被扶養者届における扶養認定の年収130万円の壁:交通費・賞与・パート収入の含め方を解説

労務書類
投稿日:2026.06.18
被扶養者届における扶養認定の年収130万円の壁:交通費・賞与・パート収入の含め方を解説

会社を設立したばかりの経営者にとって、社会保険の手続きは頭の痛い問題のひとつです。特に被扶養者届は、配偶者や家族を健康保険の扶養に入れる際に欠かせない手続きですが、「年収130万円の壁って何?」「交通費は収入に含まれるの?」という疑問を持つ方も多いはずです。

さらに2026年は、この130万円の壁のルールそのものが大きく変わる年でもあります。

この記事では、社会保険における扶養認定の基準となる年収130万円の壁について、2026年4月からの新ルールを踏まえた上で、交通費・賞与・パート収入の取り扱いをわかりやすく解説します。

そもそも被扶養者届とは?

健康保険の「被扶養者届(健康保険被扶養者(異動)届)」とは、会社員や経営者(被保険者)が、生計を共にしている家族を健康保険の扶養に入れるために提出する書類です。

扶養に入ると、配偶者や子どもは別途保険料を払わずに健康保険の給付を受けられます。これは家族全体の社会保険コストを抑えられる大きなメリットです。

会社を設立した直後に自分の配偶者を扶養に入れたい場合などは、この届出が必要になります。提出先は日本年金機構(または加入している健康保険組合)です。

年収130万円の壁とは何か?

扶養に入れるかどうかの基準として、よく耳にするのが年収130万円の壁です。

社会保険の扶養認定における年収基準は以下のとおりです。

  • 60歳未満の場合:年収130万円未満(月収換算で約10万8,333円未満)
  • 60歳以上または障害者の場合:年収180万円未満(月収換算で約15万円未満)
  • 同居の場合:収入が扶養者(被保険者)の収入の半分未満
  • 別居の場合:収入が扶養者(被保険者)からの仕送り額未満

  
この130万円を超えると、配偶者や家族は自分自身で健康保険に加入しなければなりません。つまり、扶養から外れることで保険料の負担が新たに発生します。

【重要】2026年4月から判定方法が変わりました

2026年4月から、扶養認定における年収の判定方法が大きく変更されました。

旧ルール(2026年3月以前)

これまでは、「今後1年間の収入見込み」を総合的に判断する方式でした。残業代や一時的な収入増も含めて月収が10万8,333円を超えると「見込みが130万円以上になった」と判断され、扶養を取り消されるリスクがありました。そのため、繁忙期に残業を抑えたり、シフトを減らしたりする働き控えが社会問題となっていました。

新ルール(2026年4月以降)

2026年4月からは、「労働契約書(労働条件通知書)に記載された所定労働時間・時給・勤務日数をもとに算出した年収見込み」が判定基準になりました。

つまり、雇用契約上の年収が130万円未満であれば扶養と認定され、一時的な残業などで実際の収入が130万円を超えた場合でも、その超過が社会通念上妥当な範囲にとどまる限り、原則として扶養は取り消されません。

この変更により、配偶者がパートで働く場合でも、繁忙期の残業を気にせず働きやすくなりました。

注意点:労働契約書の内容を意図的に実態より低く記載して扶養資格を維持しようとする行為は不正とみなされます。あくまで実態に即した契約内容が前提です。

2026年4月以降も収入に含まれるものとは?

判定方法は変わりましたが、年収の計算に何を含めるかという点は引き続き重要です。社会保険の扶養判定における収入の範囲は、税務上の収入とは異なります。

交通費(通勤手当)は含まれる

税務上、通勤手当には非課税枠(月15万円まで)がありますが、社会保険の扶養判定においては交通費も収入としてカウントされます。新ルールの下でも、労働条件通知書に記載された交通費は年収計算に合算されます。

例えばパートで時給1,000円、週4日、1日6時間勤務の場合、年間給与収入は約125万円となり、給与だけで見ると130万円未満に収まります。しかし、月5,000円の通勤手当(年間6万円)が支給されている場合、給与と交通費の合計収入は約131万円となり、社会保険上の扶養の判定では130万円を超えるため注意が必要です。交通費(通勤手当)も130万円の判定に含まれます。

賞与(ボーナス)は含まれる

賞与も収入に含まれます。労働条件通知書に賞与の支給が明記されている場合は、その金額も年収に加算して判定します。

複数のパート先の収入はすべて合算する

複数の勤務先で働いている場合は、すべての勤務先からの収入(それぞれの交通費・賞与含む)を合算して判定します。A社とB社の契約がそれぞれ130万円未満でも、合算すると超えるケースには注意が必要です。

収入として算入されるものの主な例


収入の種類

扶養判定への算入

給与・賃金(所定労働分)

✅ 含む

通勤手当(交通費)

✅ 含む

賞与・ボーナス

✅ 含む

各種手当(残業手当・役職手当など)

✅ 含む(ただし一時的残業は新ルールで扱いが変化)

雇用保険の失業給付(基本手当)

✅ 含む

傷病手当金・出産手当金

✅ 含む

年金収入

✅ 含む

不動産賃貸収入

✅ 含む

事業収入(経費控除後)

✅ 含む

なお、相続・贈与による収入や保険金(一時金)など、一時的な性質の収入は原則として算入されません。

130万円の壁を超えた場合はどうなるか?

被扶養者の年収が130万円以上になった場合、被扶養者(扶養されている側)は自分自身で社会保険に加入する必要があります。

具体的には次のどちらかになります。

  1. 勤務先の社会保険に加入する(後述する「週20時間」などの一定条件を満たす場合)
  2. 国民健康保険・国民年金に加入する


どちらの場合も保険料の自己負担が発生します。家族全体の手取り収入を考えると、少し稼ぎすぎると手取りが逆に減るという逆転現象が起きることがあるため、収入の見通しを持ちながら働き方を検討することが重要です。

扶養から外れる場合の手続き

被扶養者の収入が130万円を超える見込みになったら、被保険者(会社の経営者や社員)は「健康保険被扶養者(異動)届」を会社経由で提出する必要があります。

放置すると、後から無資格受診として医療費の返還を求められるケースもあるため、状況が変わった段階で速やかに手続きをしてください。


法人成りしたばかりの経営者が陥りやすいのが、配偶者がパートで働いているが、交通費や賞与を含めると年収が130万円を超えていることに気づかなかったというケースです。

設立直後は自社の社会保険加入手続きと同時に、家族の扶養状況も確認しておきましょう。

チェックすべきポイントは次のとおりです。

  • 配偶者・家族の労働条件通知書に基づく年収(交通費・賞与含む)が130万円未満か
  • 複数の勤務先がある場合は全収入の合算で判断しているか
  • 失業給付や傷病手当金など給付金の受給状況は確認したか
  • 扶養に入れたい家族が加入する健康保険組合独自の基準に該当しないか確認したか


106万円の壁との違いと2026年10月の変更も知っておこう

106万円の壁という言葉も話題です。これは、一定の条件を満たすパート・アルバイトが勤務先の社会保険に加入義務が生じるという基準のことで、130万円の壁(扶養認定の基準)とは別の制度です。

2025年6月に年金制度改正法が成立し、2026年10月から「月額賃金8.8万円以上(年収106万円相当)」という賃金要件が撤廃される予定です。これにより、実質的に「106万円の壁」はなくなり、週20時間以上の所定労働時間が主な加入判定基準となります。
そのため、週20時間以上働く方は、扶養内で働くつもり(雇用契約上の年収が130万円未満)あっても社会保険への加入が必要となる場合があり、注意が必要です。

さらに企業規模要件(現在は従業員51人以上の事業所が対象)も2027年10月以降に段階的に撤廃される見通しです。将来的にはほぼすべての企業が対象になるため、一人会社の経営者であっても今後の動向を把握しておく必要があります。

なお、106万円の壁が撤廃されても130万円の壁(扶養認定の基準)は別途存在し続けます。両者は混同しやすいので注意してください。

106万円の壁との違いと2026年10月の変更も知っておこう

時期

変更内容

2026年4月〜

130万円の壁の判定方式が「見込み収入」から「労働契約上の年収」へ変更

2026年10月〜

106万円の壁(月額賃金要件)が撤廃。週20時間が加入基準へ

2027年10月〜

企業規模要件が段階的に撤廃開始

本記事は2026年5月時点の情報をもとに作成しています。社会保険の制度は今後も法改正により変更される場合があります。具体的な手続きについては、日本年金機構や加入している健康保険組合、または社会保険労務士にご相談ください。

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