会社の登記簿謄本には、当該会社に関する基礎的な情報が記載されていますが、ひとくちに「登記」といっても、様々な種類の証明書が存在します。
また、合同会社の場合には、株式が発行されておらず役員も存在しないなど、株式会社とは異なる点が多く存在します。そこで、本記事では、会社の登記に関してどのような種類の証明書が存在するのか、それぞれの種類にどのような違いがあり、どのような場面で用いられるのか、また、株式会社と合同会社でどのような相違点があるのかなどについて、詳しく説明します。
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法人(会社)における登記簿謄本とは?
「登記簿謄本」という言葉を聞いたことがある方は多いと思いますが、具体的には、どのような場面で利用されるどのような書類なのでしょうか。
法人(会社)の登記事項証明書のことを指す
会社の設立登記が完了すると、管轄の法務局で登記事項証明書を取得することにより、登記された内容を確認することができます。
かつては、登記所に備えられた登記簿の写しという意味で「登記簿謄本」と呼ばれていましたが、コンピュータ化されて以降は「登記事項証明書」と呼ばれるようになりました。現在でも慣習的に「登記簿謄本」、「謄本」と呼ぶことも少なくありませんが、基本的には登記事項証明書のことを意味しています。
法人の登記事項証明書は、新たに融資や取引を開始する場合や許認可を申請する場合など、会社についてチェックされるタイミングで閲覧される(融資や取引の相手方や官公庁等から提出を求められる)ことが多くなっています。
なお、単に「謄本」という場合には、不動産の権利関係を公示する不動産登記のことを指すこともありますが、上記のような法人の登記事項証明書のことを指す場合もあり、特に不動産登記と区別して「商業登記」「商業登記簿謄本」と呼ばれることもあります。
法人(会社)の登記事項証明書の種類
「登記事項証明書」は、法務局に登記された事項を証明する書類の総称です。登記事項証明書には、登記された事項のうちどのような情報が記載されるかによって、「履歴事項証明書」、「現在事項証明書」、「代表者事項証明書」、「閉鎖事項証明書」などの種類があります。
履歴事項証明書
履歴事項証明書は、当該法人に関して法務局に登記されている現在の登記内容に加えて、過去3年間(正確には、当該証明書の交付の請求があった日の3年前の日の属する年の1月1日から請求があった日までの間)の変更履歴等が記載された証明書です。
会社の登記事項を証明する書類としては、これらの履歴事項の全部について記載された「履歴事項全部証明書」が一般的に利用されています。登記された事項の一部に関する証明のみで足りる場合には、「履歴事項一部証明書」が用いられることもありますが、登記事項証明書の提出が求められた場合において、特に証明書の種類について指定がない場合には、「履歴事項全部証明書」を取得した方が無難です。
なお、上記のとおり、履歴事項証明書には、現在及び過去約3年間の登記事項が記載されるのが原則ですが、証明の対象となる期間内に法務局の管轄を跨いで会社の本店を移転した場合には、現在の本店を管轄する法務局にて発行される履歴事項証明書には、(管轄外である)本店移転前の事項は記載されないこととなりますので、留意が必要です。このようなケースにおいて、本店移転前の登記事項の証明が必要な場合には、後述する閉鎖事項証明書を取得することになります。
現在事項証明書
現在事項証明書は、当該証明書の交付を請求した日現在の登記内容が記載された証明書です。過去の変更履歴(例えば、過去の役員の氏名など)やすでに抹消された事項(例えば、廃止された種類株式の内容など)については、原則として記載されません。ただし、会社の商号と本店所在地については、現在の内容に加えて直近の変更履歴が記載されています。
例えば、種類株式や新株予約権の発行や変更を繰り返している会社等においては、過去の種類株式や新株予約権の内容・変更点が逐一登記されることになるため、過去3年間を対象とする履歴事項証明書だと分量が多くなってしまうケースもあります。このようなケースで、すでに抹消・変更等された過去の履歴が必ずしも必要でない場合には、履歴事項証明書ではなく現在事項証明書が用いられることがあります。
また、履歴事項証明書の場合と同様に、現在の登記事項の全部について記載された「現在事項全部証明書」と、現在の登記事項の一部について記載された「現在事項一部証明書」がありますので、現在の登記事項の一部についての証明のみで足りる場合には、現在事項一部証明書を利用することも可能です。
代表者事項証明書
代表者事項証明書は、会社の代表者に関する事項に特化した証明書であり、代表者の氏名や住所、商号、法人番号などが記載されています。契約等や裁判上の手続きなどで代表者の資格証明書を求められた場合には、履歴事項証明書や現在事項証明書に代えて、代表者事項証明書を取得して提出することが可能です。
閉鎖事項証明書
閉鎖事項証明書は、過去に抹消又は閉鎖された登記情報が記載されている証明書です。このうち、「抹消された登記事項」とは、変更登記がされた際の従前の登記事項のうち、履歴事項証明書に記載されない過去3年間より前(正確には、過去3年前の日が属する1月1日より前)の登記事項を指し、「閉鎖された登記記録」とは、合併による解散や清算結了等により、登記記録が閉じられたものを指します。
歴史が長い法人や会社組織等の変更が多い法人について、履歴事項証明書には記載されていない過去の遍歴を確認する必要が生じた際などに使用します。なお、閉鎖事項証明書にも、抹消・閉鎖事項の全部が記載された閉鎖事項全部証明書と、抹消・閉鎖事項の一部のみが記載された閉鎖事項一部証明書が存在します。
法人の登記簿謄本に記載される内容(登記事項)
法人の登記簿謄本には、登記事項として様々な情報が記載されますが、株式会社や合同会社等に共通する主な登記事項としては、以下のようなものが存在します。
- 商号:会社の正式名称
- 目的:会社の定款に記載された事業目的
- 本店所在地:会社の住所
- 資本金の額:会社の資本金として計上されている金額
- 会社法人等番号:会社設立時に、商業登記規則に基づき会社や法人を識別するため会社設立時に付番された番号(12桁)
合同会社と株式会社の謄本の記載内容の違い
合同会社は、株式会社とは異なり、株式が発行されず、株主から経営を委任された役員も存在しない「持分会社」です。その違いを反映して、登記簿謄本についても、合同会社と株式会社とでは記載内容に異なる部分があります。
合同会社では役員でなく社員が記載される
株式会社においては、株主から経営を委任された役員(取締役、監査役等)の氏名が登記事項とされていますが、会社の所有と経営が厳格に分離していない合同会社においては、役員が存在しません。
合同会社では、出資により持分を取得する「社員」が原則として業務執行権限を有することとされていますが、その中から業務執行権限を有する社員を特に定めることも可能とされています。業務執行権限を有する社員を「業務執行社員」といい、業務執行社員については、株式会社の役員と同様に、その氏名が登記事項とされています。
また、業務執行社員は原則として会社を代表することになりますが、業務執行社員が複数存在する場合には、その中から会社を代表する者を特に定めることも可能とされています。会社を代表する社員として特に指定された社員を「代表社員」といい、代表社員については、株式会社の代表取締役と同様に、その氏名及び住所が登記事項とされています。
なお、合同会社においては、自然人だけではなく法人も社員になることができますが、会社法上、代表社員や業務執行社員が法人である場合には、当該法人は、実際の業務を執行する者(職務執行者)を選任しなければなりません。また、代表社員の職務執行者は、その氏名及び住所を登記しなければならないこととされています。
他方で、合同会社の代表権や業務執行権限を有しない社員については、氏名や住所が登記されることはありません。
株式の発行がない
株式会社においては、出資をした株主は会社から株式や新株予約権の発行を受けます。そして、株式会社の登記には、発行可能株式の総数、発行済株式の総数、種類株式や新株予約権の数・内容などが記載されます。
これに対して、合同会社においては、株式や新株予約権の発行は行われません。その代わりに、出資をした社員は、合同会社の持分を取得することとなりますが、持分に関しては登記事項とはされていません。ただし、合同会社においても、出資として払い込まれた金額(の一部)が資本金に計上されますが、資本金の額は、株式会社の場合と同様に登記事項とされています。
その他の違い
株式会社には決算公告(貸借対照表等の公告)の義務がありますが、株式会社が電子公告を採用するにあたっては、決算公告については、インターネットによる自社情報の公開のために使用していたホームページを利用するとともに、その他の公告事項の電子公告については、それとは異なるウェブページを用いることができるという制度が設けられています。
したがって、この制度を利用して、一般的な公告のためのURLと決算公告のためのURLをそれぞれ定めた場合には、その両方を登記することが可能です。
他方で、合同会社においては、株式会社とは異なり決算公告の義務がありませんので、一般的な公告のためのURLとは別に、貸借対照表等を公告するためのURLを任意に定めた場合であっても、後者を登記することはできないとされています。
合同会社の謄本を請求する方法
法人登記は、会社の基礎的な情報を一般に公示するための制度ですので、誰でも閲覧することができ、所定の手数料を支払うことにより、誰でも取得することが可能です。
法務局の窓口もしくは郵送で請求する
合同会社の登記簿謄本は、基本的に、各都道府県にあるどの法務局でも取得することができます。
法務局の開庁時間(平日午前9時〜午後5時)に窓口に出向き、備置されている交付申請書に記入の上、手数料分の収入印紙を添えて提出することにより、請求することができます。収入印紙は、法務局、郵便局、コンビニエンスストア等で購入できます。
また、交付申請書は、法務局のウェブサイトからも取得可能ですので、自宅等でダウンロードして印刷の上、記載例を参照しつつ必要事項を記入し、収入印紙を貼付して最寄りの法務局に郵送する方法によっても、謄本の交付を請求することも可能です。
窓口又は郵送で謄本の交付を請求する場合にかかる手数料は、1通600円となります。
オンラインで請求する
窓口又は郵送での請求は、法務局に交付申請書の紙を提出して登記簿謄本を請求する方法ですが、「登記・供託オンライン申請システム(登記ねっと)」を利用することにより、オンラインで登記簿謄本の交付を請求し、窓口又は郵送で謄本を受け取ることができます。窓口請求の場合とは異なり、平日午後9時まで利用可能であり、手数料も若干安く設定されています(窓口で受け取る場合は1通480円、郵送で受け取る場合は1通500円)。
さらに、登記簿謄本の内容を確認するだけで足り、物理的な登記簿謄本までは不要な場合には、「登記情報提供サービス」を利用することもできます。このサービスでは、1通あたり331円の手数料をオンライン(クレジットカードなど)で支払うことにより、登記簿謄本に似た外観の登記情報が記載されファイルをダウンロードすることが可能です。
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なお、公的な手続における会社情報の証明等では、法務局から交付を受けた登記簿謄本が必要とされ、「登記情報提供サービス」で取得したファイルの印刷物では受け付けてもらえない場合もありますので注意が必要です。
謄本取得代行サービスを利用してみる
本記事で解説したとおり、合同会社の登記簿謄本には様々な種類の証明書が存在し、また、その交付を受けるための手続も複数のパターンがあり得ます。
最近では、自らが申請書を作成して法務局に出向かなくとも、会社に関する様々な手続の際に必要となる登記簿謄本の取得を代行してくれるサービスなども登場していますので、そうしたサービスの利用を検討してみてもよいかもしれません。
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