法人の車両購入に使える補助金・助成金を解説

補助金申請
投稿日:2025.11.11
法人の車両購入に使える補助金・助成金を解説

建設業や運輸業、または訪問サービス業など、事業に車両が不可欠な会社で「業務で使うトラックやバン、営業車を新しく購入・増車するのに補助金は使えないだろうか?」と考えたことはありませんか?

結論から申し上げますと、「車両購入そのものを目的とした補助金・助成金は非常に少ない」ものの、「特定の条件や目的(創業時、特定の車種など)であれば、補助金や優遇制度の対象」となり得ます。

この記事では、法人が車両購入を検討する際に知っておくべき補助金について解説します。

補助金・助成金と、車両購入との関係

まず、よく混同されがちな「補助金」と「助成金」の違いについて整理しましょう。どちらも国や自治体から支給される返済不要の資金ですが、その性格は異なります。

補助金

  • 管轄(例):経済産業省、地方自治体など
  • 目的:国の政策(DX推進、脱炭素、事業再構築、創業支援など)を達成するため、事業者の取り組みを支援するもの。
  • 特徴:予算や採択件数に上限があり、申請しても審査によって採択・不採択が決まります。事業計画の「質」や「政策目的に合致しているか」が問われます。
  • 車両購入との関係:もし車両購入が対象となる場合、それは「助成金」ではなく、国の特定の政策目的(例:創業支援、脱炭素)に合致する「補助金」であるケースがほとんどです。


助成金

  • 管轄(例):厚生労働省など
  • 目的:雇用の維持・促進、労働環境の改善(例:非正規社員の正社員化、育児休業の取得促進)など、「ヒト」や雇用、福利厚生に関する取り組みを支援するもの。
  • 特徴:要件(例:特定の制度を導入し、実施する)を満たしていれば、原則として採択されます。
  • 車両購入との関係:目的が「雇用・労働環境」であるため、車両購入の費用が助成金の対象となることはほぼないといえます。



補助金と助成金には、上記のような違いがあります。業務用の車両購入においては「補助金」の情報を探すことになります。

車両購入を直接対象にした補助金は少ない

がっかりされるかもしれませんがこれが現実です。なぜ、車両購入は補助金の対象になりにくいのでしょうか。その理由は、補助金の多くが「国が解決すべき社会課題」への取り組みを支援するために設計されているからです。例えば、以下のようなテーマです。

労働者人口の減少→DX(デジタルトランスフォーメーション)やITツール導入による「生産性向上」「省人化」
事業承継の停滞→M&Aや事業承継(世代交代)を支援
新しい生活様式への対応→テイクアウトやデリバリーへの業態転換(事業再構築)

一方で、「車両(特に一般的なガソリン車や営業車)」は、特定の業種を除けば多くの企業で使用できる「汎用性が高い物品」とみなされます。金額は異なりますが、コピー機などに近いイメージです。補助金の原資は税金なので「A社は採択されたのに、B社は採択されなかった」という不公平感をなくすため、また、補助金がなくても購入するであろう汎用品(PC、スマホ、乗用車など)に税金が使われるのを避けるため、多くの補助金では「車両購入費」は対象外経費となっています。

ただし、明確な例外があります。それは「脱炭素(カーボンニュートラル)」という、国が掲げる非常に重要な政策テーマに関連する場合です。

EV(電気自動車)、PHEV(プラグインハイブリッド車)、FCV(燃料電池車)

これらの「クリーンエネルギー自動車」の導入に対しては、専用の補助金(例:クリーンエネルギー自動車導入促進補助金など)が設けられています。

これは「車両購入」を支援しているというより、「環境性能の高い車両を普及させ、CO2排出量を削減する」という政策目的の達成を支援しています。ですので、運輸業や建設業で多くのトラックや商用車を保有している場合、これらの車両への切り替えは、補助金活用の大きなチャンスとなります。

創業時の補助金の用途として車両購入は可能

もう一つの可能性は「創業時」です。

既存の事業者が「古いトラックを新しいトラックに買い替える」のは、単なる設備更新とみなされがちですが、「これから運送業を始めるために、最初の1台としてトラックを購入する」のは、「創業に必要な経費」とみなされる場合があります。特に、創業期に申請できる補助金の中には、経費の使途(使い道)の自由度が高いものがあります。

こうした補助金は「車両購入」を目的としたものではありませんが、採択されれば、補助対象経費(機械装置費、広報費、店舗改装費など)の一部として、事業に不可欠な車両の購入費を計上できる可能性があります。ただしもちろん、事業計画書の中で「なぜその車両が事業に不可欠なのか」「その車両を使ってどのように売上を上げるのか」を審査で納得してもらえるように説明し、採択されることが必要です。

なお、補助金は採択・交付決定後に事業を開始し、経費を支払い、事業が完了した後に報告書を提出して、最後にお金が振り込まれる「後払い」が原則です。ゼロからのスタートとなる創業時はまず車両を購入する資金が必要です。補助金をあてにしつつも、まずは自己資金や融資で資金を確保し、運転資金に余裕を持たせることが極めて重要です。補助金ありきの創業計画にならないように注意しましょう。

車両購入に使える補助金の例

創業時や、事業計画の内容次第で、車両購入費を経費として計上できる可能性のある補助金の例を3つご紹介します。(※制度内容は変更されるため、必ず最新の公募要領をご確認ください)

1. 小規模事業者持続化補助金

通称「持続化補助金」と呼ばれる、小規模事業者の「販路開拓」や「生産性向上」の取り組みを支援する、非常に人気の高い補助金です。

  • 車両購入の可能性
    • 原則として、単なる車両購入は対象外です。
    • しかし、「創業枠」で申請する場合や、「補助事業計画の遂行に不可欠な車両(例:移動販売車、キッチンカーのベース車両)」であり、「その車両でなければ当該事業(=販路開拓)が実施できない」と明確に説明できる場合に、例外的に認められる可能性があります。(ただし、公道を走る移動目的の車両は不可、とされる場合も多く、公募回ごとの要領の確認が必須)


2. ものづくり補助金(ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金)

革新的な製品・サービス開発や、生産プロセスの改善に必要な「設備投資」を支援する補助金です。

  • 車両購入の可能性:
    • 原則として、公道を走行する車両は対象外なため、今回の目的を果たせない可能性が高いです。
    • ただし、「工場敷地内のみを走行するフォークリフトや無人搬送車(AGV)」、「特殊な計測機能を持つ高所作業車」など、その車両が単なる「移動手段」ではなく、「生産性向上に直結する機械装置」として扱われる場合は、対象となる可能性があります。


3. 自治体独自の創業補助金・支援金

国(経済産業省など)の補助金とは別に、都道府県や市区町村が独自に実施している創業支援制度です。

  • 車両購入の可能性:
    • 国の補助金よりも要件が緩やかで、経費の使途も柔軟な場合があります。
    • 例えば、「〇〇市内での創業」を条件に、「開業に必要な経費(店舗改装費、備品購入費、車両費含む)」といった形で、事業開始に必要な初期投資を幅広く認めてくれるケースがあります。
    • 自社が拠点を置く自治体ごとに制度があるので、ホームページや商工会議所で、「創業支援」「起業 補助金 車両」といったキーワードで確認することをおすすめします。

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ここまでご覧いただいたように、車両購入に補助金を使う道はゼロではありませんが、多くの条件や例外、資金調達において別の選択肢があることも理解する必要があります。

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本記事で解説したとおり、補助金はその申請経験の有無が重要な手続きです。自分でやってみて、条件に合致しなかったり、リソースを確保できないといった問題を先回りしてチェックしたりアドバイスが得られるのは大きなメリットです。かけた時間や労力が無駄になってしまうリスクを減らせます。

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補助金・助成金の申請に必要な登記変更や登記簿謄本が必要になったら

補助金や助成金の申請における添付書類の代表格が法人の登記簿謄本(登記事項証明書)です。
書類の用意はもちろんですが、その内容にも注意が必要なことをご存知でしょうか?

・補助金対象の自治体に本店や支店の登記が必要になる
・補助金の対象となる事業目的が登記簿謄本内にも記載されていなかった
・代表者や役員の住所変更時の登記を申請しておらず、古いままになっていた

このようなことがあれば、審査通過以前の問題ですし、慌てて登記申請したとしても補助金申請の締切に間に合わないという可能性があります。
今後補助金申請を検討している方は、現在の登記簿謄本の内容を確認して、必要なら時間に余裕をもって変更登記を申請しておきましょう。
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車両購入における補助金利用のハードルは高いことを理解しておきましょう

車両購入と補助金について、基本的な考え方と選択肢の可能性を紹介しました。

補助金の申請には、皆様の事業が「なぜ国の政策に合致するのか」を説明する、説得力のある事業計画書が不可欠です。まずは事業計画を固めた上でオプションとしての補助金活用を模索するのが王道といえるでしょう。

執筆者

執筆者:GVA 法人登記 編集部(GVA TECH株式会社)/ 監修:GVA 法律事務所 コーポレートチーム

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