NPO法人も補助金が使える?「非営利」の誤解と対象の補助金・助成金、申請方法を解説

補助金申請
投稿日:2025.11.11
NPO法人も補助金が使える?「非営利」の誤解と対象の補助金・助成金、申請方法を解説

「NPO法人は非営利だから、利益を出すような国の補助金は対象外なのでは?」 「活動資金が寄付や会費だけでは厳しく、補助金・助成金を活用したいが、どう探せばいいか分からない…」
NPO法人の運営に携わる多くの方が、このような疑問や悩みを抱えているのではないでしょうか。

結論から申し上げますと、NPO法人も補助金・助成金の対象となります。

ただし、NPO法人の「非営利」の定義を正しく理解し、「収益事業」と「特定非営利活動」で申請すべき制度が全く異なることを知っておく必要があります。
この記事では、NPO法人が補助金・助成金を最大限活用するための基本知識、対象となる制度、申請方法まで解説します。

補助金・助成金とは?

まず、資金調達の選択肢を理解するために、補助金と助成金の基礎知識を説明します。
補助金は、主に国や自治体の政策目標(事業革新、IT化推進など)を実現するために、事業者の経費の一部を支援する「審査・競争型」の資金です。
対して助成金には2種類あり、厚生労働省系の「雇用系助成金」(雇用の安定・促進が目的)と、民間財団や自治体系の「公益活動系助成金」(社会貢献活動の支援が目的)に分かれます。

補助金とは?

  • 目的: 国や自治体の政策目標の実現。
  • 特徴: 審査あり(競争・採択型)。 財源は主に税金(予算)です。申請しても必ず採択されるとは限らず、事業計画の質や独自性が問われます。

助成金とは?

  • 雇用系助成金(厚生労働省系)
    • 目的: 雇用の安定・促進(例:人材育成、非正規社員の正社員化)。
    • 特徴: 審査なし(要件充足型)。財源は雇用保険料です。要件を満たして申請すれば原則として受給できます。
  •  公益活動系助成金(民間財団・自治体系)
    • 目的: 社会課題の解決、文化・芸術の振興など、公益的な活動の支援。
    • 特徴: 審査あり(審査・採択型)。団体の理念や活動内容が、財団の支援テーマと合致するかが問われます。


NPO法人の非営利の誤解と2つの事業

NPO法人が補助金・助成金を申請する上で、最も重要なのが「非営利」の定義と、法人が行う「2種類の事業」の理解です。

非営利の本当の意味

NPO法人の非営利は、「利益を上げてはいけない(=無償ボランティア)」という意味ではありません。正しくは、「活動で得た利益(収益)を、株式会社の株主配当のように役員や会員に分配(配当)してはいけない」という意味です。 得られた利益は、法人の目的である社会貢献活動に再投資することが法律で定められています。

定款で定められた「2つの事業」

NPO法人は、この「非営利」の原則のもと、法律上、以下の2種類の事業を行うことができます。これらは設立時に作成する「定款」で必ず分けて記載されています。

  1. 特定非営利活動に係る事業(主たる目的)
    • 法人の本来の目的である、社会貢献活動そのもの。法律で定められた20分野(例:保健・医療・福祉、まちづくり、環境保全)の活動です。
  2. その他の事業(収益事業)
    • 上記「1」の特定非営利活動の費用に充てるため、つまり活動資金を稼ぐために行う事業です。(例:カフェの運営、オリジナルグッズの販売、有料セミナーの開催)

この2つの事業は、狙うべき資金調達先が全く異なります。

【比較表】NPO法人が狙うべき3つの資金調達

申請対象

資金の名称

主な支援元

審査のポイント

特定非営利活動

助成金・委託費

民間財団・自治体

活動の「公益性・社会貢献性」

その他の事業(収益事業)

補助金

国(経済産業省など)

事業の「将来性・収益性」

雇用(スタッフ)

助成金

国(厚生労働省)

雇用の維持・改善(要件充足)

NPO法人の補助金申請における課題と注意点

NPO法人の申請が難しいとされる理由は、主に「定款の不備」「人手不足」、そして「収益事業」として申請すべきか「非営利活動」として申請すべきかの「混同」にあります。

 定款の壁(最重要)

  • 申請したい事業が、定款に明記されていないと対象外となります。
  • 審査では必ず定款の提出を求められます。例えば、カフェ運営(収益事業)のために国の補助金を申請したくても、定款の「その他の事業」に「飲食店の経営」といった記載がなければ、その時点で法人の事業ではないとみなされ、審査の土台にすら乗れません。

体制・リソースの壁

  • 多くのNPO法人は少人数のスタッフやボランティアで運営されており、申請書類の作成や、採択された後の複雑な事務処理・実績報告に対応できる専従スタッフ(人手)が不足しがちです。
  • また、ほとんどの補助金・助成金は、事業実施後の後払い(精算払い)が原則です。採択されても、事業費(数十万~数百万円)を一時的に立て替えるつなぎ資金を確保できる財務体力が必要です。

事業性説明の壁

  • 国の補助金に申請する場合、NPO法人は「中小企業者」として扱われます。
  • 審査では、活動の社会貢献性や理念は評価されません。株式会社と同様に、「市場規模」「競合優位性」「収益計画」といった事業としての将来性・収益性を、客観的なデータで論理的に説明する必要があります。

対象外制度の把握

  • 知名度が高い補助金でも、NPO法人は対象外となっているケースがあります。
  • 代表例として、「小規模事業者持続化補助金」は、現在の公募要領ではNPO法人は対象外と明記されています。必ず公募要領の「補助対象者」の欄を確認することが必須です。


NPO法人が対象となる代表的な補助金・助成金リスト

法人の「目的」に応じて、申請すべき制度は異なります。ここでは代表例を3つのパターンに分けて紹介します。
(※注意)公募要領は年度によって変更されます。申請時は必ず最新の情報を事務局公式サイトで確認してください。

「収益事業」(その他の事業)を拡大・IT化したい場合

  • 例1:IT導入補助金
    • 概要: 会計ソフト、顧客管理システム、ECサイト構築など、業務効率化やDX推進のためのITツール導入を支援します。NPO法人の収益事業部門の効率化にも活用できます。
  • 例2:事業再構築補助金
    • 概要: 新たな事業分野への進出など、事業の再構築を支援します。収益事業を行っており、「中小企業者」としての要件(※)を満たせば対象となる可能性があります。(※資本金や従業員数に準ずる規定あり)

「特定非営利活動」(本来の活動)を支援してほしい場合

  • 例1:民間財団の助成金
    • 概要: 日本財団、赤い羽根共同募金、各種企業財団など。「子ども支援」「環境保全」「文化振興」など、財団のテーマに沿った社会貢献活動が対象です。
  • 例2:地方自治体の助成金・協働事業
    • 概要: 「〇〇市 市民活動支援助成金」「〇〇県 協働事業提案」など。地域の課題解決(まちづくり、福祉、防災など)に取り組む活動が対象です。

スタッフの雇用維持・環境改善をしたい場合

  • 例1:キャリアアップ助成金
    • 概要: 有期雇用のスタッフ(アルバイト・契約職員など)を正規雇用に転換したり、処遇を改善したりした場合に受給できます。
  • 例2:人材開発支援助成金
    • 概要: スタッフの専門性向上のために、外部研修の受講などをさせた場合の費用(経費や賃金)の一部を助成します。


対象となる補助金の探し方

申請する制度の「目的」に応じて、参照すべき情報サイトも異なります。


補助金の申請方法

申請する分野や法人が直面する課題によって、頼れる専門家は異なります。

【比較表】補助金・助成金申請における専門家(士業)と得意分野

士業

主な得意分野(NPO法人関連)

こんな時におすすめ

行政書士

定款変更の手続き、非営利系助成金の申請支援。

申請したい事業が定款にない場合。民間財団への申請書類作成。

中小企業診断士

事業系補助金の申請支援。(事業計画書の策定)

収益事業で、国の補助金を申請したい場合。

社会保険労務士 (社労士)

雇用系助成金の申請代行(独占業務)。

スタッフの雇用・処遇を改善したい場合。

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診断だけでなく、支援担当とのオンライン相談もできますので、補助金・助成金について検討している場合は、考え込むよりもまずは行動してみることをおすすめします。

NPO法人も「補助金」「助成金」の対象となります

NPO法人も、「収益事業」と「特定非営利活動」を明確に使い分けることで、補助金・助成金を活用できるチャンスが広がります。
NPO法人が補助金・助成金を活用する成功の鍵は、まず「自法人の定款」を開き、申請したい事業が「その他の事業」または「特定非営利活動」として明記されているかを確認することです。
NPO法人の「非営利」を理解し、積極的に補助金・助成金の申請を検討しましょう。

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