みなさんの中には、会社の履歴事項全部証明書などの登記事項証明書(登記簿謄本)を請求しても「取得できなかった」、「登記記録が閉鎖されていた」という経験をお持ちの方もいるのではないでしょうか?
履歴事項全部証明書など会社の登記事項証明書は、一定の理由がある場合には取得ができなくなってしまうことがあります。この記事では、これらについての理由と、その場合の対処方法について解説いたします。
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会社の登記事項証明書(登記簿謄本)とは?
会社の登記事項証明書にはいくつかの種類があるため、用途にあった種類のものを取得する必要があります。そのため、登記事項証明書を取得する際には、その種類の違いや取得の方法をしっかりと理解しておきましょう。
登記事項証明書とは?
「登記事項証明書」とは コンピュータ上で管理されている会社や不動産の登記記録を印刷し、登記官が認証したものです。以前は登記簿謄本と呼ばれていましたが、コンピュータ化に伴い登記事項証明書という名称になりました。慣習的に今でも「登記簿謄本」と呼ばれることがあります。
登記事項証明書の種類
登記事項証明書には、その記載内容や記載量の異なる、以下の4種類があります。
①現在事項証明書
「現在事項証明書」とは、会社について現時点で効力を有する事項を記載したものです。
②履歴事項証明書
「履歴事項証明書」とは、現在効力をもっている登記事項、および一定期間内に抹消された履歴まで記載したものです。もっとも情報量の多い書類であるため汎用的に用いられます。
③閉鎖事項証明書
「閉鎖事項証明書」とは、合併や管轄外への本店移転、一定期間が過ぎたなどの理由により閉鎖された登記記録を記載したものです。
④代表者事項証明書
会社の代表者の代表権に関する事項で、現に効力を有する事項を記載したものです。その会社の現在の代表が誰なのかを確認する書類です。
上記①~③のなかでも「全部事項証明書」と「一部事項証明書」があります。実務で最も使用する証明書は「履歴事項全部証明書」となります。
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会社の登記事項証明書が取得できない場合の理由と対処法
登記事項証明書は、原則として法務局の業務時間内であれば、いつでもこれを取得できます。しかし、「登記の手続き中」や「登記記録が閉鎖されている」などといった場合には、原則として登記事項証明書が取得できなくなるため注意が必要です。以下では、それぞれのケースと対処法について解説いたします。
取得できない理由①登記の手続き中である
会社の登記事項証明書は、その会社で役員変更や本店移転など、何らかの登記手続きが行われている場合には、その登記手続きが完了するまで原則として取得できなくなります。
登記申請がされた場合、法務局側ではその会社の情報をロックします。
その上で、申請された登記の内容を確認し、問題なければコンピュータに申請された事項を記入し、最終確認ができたらロックが解除されます。
そのため、このロックがされている間については、登記事項証明書を取得することができないだけでなく、会社の印鑑証明書も取得できなくなります。
対処法
登記手続き中の場合は、基本的に登記処理手続きが終わるのを待つしかありませんが、対象の会社の管轄法務局では次の証明書を取得することができます。
①登記申請中の内容と関係がない事項の一部事項証明書
②登記申請中の内容と関係がない場合、印鑑証明書
③登記申請中の内容と関係がない場合、代表者事項証明書
登記事項証明書は全国どこの法務局でも取得することができますが、登記手続き中の場合は、その登記が申請されている管轄法務局であれば、登記申請中の内容が確認できるため、登記申請に関係ない登記事項証明書であれば取得できます。
取得できない理由②管轄外本店移転や合併等の理由で閉鎖されている
登記記録が閉鎖されている場合は、その登記記録に関して、履歴事項証明書や現在事項証明書、代表者事項証明書は取得することはできません。
履歴事項証明書や現在事項証明書、代表者事項証明書は現に効力を有する登記事項が記載されるものであり、閉鎖されている登記事項については記載されないためです。
登記記録の閉鎖は、「管轄法務局外への本店移転」や「合併による解散」、「組織変更」や「有限会社から株式会社への商号変更」などがされた場合に行われます。
対処法
登記記録が閉鎖されている場合には、履歴事項証明書などは取得できないため、登記事項を確認するためには、閉鎖事項証明書を取得することになります。
また、本店移転後の管轄法務局における登記記録や存続会社、組織変更後の会社の登記記録であれば、現に効力を有する登記記録であるため、履歴事項証明書などを取得することができます。
取得できない理由③清算結了がされたため閉鎖されている
解散した会社について「清算結了」が行われた場合には、登記記録は閉鎖されます。そのため、履歴事項証明書や現在事項証明書、代表者事項証明書は取得することはできません。
対処法
登記記録が閉鎖されている場合には、履歴事項証明書などは取得できないため、登記事項を確認するためには、閉鎖事項証明書を取得することになります。
また、会社の財産処分などが完了しておらず、さらに清算手続を行う必要がある場合には、清算結了の登記を抹消できる場合がありますので、そのような場合は履歴事項証明書などを取得できるようになります。
取得できない理由④みなし解散等により閉鎖されている
休眠会社とは、株式会社について、最後の登記の日から12年を経過した会社のことをいいます(有限会社は含まない)。
この休眠会社に対して、法務大臣は事業を廃止していない旨の届出をすべき旨を官報に公告し、その通知書が発送されますが、その届出をしないときは、2ヶ月の期間満了の時に解散したものとみなされます。
これを「みなし解散」といいます。
この「みなし解散」となった場合、職権でみなし解散登記がされますが、この段階ではまだ会社の登記記録は閉鎖されませんが、「みなし解散」を含む解散の登記がされてから10年を経過したときは、登記官は職権で登記記録を閉鎖することができ、登記記録が閉鎖されることで、履歴事項証明書などは取得できなくなります。
対処法
登記記録が閉鎖されている場合には、履歴事項証明書などは取得できないため、登記事項を確認するためには、閉鎖事項証明書を取得することになります。
また、解散後の一定期間の経過により、登記官の職権で登記記録が閉鎖された場合であっても「清算を結了していない旨」を申し出ることによって、登記記録は復活させることができます。登記記録が復活した場合は、履歴事項証明書などを取得できるようになります。
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まとめ
通常、登記事項証明書は、どこの法務局からでも請求することかできますが、登記申請がされている場合や登記記録が閉鎖されているときは、原則として取得することができなくなります。
なお、解散登記から一定期間を経過している場合や、清算結了などがされている場合には、登記記録が閉鎖され、その場合に取得できるのは閉鎖事項証明書となります。もし、何らかの財産や権利義務が残っている場合は一定の手続きをすることで、登記記録を回復し、履歴事項証明書などが取得できるようになる場合もあります。
登記事項証明書が取得できない場合でも、会社の状況や証明書を取得する目的などを考慮し、対処できる方法がないか確認しましょう。
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