更の議案を提出します。当該議案が出席社員の過半数により可決されれば、定款変更の決議が成立します。この際の株主総会の議事録を作成し、保管しておきます。この議事録は登記申請時の必要書類となりますので、おさえておきましょう。
②法務局に登記申請
前述の、株主総会で定款変更の決議を行ったあと、法務局に登記申請を行います。株主総会での議事内容を記した議事録や必要書類とともに、登記申請書を法務局に提出します。
登記申請は、定款変更の決議から2週間以内に行わなければなりません。申請は、自分で必要書類を準備して申請する方法と、司法書士に依頼して手続きを代行してもらう方法があります。手続きが複雑に感じる場合や時間がとれない場合などでは、司法書士に依頼することで、目的変更の登記をスムーズに進められます。
また、登記申請の際には、登録免許税を納付する必要があります。登録免許税の額は、一般的に登記申請の内容や会社の資本金の額によって異なりますが、目的変更の登記については、一律3万円となっています。
有限会社の目的変更登記の必要書類
会社内で定款変更の手続きを行ったあとは、目的変更の登記を行います。ここでは、ここでは、登記申請に必要な書類や入手方法について解説します。
登記申請の必要書類
特例有限会社が事業目的を変更するための登記で必要な書類は次のとおりです。
- 登記申請書:法務局のホームページで公開されている申請書の様式や記載例を参考に、自分で作成します。申請書の内容は正確性が求められますので、不明な点があれば専門家に相談するといいでしょう。
- 株主総会議事録:株主総会で決定した目的変更に関する書類であり、自分で作成します。議事録には、総会の日時、場所、出席者、議決事項、投票結果などの詳細が記されている必要があります。
- 会社の登記簿謄本:現在の登記内容を証明する書類です。最新のものを提出する必要があり、近くの登記所で入手するか、オンラインで請求します。
- 株主リスト:株主の名前と保有株式数が記されている書類です。社内で管理されていますが、最新のものを提出する必要があります。
- 委任状:司法書士に委任する場合に必要です。委任状には、委任者と被委任者の氏名、住所、印鑑、委任の範囲などを記す必要があります。
- 印鑑証明書:印鑑が登録されていることを証明する書類で、登記申請書に押印する印鑑の証明書になります。市区町村やコンビニで、発行してもらいます。
登記所によって、必要書類が異なることがあります。具体的な手続き方法や書類については、登記をする予定の法務局か司法書士に確認すると確実です。
目的変更の書式(テンプレート)は法務局Webサイトでも配布されている
目的変更の登記を自分で行う場合は、法務局のホームページから申請書様式と記載例をダウンロードし、申請書を自分で作成して提出します。
変更登記申請書には、会社法人等番号、商号、本店、登記の事由(目的の変更)、登記すべき事項、登録免許税(3万円)を記載のうえ、申請日や申請人、代表取締役氏名、電話番号を明記します。また、提出する書類を記しておきます。
この申請書様式には、申請書のほか、株主総会議事録、株主リスト、委任状のテンプレートもありますので、記載例を確認しながら、自分で作成することもできます。ただし、自分で申請する場合は、注意書きをよく確認し、間違いのない書類を作成する必要がある点に注意しましょう。
有限会社の目的変更にかかる費用
特例有限会社の事業目的変更には、一定の費用がかかります。登録免許税や司法書士報酬など、具体的な費用の内訳を確認します。
目的変更の登記申請にかかる費用
特例有限会社の目的変更のために登記申請する場合、登録免許税として3万円かかります。登記申請のために法務局へ行く場合の交通費や必要書類を郵送する場合の郵送料も必要です。
また、登記申請を司法書士に依頼する場合、その報酬として、事務所によって異なりますが、およそ2~3万円が必要となります。(地域や、同時に申請する登記があるか、などによっても異なります)
これらを合計して、目的変更の登記申請にかかる費用として、6万円前後を見積もっておきましょう。ただし、この金額はあくまでも目安で、司法書士報酬などを事前に調べて予算を立てておくと安心です。
<目的変更の登記にかかる費用>
登録免許税 | 一律3万円 |
司法書士報酬 | 2~3万円程度 |
雑費(交通費・郵送料など) | 数千円 |
難しい場合は司法書士など専門家への依頼も検討しましょう
申請に必要な書類として、登記申請書のほか、株主総会議事録や株主リストなどの社内で管理している書類、会社の登記簿謄本や印鑑証明書などの改めて入手する必要のある書類などがあります。申請までに期限があることから、手続きをスムーズに進める必要がある場合には、司法書士への依頼も検討しましょう。
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執筆者:GVA 法人登記 編集部(GVA TECH株式会社)/ 監修:GVA 法律事務所 コーポレートチーム
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