「一般社団法人は、株式会社に比べて補助金申請が不利なのでは?」 「非営利の活動がメインだから、国の補助金は対象外?」一般社団法人の運営に携わる方の中には、資金調達の方法として補助金・助成金を検討しつつも、このような疑問をお持ちの方も多いでしょう。
結論から話しますと、一般社団法人を対象とした補助金・助成金は存在します。ただし、株式会社やNPO法人とは異なる探しにくさや、申請にあたって乗り越えるべき特有の課題があるのも事実です。
この記事では、補助金・助成金の基本から、一般社団法人が直面しやすい課題、具体的な制度の探し方、そして頼れる相談先まで、申請に必要な情報をに解説します。
一般社団法人でも補助金・助成金は使える?申請の課題から探し方、専門家まで解説
- 補助金・助成金とは?
- 補助金とは?
- 助成金とは?
- なぜ一般社団法人は補助金・助成金を探しにくいのか?
- 一般社団法人の補助金申請における課題と注意点(申請が難しい4つの理由)
- 情報収集の課題
- 要件確認の課題(立ち位置の明確化)
- 事業計画の課題(説明のハードル)
- 体制・リソースの課題
- 一般社団法人が対象となる代表的な補助金・助成金リスト
- パターンA:収益事業の拡大・IT化を目指す場合(事業系補助金)
- パターンB:公益活動・社会貢献活動を推進する場合(公益系助成金)
- パターンC:従業員の雇用維持・環境改善を行う場合(雇用系助成金)
- 申請へのロードマップ①「探し方」
- 申請へのロードマップ②専門家(士業)の選び方
- 補助金・助成金を3分で無料診断してみる
- 補助金・助成金受給後に発生する変更登記はGVA 法人登記が便利です
- 一般社団法人も補助金・助成金の対象となります
補助金・助成金とは?
まず、混同されがちな「補助金」と「助成金」について、どちらも国や自治体、民間団体から支給される原則返済不要の資金ですが、その目的や性質が大きく異なります。
補助金とは?
- 目的: 国の政策目標の実現(例:事業革新、IT化推進、創業支援など)
- 財源: 主に国や自治体の予算(例:経済産業省など)
- 特徴: 審査あり(競争・採択型)。 申請には詳細な事業計画書が必要で、審査によって採択・不採択が決まります。申請しても必ず受給できるとは限らず、事業の将来性や革新性が問われます。
助成金とは?
- 目的: 雇用の安定・促進(例:雇用維持、人材育成、労働環境改善など)
- 財源: 主に雇用保険料(例:厚生労働省など)
- 特徴: 審査なし(要件充足型)。 公募要領で定められた要件(例:「非正規社員を正社員化した」)を満たして申請すれば、原則として受給できます。
(補足)民間財団の「助成金」
この記事では、上記(厚労省系)とは別に、民間財団が提供する「助成金」も紹介します。これらは社会貢献活動などを支援するもので、厚労省系とは異なり、審査・採択(競争)があるものが多いため注意が必要です。
なぜ一般社団法人は補助金・助成金を探しにくいのか?
一般社団法人が補助金・助成金を探しにくい最大の理由は、法人の立ち位置が「営利」と「非営利」の両方の側面を持つためです。
- 株式会社のように収益事業を行えるため、「営利企業向け」の補助金対象になることがあります。
※ここで言う「非営利」とは、株式会社のように出資者へ利益を分配(配当)できない点を指します。サービスや商品を提供して対価(利益)を得る収益事業を行うことは可能であり、その事業に対して補助金が支給されるケースがあります。
- NPO法人のように公益活動を行えるため、「非営利団体向け」の助成金対象になることもあります。公益社団法人のような公益認定や、NPO法人のような認証は受けていなくても、公益的な活動(社会貢献活動)を行えるため、「非営利団体向け」の助成金対象になることもあります。
つまり、対象となる支援制度が「株式会社向け」と「NPO法人向け」に分散してしまっており、情報収集が困難なのです。 また、「一般社団法人のみ」を対象とする制度は極めて稀で、「中小企業者等」や「非営利団体」といった広い枠組みの中に、自法人が含まれるかを個別に確認する必要があります。
【比較表】法人格による補助金・助成金の対象傾向
法人格 | 主な目的 | 対象となりやすい支援 | 具体例 |
|---|---|---|---|
株式会社 | 営利追求 | 事業系補助金(生産性向上、事業拡大) | ものづくり補助金、小規模事業者持続化補助金 |
NPO法人 | 非営利(公益) | 公益系助成金(社会課題解決) | 民間財団の助成金、自治体の協働事業 |
一般社団法人 | 目的による | 両方の可能性がある(※法人の実態次第) | 事業再構築補助金(収益事業型)、民間助成金(非営利型) |
一般社団法人の補助金申請における課題と注意点(申請が難しい4つの理由)
一般社団法人の申請が難しいとされる理由は、主に「情報収集」「要件確認」「事業計画」「体制」の4つの課題(注意点)があるためです。
情報収集の課題
検索しても株式会社向けの情報(例:小規模事業者持続化補助金など)が目立ちますが、公募要領をよく読むと一般社団法人は対象外であるケースが多くあります。収益事業と非営利活動でも参照すべき情報源が全く異なるため、効率的な情報収集が困難です。
要件確認の課題(立ち位置の明確化)
自法人が「非営利型法人」か「(非営利型でない)普通法人」かによって、応募できる制度や審査のポイントが異なります。国の補助金(営利目的)と財団の助成金(非営利目的)では、求められる「法人の顔」が正反対になるため、申請する制度に合わせて法人の立ち位置を明確にする必要があります。
事業計画の課題(説明のハードル)
- (補助金の場合)「なぜ一般社団法人が収益事業を行うのか?」という点を、市場分析や収益予測を用いて論理的に説明し、事業の将来性をアピールする必要があります。
- (助成金の場合)「なぜNPO法人ではなく一般社団法人として活動するのか?」といった、活動の公益性や法人格選択の妥当性を説明する必要があります。
体制・リソースの課題
専従の事務局スタッフが不足している法人も多く、複雑な公募要領の読み解きや事業計画書の作成といった申請業務のマンパワー不足が課題となります。また、補助金・助成金は原則「後払い(精算払い)」のため、採択されても事業実行中にかかる経費を一時的に立て替える「つなぎ資金」を確保できる財務体力も必要です。
一般社団法人が対象となる代表的な補助金・助成金リスト
ご自身の法人の「活動目的」に合わせて、対象となる制度が異なります。ここでは代表的な制度を3つのパターンに分けてリストアップします。
(※注意)公募要領は年度や回次によって変更されます。申請時は必ず最新の情報を事務局公式サイトで確認してください。
パターンA:収益事業の拡大・IT化を目指す場合(事業系補助金)
主に経済産業省系。法人の「中小企業者」としての側面(収益事業)に着目した支援です。
- 事業再構築補助金
- 目的: 新規事業への進出、事業の再構築(例:対面サービスからオンライン事業へ転換)
- ポイント: 公募要領で一般社団法人(非営利型でないものも含む)が対象と明記されている代表的な補助金です。
- IT導入補助金
- 目的: 会計ソフト、受発注システム、ECサイト構築などのITツール導入による業務効率化。
- ポイント: 一般社団法人も対象に含まれます。インボイス対応やDX推進などで活用しやすいです。
【注意】対象外となる代表例
- 小規模事業者持続化補助金: 知名度が高い補助金ですが、現在の公募要領では一般社団法人は対象外とされています。
パターンB:公益活動・社会貢献活動を推進する場合(公益系助成金)
主に民間財団や自治体。法人の「非営利活動」に着目した支援です。
- 日本財団
- 目的: 社会福祉、教育、文化、海洋保全など、非常に幅広い分野の公益活動を支援。
- ポイント: NPO法人と並び、非営利型の一般社団法人も対象となるプログラムが多数あります。
- 〇〇(自治体名)市民活動支援助成金
- 目的: 地域の課題解決(子育て、まちづくり、環境保全など)
- ポイント: 「〇〇市 NPO 助成金」などで検索すると、一般社団法人も対象となる地域の制度が見つかることがあります。
- (その他、活動分野に応じた財団)
- 例:文化芸術系(アーツカウンシル等)、環境系、福祉系など多数。
パターンC:従業員の雇用維持・環境改善を行う場合(雇用系助成金)
主に厚生労働省系。従業員を雇用し、雇用保険に加入していれば、法人格を問わず対象となります。
- キャリアアップ助成金
- 目的: 非正規雇用の従業員(パート・契約社員など)の正社員化、処遇改善を行った場合に支給。
- 人材開発支援助成金
- 目的: 従業員に対して専門的な知識・技能を習得させるための研修(OJT・Off-JT)費用を助成。
- 雇用調整助助成金
- 目的: 景気の変動などで事業活動が縮小した際、従業員を解雇せず休業させた場合に休業手当の一部を助成。
申請へのロードマップ①「探し方」
法人の目的に応じて、参照すべき情報サイトが異なります。
- 収益事業がメインの場合(パターンA)
- 中小企業庁のポータルサイト「J-Net21」
- 各補助金の事務局公式サイト(「事業再構築補助金」などで直接検索)
- 非営利活動がメインの場合(パターンB)
- 民間助成金検索サイト(例:CANPAN FIELDS など)
- 内閣府「NPOポータルサイト」(※NPO法人向け情報が多いですが参考になります)
- 雇用関係の場合(パターンC)
- 厚生労働省「事業主の方のための雇用関係助成金」ページ
- 共通
- 都道府県、市区町村のWebサイト(「〇〇県 補助金」「〇〇市 助成金」)
申請へのロードマップ②専門家(士業)の選び方
申請する補助金・助成金の「分野」によって、強みを持つ専門家(士業)が異なります。丸投げはせず、法人の強みを理解し、事業計画を一緒にブラッシュアップしてくれるパートナーとして依頼することが重要です。
【比較表】補助金・助成金申請における専門家(士業)と得意分野
士業 | 主な得意分野(補助金・助成金関連) | こんな申請におすすめ |
|---|---|---|
中小企業診断士 | 事業系補助金の申請支援。 (経営分析、市場分析、説得力のある事業計画書の策定) | 事業再構築補助金やIT導入補助金など、収益事業の将来性や革新性をアピールする必要がある国の補助金。 |
社会保険労務士 (社労士) | 雇用系助成金の申請代行。 (厚労省系助成金の専門家であり、多くは独占業務) | キャリアアップ助成金や雇用調整助成金など、従業員の雇用維持や処遇改善に関する助成金。 |
行政書士 | 非営利系・その他の申請支援。 (民間財団や自治体の助成金、公募要領の解読、複雑な申請書類の作成) | 活動の公益性・社会貢献性をアピールする民間財団・自治体の助成金。または、事業系補助金の書類作成サポート。 |
税理士・公認会計士 | 補助事業に関する財務・資金計画の策定。 (※顧問税理士が申請支援を行う場合) | 申請時に精緻な資金計画や投資対効果の説明が求められる補助金。または、採択後の「つなぎ資金」の融資相談。 |
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一般社団法人も補助金・助成金の対象となります
成功の鍵は、まずは自法人の「立ち位置(収益事業型か非営利型か)」を明確にし、その目的に合った分野の情報を積極的に取りに行くことです。
この記事を参考に、まずは紹介したサイトで、自法人の活動地域や分野に合う制度が公募されていないか調べてみましょう。