株式会社の役員とは取締役・監査役・会計参与のことを指し、以前の会社法ではそれぞれ設置が必須でした。しかし、平成18年に新会社法が施行され、非公開会社で取締役会を設置していない場合、監査役を設置する義務がなくなりました。とはいえ、目的があったり、ある程度の規模の会社であれば監査役設置が必要になるケースも増えます。
本記事では監査役の役員変更を対象に、監査役を重任する場合の流れ、監査役重任登記の必要書類・費用などを徹底解説します。
なお、取締役の重任についてお調べの方は、下記の記事で解説していますのでご確認ください。
株式会社の役員重任ガイド~役員(取締役・監査役)重任の基礎知識から役員重任登記までの必要手続きを徹底解説します
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監査役とは
監査役は株主総会で選任され、取締役および会計参与の職務の執行を監査する役割があります。一般的には会社の規模を問わずに計算書類等の監査を行う会計監査と、取締役の職務の執行を監査する業務監査の役割があります。
具体的な監査内容
- 取締役が職務を執行するにあたり、忠実に義務を遂行し、法令や定款に違反する不当な行為を行っていないか
- 取締役会・株主総会の決議に則り職務を執行しているか
- 会社法が定める計算関係書類等の内容が、適正に処理されているか
監査の過程で不当だと判断した場合は、主に以下の任務を遂行します。
- 取締役会(設置していない場合は取締役)への報告
- 株主総会への報告
- 違法行為の差し止め請求
- 損害賠償請求のための会社訴訟提起
監査役の任期
まずは監査役の任期についてですが、以下のように期間が定められています。
※期間の違いを覚えれるように、取締役・会計参与の任期も記載しています。
- 取締役:原則として2年
- 監査役:原則として4年
- 会計参与:原則として2年
原則として、選任後、上記の期間内に終了する最終事業年度に関する定時株主総会の終結の時までですが、取締役・監査役及び会計参与の任期については、非公開会社の場合、10年まで任期を伸長することができます。
ここで一つ注意が必要なのですが、役員の任期満了日を迎えた場合、定時株主総会にて「任期満了による退任」か「次期継続(重任)」の判断をする必要がありますが、「うっかり任期満了日を忘れていて手続きを怠ってしまった」という話しをよく聞きます。特に任期を10年に伸長している場合は、各役員の任期満了日がいつなのかをしっかりと管理しておくよう注意しましょう。
監査役の重任とは
監査役の重任とは、現在の監査役が任期満了日を迎えて退任し、同日に開催される定時株主総会にて再び監査役に就任することをいいます。厳密に言うと、定時株主総会の終了により監査役を退任し、同じ定時株主総会での決議により再び監査役に就任することになります。
任期満了日と再就任日が異なる場合は重任ではない
監査役再任の中で、就任期間が連続している場合を重任と呼びますが、期間が離れている場合は重任ではなく就任(再任)となります。
例えば、監査役は任期満了日(定時株主総会開催日)をもって自動的に退任(株主総会の決議は必要なし)となりますが、任期満了日を忘れていて同じ定時株主総会で監査役就任(再任)の決議をしていなかったとします。
その後任期満了日を過ぎていることに気づき、退任日より後に開催された株主総会による決議で監査役に就任(再任)、退任日と就任日が異なるので重任ではなく、退任後に就任(再任)となります。
退任日と就任日(再任日)が異なる場合の問題点
任期満了日の確認を怠り、退任日と就任日(再任日)が異なる場合、いくつかの問題点がありまます。
監査役不在の期間が発生する
監査役退任後、就任日(再任日)まで一定期間監査役が不在となりますので、監査役設置義務のある会社の場合は義務を怠ることとなります。また、業務上やり取りのある会社などに、与信調査として自社の登記簿謄本を調べられた際、不在期間の存在に気づかれ会社の信頼度に影響が出てしまう可能性がありますので注意が必要です。
役員変更登記申請時は役員重任ではなく、退任後、就任(再任)となる
監査役が退任、就任、重任などをした場合は役員変更登記が必要となりますが、期間が離れている場合は役員重任登記を申請することはできません。一度役員退任登記をした後に、役員就任登記を申請する必要があります。
監査役を重任させるメリットとデメリット
監査役の任期は4年ですが、非公開会社の場合は任期を10年まで伸長することができ、任期が満了した後も重任することができます。同一人物を継続して監査役に就かせることは、メリットもありますがデメリットもあるようです。
メリット
継続して取締役を監査することになりますので、過去の問題点の把握、改善案の提案などがしやすいです。また、取締役だけではなく、会社の金銭面や社内全体の問題点に対しても意見しやすいというメリットがあります。
デメリット
同一人物が長期間監査役に就いている場合、取締役との関係が深くなり、適正に監査できなくなる可能性があります。新たに社外監査役を迎え入れることにより、社内に新しい風を吹かせることも会社の業務改善には必要かもしれません。
監査役の重任では2週間以内に役員変更登記が必要
監査役が重任した場合は役員変更登記が必要です。役員変更登記には期限があり、2週間以内に申請する必要があります。
2週間を過ぎてからも役員変更登記の申請は可能で、書類に不備がなければ通常どおり受理されますが、期限を過ぎてからの申請は「登記懈怠」となり、代表者個人が過料(100万円以下)の制裁を受けてしまう可能性がありますので注意が必要です。
登記申請期限の起算日について
2週間以内に変更登記申請が必要となりますが、それでは2週間をカウントする初日はいつのなるのでしょうか?答えは、初日不算入の原則により「変更が生じた日」の翌日が起算日となります。監査役が重任した場合は、監査役の重任日の翌日が起算日となります。
ただし、「その期間が午前0時から始まる場合は、初日算入」となります。
例えば、株主総会の終結により退任・就任した場合は翌日が起算日となりますが、株主総会の翌日を就任・退任日とした場合は初日が起算日となります。
監査役重任登記に必要な登録免許税
監査役重任登記申請には登録免許税の納付が必要です。金額は以下の通りです。
- 資本金が1億円を超える会社の場合:3万円
- 資本金が1億円未満の場合:1万円
監査役重任による変更登記の必要書類
監査役重任による変更登記の必要書類は以下の通りです。
- 変更登記申請書
- 株主総会議事録(決議されたもの)
- 就任承諾書
- 株主リスト
- 委任状
変更登記申請書およびその他書類の見本
必要書類の見本を紹介します
変更登記申請書
就任承諾書
株主リスト
委任状
監査役重任登記申請を行う3つの方法
監査役重任登記申請の方法には主に3つの方法があります。それぞれの申請方法のメリット・デメリットを紹介しますので、自分に合った申請方法をご確認ください。
1.自分で書類の作成から申請までを行う
費用を極力掛けずに申請をする場合は、自分で書類の作成から申請までを済ませることができます。ただし、書類を作成する為には登記についての正しい知識が必要となり、登記申請の経験が無い方には大きな手間が掛かるのがデメリットです。書類を全て揃えるのには大変な時間が掛かりますので、オススメしない方法です。
2.司法書士に依頼する
お金が掛かりますが、これが一番楽で簡単な方法です。司法書士は登記の専門家なので、司法書士へ依頼すれば書類の作成から申請まで任せることができます。自分のリソース(時間)を使わなくて良いことが最大のメリットですが、専門家報酬の支払いが発生する、何回かのやり取りが必要になり、申請までに時間が掛かる場合があるなどのデメリットもあります。
申請期限まで時間があり、予算に余裕がある方は司法書士に丸投げしてしまうことも一つの手ですが、司法書士へ依頼するよりも時間を掛けずに費用を抑えて簡単に登記書類の作成・申請を済ませる方法があります。それは、次に紹介するオンラインサービスを活用する方法です。
3.オンラインサービスを利用する
最近は色々なオンラインサービスが登場していますが、変更登記申請をサポートしているオンラインサービスがあることをご存知でしょうか?司法書士へ依頼する場合に比べ費用を抑えることができ、時間を掛けずに申請を済ませることができますので、費用を抑えて時間を掛けずに登記申請をしたい方はぜひご利用ください。
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・株主リスト
・印鑑届出書
・就任承諾書(役員就任・重任)
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まとめ
今回は監査役の重任について解説させていただきました。大きな会社でなければ、そもそも監査役を設置していなかったり、設置していても頻繁に入れ替わることは少ないのではないかと思います。文中でもお伝えしましたが、任期満了日と就任日(再任日)が異なる場合は登記申請の方法が変わりますのでご注意ください。最後までお読み頂きありがとうございました。
執筆者:GVA 法人登記 編集部(GVA TECH株式会社)/ 監修:GVA 法律事務所 コーポレートチーム
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