役員報酬は企業経営において重要な要素であり、適切な設計が企業の財務状況や税務戦略に大きな影響を与えます。
特に中小企業にとって、役員報酬を通じた効果的な節税は経営課題の一つで、多くの経営者は「適切な役員報酬の金額設定」「損金算入の条件」「税務調査のリスク」などの問題に直面しています。
役員報酬の節税が重要な理由は、企業の税負担を適切に管理し、限られた資金を効果的に活用できるからです。適切な設計によって、法人税の負担軽減や会社の資金繰り改善が可能となります。
この記事では、役員報酬の基礎知識から損金算入の仕組み、「定期同額給与」の活用法、さらには税務調査対策まで、実践的な情報を解説します。効果的な節税戦略の立て方や潜在的なリスクの管理方法など、経営者の皆様や財務担当者の方々にとって、実務に直結する有益な情報源です。
ぜひ、最後までお読みください。
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そもそも役員報酬とは?
役員報酬とは、取締役や監査役などの会社役員に支払われる報酬を指し、基本給、賞与、退職金などが含まれます。
役員報酬は、企業の経営戦略や業績に直接的な影響を与えるため、その設定は慎重に行う必要があります。
また、役員報酬は企業の成長を促進するためのインセンティブとしても機能し、適切な報酬設計が企業の競争力を高める重要な要因となります。
適切に設計された役員報酬は、以下のような重要な役割を果たします:
1. インセンティブとしての機能:企業の成長を促進し、役員のモチベーションを高めます。
2. 競争力の向上:優秀な人材を確保・維持するための重要な要素となります。
3. 企業の透明性向上:適切な報酬開示は、株主やステークホルダーとの信頼関係構築に寄与します。
4. ガバナンスの強化:経営者と株主の利益を一致させ、長期的な企業価値の向上につながります。
一方で、役員報酬は税務上の重要な側面も持っています。
適切に設計された役員報酬は、企業の税負担を最適化し、経営資源の効率的な配分を可能にします。しかし、不適切な報酬設計は税務リスクを高め、企業の財務健全性を脅かす可能性もあります。そのため、法令遵守と効果的な節税のバランスを取ることが重要です。
役員報酬の理解とその重要性を認識することは、経営者や財務担当者にとって不可欠な要素です。適切な報酬設計は、企業の持続的な成長と競争力強化に直結する重要な経営課題なのです。
役員報酬の決定プロセス
役員報酬の決定は、主に以下のプロセスを経て行われます。
1. 定款での規定:会社の定款に報酬に関する規定が含まれていることが前提です。これによって、
報酬決定の基本的な枠組みが設定されます。
2. 株主総会での決議:具体的な報酬総額または報酬の上限を決定します。この段階で、株主の承認を
得ることで透明性が確保されます。
3. 取締役会での個別配分:株主総会で決定された範囲内で、各役員への具体的な配分を決定します。
この際、企業の業績や市場動向を考慮し、適切な報酬額を設定します。
役員報酬の相場
役員報酬の相場は、企業規模や業種によって大きく異なります。以下は、令和4年度民間給与実態統計調査結果から作成したものです。
単位:千円
資本金 | 男性 | 女性 | 平均 |
---|
2,000万円未満 | 7,386 | 4,253 | 6,470 |
2,000万円以上 | 10,381 | 6,617 | 9,529 |
5,000万円以上 | 13,168 | 7,269 | 12,326 |
1億円以上 | 13,621 | 5,810 | 12,304 |
10億円以上 | 18,335 | 9,685 | 17,583 |
出典:「令和4年度民間給与実態統計調査結果 第6表 企業規模別及び給与階級別の総括表(役員)」から編集部が作成
このデータが示す役員報酬の実体は以下の通りです。
1. 企業規模の影響:資本金規模が大きくなるほど、役員報酬も増加する傾向が明確です。これは企業
の財務力が報酬に直接、反映されていることを示しています。
2. 性別による差異:全ての資本金規模において、男性の役員報酬が女性を上回っています。ただし、
大企業では女性役員の報酬も相対的に高くなり、多様性への配慮が見られます。
このように、役員報酬の設定では、企業の財務状況や業績、業界標準、そして多様性への配慮など、多面的な要素を考慮する必要があることを示唆しています。適切な役員報酬の設計には、これらの要因を総合的に評価し、自社の状況に応じて調整することが重要です。
役員報酬が企業の財務と税務に与える影響
役員報酬は、企業の損益計算書上で人件費として計上されるため、直接、利益に影響を与えます。税務上は一定の条件を満たせば損金算入が可能となり、法人税の計算にも大きく関わってきます。
適切に設計された役員報酬は、以下のような効果をもたらします。
このように、役員報酬の適切な設計は、企業の財務健全性に寄与するだけでなく、税務戦略の観点からも非常に重要です。さらに、企業の財務パフォーマンスの向上、税務上のメリット、そして経営陣のモチベーション向上など、多面的な効果をもたらします。
つぎからは、この役員報酬を税務上どのように扱うべきか、特に損金算入の観点から詳しく説明します。
損金算入とは?
損金算入とは、企業の収益から差し引くことができる経費のことを指します。役員報酬においても、一定の条件を満たせば損金算入が認められ、法人税の計算上、課税所得を減少させる効果があります。しかし、すべての役員報酬が無条件に損金算入できるわけではありません。ここでは、損金算入の基本的な仕組みと、役員報酬への適用について詳しく解説します。
以下のような場合、役員報酬は損金不算入となります。
1.過大な役員報酬
具体例:市場相場の平均が1,000万円程度であるにもかかわらず、3,000万円の報酬を支給した場合。
同業他社と比較して明らかに高額な報酬は、税務上で損金として認められません。
2.事前確定届出給与を行っていない役員賞与
具体例:会社の業績が予想以上に良かったために、決算賞与として1,000万円を支給した場合。
後述する「事前確定届出給与」の手続きを事前に税務署へ届けていない場合、損金としては認められません。
3.不相当に高額な退職金
具体例:在職年数が短いにもかかわらず、5,000万円の退職金を支給する場合。
在職年数や貢献度と比較して過大な退職金は損金として認められません。特に中小企業では、退職金の計算基準を明確にし、市場相場や業界基準と照らし合わせて適正な額を設定することが重要です。
4.隠蔽された役員報酬
給与として支払われていないが、実質的に役員が受け取っている金銭や経済的利益は損金として認められません。
これらのケースでは、企業が利益操作を行って不当に税負担を軽減することを防ぐために、税法上で厳格な基準が設けられています。企業はこれらの基準を理解し、適切な役員報酬制度を構築することが求められています。
損金算入に制限があるケース
以下のケースでは、役員報酬の損金算入に制限があります。
1.変動する給与
毎月の支給額が変動する給与は損金算入が制限されます。
2.事後的に決定される報酬
株主総会で事後的に決定される報酬(役員の報酬が株主総会で正式に承認される前に実際に支給されたり、決定されたりすること)は、原則として損金算入が認められません。
3.同族会社の場合の役員報酬
法人税法第34条および第35条に基づき、特殊支配同族会社(株主の50%以上が同一の親族に属し経営陣も親族が占めている同族会社)においては、同族会社の役員報酬は、役員の親族関係や支配権の影響を受けやすく、税務当局から厳しく審査されます。
参考:
・特殊支配同族会社の役員給与の損金不算入制度に関する質疑応答事例(18年12月)
・9 役員給与等|国税庁
このように、役員報酬の損金算入には様々な制限があり、適切な報酬設計が節税の鍵となります。特に同族会社の場合は、より慎重な対応が求められます。
損金算入が可能な役員報酬
役員報酬の中でも、一定の条件を満たすものは損金算入が可能です。ここでは、主な3つの類型について解説します。
定期同額給与
定期同額給与とは、毎月同じ金額を定期的に支給する役員給与のことです。この給与形態は、最も一般的で、かつ損金算入がしやすい役員報酬の形式です。
定期同額給与が損金算入される条件
1. 支給時期が1ヶ月以下の一定の期間ごとであること
2. 各支給時期における支給額が同額であること
3. 事業年度内で一定の時期に限って支給額を変更する場合、下記のいずれかに該当すること
- 事業年度開始から3ヶ月以内の変更
- 会社の経営状況が著しく悪化したことによる減額改定
- 職制上の地位の変更等による改定
定期同額給与は、その予測可能性と安定性から、税務当局に認められやすい報酬形態です。例えば、月額100万円の役員給与を12ヶ月間支給する場合、年間1,200万円が損金算入可能となります。
ただし、年度途中での増額は原則として認められないため、業績向上に応じて柔軟に報酬を増やすことは難しいという欠点があります。そのため、業績連動給与や賞与と組み合わせて設計することが一般的です。
また、年度途中での減額は業績悪化等による改定を除き、同年度内で既に支給した役員報酬も、減額後の報酬金額までしか損金算入が認められないため注意が必要です。
事前確定届出給与
事前確定届出給与は、株主総会等で決議された具体的な支給額を、支給時期も含めて事前に税務署長に届け出ることで、損金算入が認められる給与形態です。
事前確定届出給与の主な特徴
1. 具体的な金額を事前に確定させる必要がある
2. 届出は株主総会等の決議から1ヶ月以内に行う必要がある
3. 届出通りに支給しなければ、全額が損金不算入となる
この給与形態は、年1回や半年に1回など、定期同額給与では対応できない報酬の支給に適しています。例えば、7月に500万円、12月に700万円の賞与を支給する場合、事前に税務署に届け出ることで、合計1,200万円の損金算入が可能となります。
参考
・No.5211 役員に対する給与(平成29年4月1日以後支給決議分)|国税庁
業績連動給与
業績連動給与は、会社の業績指標に連動して変動する役員給与のことです。この給与形態は、従来は主に上場会社の業務執行役員に限定されていましたが、現在はより広範囲の会社に適用可能となっています。
業績連動給与の主な条件
1. 適用対象が一定の要件を満たす法人の業務執行役員等
2. 客観的な指標(売上高、営業利益等)に基づいて算定される
3. 算定方法が事業年度開始前に定められ、適切に開示されている
適用対象となる法人の要件
- 一定の要件を満たす同族会社(例:非同族株主が3分の1以上の議決権を有する同族会社)
業績連動給与は、役員のモチベーション向上と会社業績の向上を結びつける効果がありますが、適用要件が厳しいため、主に大企業で採用されています。
例えば、営業利益の3%を役員報酬として支給する場合、営業利益が10億円であれば3,000万円の報酬が損金算入可能となります。
事前に定められた利益指標に基づく報酬は、一定の条件下で損金算入が認められますが、開示要件等の厳格な条件があります。具体的には、算定方法の内容を事業年度開始日の3ヶ月前の日から当該事業年度開始日までの間に、有価証券報告書等により開示する必要があります。
参考:
・算定方法の内容の開示(業績連動給与)|国税庁
・『「攻めの経営」を促す役員報酬-企業の持続的成長のためのインセンティブプラン導入の手引-』を改訂しました (METI/経済産業省)
・『「攻めの経営」を促す役員報酬-企業の持続的成長のためのインセンティブプラン導入の手引-』
ここまで、役員報酬の損金算入方法について解説しました。
適切な報酬設計は、企業の節税戦略において重要な役割を果たします。特に、同族会社の場合は特別な注意が必要である点、業績連動給与を採用する場合は厳格な開示要件を満たす点に留意が必要です。ただし、税法は複雑で頻繁に改正されるため、具体的な報酬設計を行う際は、税理士や会計士などの専門家に相談することをお勧めします。
役員報酬を節税する方法
役員報酬は、適切に設計することで合法的かつ効果的な節税手段となります。ここでは、役員報酬を中心とした様々な節税アプローチについて、具体的な実施方法と注意点を解説します。
配偶者を役員にする
配偶者を役員に登用することで、所得を分散させ、世帯全体の税負担を軽減できます。これにより、高額所得者に対する累進課税の影響を緩和し、配偶者控除も有効活用できます。ただし、配偶者の業務内容と貢献度を明確にし、適正な役職と報酬額を設定することが重要です。
親族を役員にして役員報酬を渡す
親族を役員として起用し、適切な報酬を支払うことで、各個人の所得税率を下げて、家族全体の所得を最適化できます。ただし、親族の実際の業務への関与度合いを明確にし、実務に基づいた合理的な報酬額を設定することが重要です。
役員報酬とは別に通勤手当を支給する
通勤手当は一定の条件下で非課税となるため、役員報酬とは別に支給することで、実質的な手取り額を増やせます。これにより、課税対象となる報酬額を抑えつつ、役員の実収入を確保できます。ただし、実際の通勤実態に即した法定限度内での適正な金額設定が必要です。
役員住居の契約を会社名義に変更する
役員の住居を会社名義で契約することで、家賃や関連費用を会社の経費として計上できます。これによって、個人所得としての課税を避けつつ、役員報酬を抑えられ、税負担が軽減されます。ただし、適正な賃料設定や、役員の私的利用との区分けなどに注意が必要です。
倒産防止共済(経営セーフティ共済)を利用する
倒産防止共済に加入することで、月々の掛金を経費として計上できます。企業の税負担を軽減しつつ、万が一の際に一定の金額を受け取ることができるだけでなく、共済金の受け取り時には課税されないため、将来のリスクに備えつつ、税負担を軽減できるメリットがあります。
役員報酬を活用した節税戦略:押さえるべきポイントと注意点
役員報酬を活用した節税戦略を実施する際には、いくつかの重要なポイントに注意が必要です。
まず、市場相場を考慮し、同業他社と比較して過大な役員報酬を避けることが大切です。
特に同族会社では、役員の業務内容や貢献度を明確にし、報酬の決定プロセスや金額に透明性を確保することが重要です。株主総会での承認や取締役会での決議を経るなど、正式な手続きを踏むことで、税務調査のリスクも軽減できます。
次に、定期同額給与や事前確定届出給与、業績連動給与などを組み合わせて柔軟かつ効果的な報酬体系を構築します。
配偶者や親族を役員に登用する場合、その役割と報酬が実際の業務内容や貢献度に見合ったものであることが極めて重要です。通勤手当や役員住居の契約変更についても、法定限度内での適正な金額設定とします。
倒産防止共済や小規模企業共済などの制度は、節税効果だけでなく長期的なリスク管理の一環として捉えることも大切です。
さらに、企業の成長段階や経営環境の変化に応じて、定期的に役員報酬制度を見直し、最適化を図ることも重要です。
税法は複雑で頻繁に改正されるため、戦略を実施する際は、税理士や会計士などの専門家に相談することも必要です。最適な役員報酬の設計と運用によって、効果的な節税戦略と健全な企業経営の両立が可能となります。
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