取締役の「競業避止義務」は、企業の利益を守るために極めて重要な役割を果たします。特に、取締役は業務執行に深く関わり、企業の機密情報を知る立場にあるため、機密保持に関するルールは欠かせません。しかし、退任後もこの義務が適応されるのかは、具体的なケースや裁判例によって判断されます。
そこで本記事では、競業避止義務の基本的な内容から、有効性判断のポイントや具体例について詳しく解説します。また、注意点やリスクについても説明しますので、参考にしていただければ幸いです。
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取締役の競業避止義務とは?
競業避止義務の概要、制度の制定理由や背景、根拠となる法令などについて説明します。会社の経営に深く関わる取締役は、一般社員にくらべて、義務に関するルールが厳しくなっていますので、あわせて解説します。
競業避止義務の基礎知識
競業避止義務とは、在籍する会社と競合するような事業を行ってはならない義務のことをいいます。取締役の競業避止義務に関しては、会社法356条などで別途規定されています。
競業避止義務は、基本的には在籍中の従業員や取締役が対象になりますが、退職後も一定の範囲内で適用されます。法令や会社との契約など、ケースバイケースで義務が課せられる内容が異なりますので、労使ともにしっかりと把握しておきましょう。一般的には「退職後1~3年の範囲で競合他社への転職」などを禁止するケースが多くなります。
競業避止義務が課される理由と背景
労働者は、会社の重大な情報や特別なノウハウを知れる立場にあるため、同業他社で副業したり秘密の漏洩をされたりすると、企業は大きな損害を受けるため義務が課されています。
特に、取締役は業務執行に関して大きな権限を有し、機密情報にも通じています。そのため、その地位を利用すれば、会社を犠牲にして自己または第三者の利益を図ることができるため、このような義務が定められています。
競業避止義務は、代表取締役だけでなく全ての取締役が対象になります。社外取締役や、実際には業務執行に従事していない取締役も対象になりますのでご留意ください。
会社法における競業避止義務の規定
取締役の競業や利益相反取引の制限については、会社法第356条で「取締役は株主総会の承認を受けなければ、自己または第三者のために、会社の事業の部類に属する取引を行うことができない」などと定められています。
取締役が競合取引を行うことは、会社の利益を侵害する可能性が高いため、株主総会の承認を得ることによって、その透明性を確保しようとするものです。したがって、会社の事業に関連する分野での取引や事業活動を行う際には、必ず事前の承認が求められることになります。
競業避止義務が成り立つ有効性判断のポイント
競業避止義務が実際に有効と判断されるためには、以下のような要素が考慮されます。特に、「労働者の役職等」は重要なポイントとなります。
・会社が受ける損害 ・労働者の役職等 ・禁止するエリアの決定 ・禁止する年数 ・禁止する競業の範囲 ・禁止に対する対価 ・過去の判例など |
有効性判断の裁判例はケースバイケースで分かれており、「一般従業員が業務で得た人脈は営業上の秘密に該当しない(東京高判 H24.6.13)」と義務違反が否認される場合もあります。
競業取引とは
取締役が自己または第三者のために、会社の事業と競合する取引を行うことを指します。
例えば、「飲食チェーンを営む会社の社外取締役が、別の会社を立ち上げて同様の事業を展開する場合」や「建設会社の取締役が、同じく建設業を展開する別の会社の役員に就任する場合」などが挙げられます。これらのケースでは、義務違反が問われる可能性が高くなりますので注意が必要しましょう。
競業避止義務の対象範囲
このルールは、代表取締役に限られたものではありません。業務執行に従事しているか否かにかかわらず、すべての取締役に適用されます。これは、会社の内部情報やノウハウを保持している人物の義務違反を防ぐためです。また、競業避止義務の適用範囲は、さまざまな要素を総合的に考慮して判断されます。
特に、労働者や取締役がどのような地位や役職にあるかは、裁判でも重要な判断材料とされています。職務の実態が、取締役に類する権限などが与えられているケースなどは、競業避止義務の有効性が高くなります。
競業避止義務違反の具体例【退職後】
競業避止義務違反の具体例は、以下のようになります。
・競合他社への転職 ・会社と同業種での独立 ・機密情報などの持ち出し |
ここでは、あわせて実際の判例も紹介しますので、参考にしていただければ幸いです。
ただし、退職後の競業避止義務違反に関しては、「従業員の役職や禁止の範囲」など、さまざまな要素を総合的にみて判断されますので注意が必要です。
競合他社への転職
取締役は、一定の期間、競合他社への転職が制限されることが一般的です。競合への転職は、前企業の顧客情報の持ち出しや、マニュアル・ノウハウの流用など、さまざまな問題をはらんでいるためです。
会社と同業種での独立
競合への転職と同様に、前企業と同業種での独立も制限されることが一般的です。競合への転職と同様の問題が発生する可能性が高いためです。
ただし、すべてが禁止されるわけではありませんので、前企業との話し合いのうえ独立することは可能です。他府県や営業エリアが異なる場合や、同じ業種でも取扱商品が少し異なる場合などであれば、認められるケースもありますので、しっかりとした意思疎通が大切です。
機密情報などの持ち出し
機密情報などの持ち出しは、競業避止義務以外のさまざまな法律でも禁止されていますので、特に注意が必要です。罰則も非常に重く、懲役刑や多額の罰金が科せられるケースもありますので、労使ともに慎重な取り扱いが求められます。
実際の裁判例とその結果
競業避止義務違反後の具体例とその対応
義務違反が発生した場合、取締役の責任は非常に重くなります。通常、取締役が法令に違反して損害賠償を負う場合、被害者は損害額を立証する必要があります。
しかし、会社法第423条第2項では「取締役や第三者が得た利益額が損害額と推定される」特別な規定が設けられており、取締役が得た利益がそのまま損害賠償の額とされる場合があるため、取締役に対する責任追及がしやすくなっています。
競業行為における注意点やリスク
在職中の取締役には、会社法356条などによって競業避止義務が課せられていますが、退任後は一定の範囲内でしか適用されないので注意が必要です。また業種や状況によって、認められる範囲はケースバイケースになりますので、裁判例の確認や専門家への相談も検討しましょう。
取締役の退任後の競業避止義務
日本国憲法22条では「職業選択の自由」が認められているため、退任後の取締役の競業避止義務は、基本的には限定的に認められるにすぎず、自由に転職や起業できるのが原則となります。
ただし、判例においては、退任後の取締役も職業選択の自由を持つ一方で、企業に損害を与える競業が許されない場合もあるとしています。一般的には「同一県内で1~3年以内の同業他社への転職禁止」など、範囲を指定したうえで制限されるケースが多くなります。
競業避止義務が無効になる可能性とその対策
上記のように退任後の取締役には注意が必要で、企業は対策を講じる必要があります。特に、禁止の範囲を広くすればするほど、無効とされる可能性が高くなるため、適正な範囲で具体的に決めておくことが重要です。
①契約書での明確化
取締役を任命する際には、取締役契約書などで、労働条件やさまざまな取り決めを行います。そして、この契約書の内容の一部として競業避止義務に関する規定を盛り込むことが一般的です。この規定は、できるだけ具体的で、判例などを参考に妥当なものにしておくことが重要です。
会社側だけに有利なように、過剰な内容にしてしまうと、無効になることがありますので注意が必要です。非常に重要なものになりますので、契約書の作成は、弁護士・司法書士などの専門家への相談がおすすめです。
②秘密保持契約(NDA)の締結
秘密保持に関しても、取締役の就任時に「機密保持に関する誓約書」や「秘密保持契約」などを結ぶケースが増えています。これらでは、退職後の競業禁止や秘密保持についても記載されていることが多くなりますが、退任時にも再度「秘密保持契約」を締結し、企業の重要な機密を守ることを念押ししておきましょう。
在籍中の取締役には、競業避止義務とともに秘密保持義務(善管注意義務含む)がありますが、書面にして具体的な内容のすり合わせを行うことは、実務上でも非常に重要です。
③競業避止義務の監視
上記①②にくわえて、約束した競業避止義務が守られているかどうかを定期的に確認する体制を整備しておきましょう。
「3ヶ月に1度、社内の法務部が調査する」「半年に1度、社外の専門家に調査依頼する」など具体的内容を決めて、社内に周知しておきましょう。このような調査体制が周知されているだけで、ルール違反への抑止力になり効果的です。
退任後の取締役の競業避止義務のポイント
取締役の競業避止義務は、企業の利益を守るために欠かせない規制です。この義務は在任中だけでなく、退任後にも一定の条件下で継続しますので、しっかりとした対策が必要です。
具体的な義務の有効性は、「会社での立場や競業行為の内容、期間や地域的な制限」などに基づいて総合的に判断されます。さらに、ルールに違反した場合、取締役へ損害賠償責任などのペナルティが課せられるケースもあるため、企業は契約書の整備や秘密保持契約の締結などを通じてリスク管理を徹底することが求められます。
退任後の競業避止義務に関しては、企業と取締役の双方が納得できる範囲で合理的な制限を設定し、必要に応じて代償措置を講じることも検討しましょう。取締役としての責任を果たしつつ、企業の発展を支えるために、この義務を理解し、適切な対応を取ることが求められます。
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