現在、会社の設立時の登記において提出が必要な書類の一つとして「印鑑届出書」があります。
設立登記の申請の際は,会社代表者の印鑑(代表印)を印鑑届出書に押印して登記所に提出する必要があるという制度です。法務局への書面の持参もしくは郵送での提出が必要となっており、設立登記の完全オンライン化のハードルとなっていましたが、印鑑届出の義務付けが廃止され、押印不要となります。
本記事では、登記における印鑑届の提出義務の廃止について、その理由や現状について解説します。
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印鑑届書の提出の義務とは?
商業登記法第20条第1項にて以下のように定められています。
登記の申請書に押印すべき者は、あらかじめ、その印鑑を登記所に提出しなければならない。
このため、設立登記の申請の際に会社代表者の印鑑(代表印)を印鑑届書に押印して法務局などの登記所に提出する必要があるのです。
印鑑届書はこのようなフォーマット(法務局のWebサイトからエクセル形式でダウンロードできます)になっており、届出する印鑑(会社の代表印)や、届出する本人の実印を押印して提出します。
ここに押印されている印鑑のみが実印として認められるので、いまだにデジタルデータ対応されずに書面での提出が義務付けられています。
印鑑届出書を持参もしくは郵送で提出すべき理由
印鑑届書の提出が必要なのはわかりましたが、ここで出てくるのが「わざわざ書面でなくデジタルデータ化して提出すればいいのでは?」という疑問です。
現在、会社の設立登記そのものはオンライン化がされています。
であればなおさら、設立登記の際にデジタルデータ化して提出できるようにすればいいはずなのですが、現在は登記所に持参もしくは郵送での書面提出が必要になっています。
これには大きく2つの理由があります。
- 印鑑届書をPDFなどデジタルデータに変換することで画質の悪化や印影の照合が困難になる可能性
- デジタルデータ化されていると自由に拡大・縮小ができ、印影の正確な大きさを担保できない可能性
どちらも「印鑑」というフォーマットだからこそ発生する理由です。物理的な印鑑の陰影や大きさの確認が必要になってしまっているためどうしてもオンライン化ができないというわけなのです。
このように、印鑑届書を今のままデジタルデータ化するのでは無理があるため、本来の目的を果たせる別の方法を採用すべき、ということが現在議論されています。
法人設立における印鑑届出の義務の廃止(押印不要)議論の現状
では今後、法人設立における印鑑届出についてどのような取扱いになるのでしょうか?
実は会社法の改正に伴い、商業登記法第20条は削除されることとなり、印鑑届出の提出が任意となります。
設立後においては、会社実印や商業登記電子証明書が必要となる場面があると思いますので、印鑑届出や商業登記電子証明書の取得が必要になると思われますが、会社設立の登記で印鑑届出が不要になるということは設立のハードルを下げる上では大きな効果が見込まれます。
商業登記電子証明書については以下の記事もご参考ください。
関連記事:
オンラインでの登記申請に必要な商業登記電子証明書とは?取得方法や費用について解説します
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