発起人が2人以上でも、会社設立の流れは1人の場合と同じです。手続きが異なるのは、定款への署名、発起人どうしの同意、出資の払込み、および書類が発起人の人数分に増える点です。
つまずきやすいのは、手続きそのものより「決め方」です。出資比率で決まる議決権、代表取締役を誰にするか、退任時の株式の扱いは、設立後に変えにくい項目です。設立前に、共同で設立する全員の認識をそろえておく必要があります。
この記事では、発起人が1人の場合との手続きの違いの比較表、出資比率と議決権の関係、共同経営で事前に合意しておく論点、共同代表の注意点、依頼先を選ぶときの確認事項を解説します。
発起人が2人以上の会社設立における手続きと共同経営の注意点
発起人が複数でも設立の流れは同じ
発起人とは、定款を作成し、設立の手続きを進める人です。発起人の人数に制限はなく、1人でも複数でも構いませんが、発起人は、設立時に株式を1株以上引き受ける(出資する)必要があります。発起人の詳しい役割や資格は発起人とは?役割と責任、誰にするかの決め方を解説で解説しています。
法務省のWebサイトでも紹介されている、株式会社設立(発起設立)の大まかな流れは次のとおりです。この流れ自体は発起人の人数が増えても同じです。
- 発起人が定款を作成し、全員が署名または記名押印する
- 公証人の認証を受ける
- 発行株式数や払込額などを、発起人全員の同意で定める(定款に定めがある場合を除く)
- 各発起人が出資を払い込む
- 設立時取締役を選任する
- 設立の登記を申請する
発起人が1人の場合と複数の場合で変わる手続き
発起人が1人の場合と2人以上の場合で、違いが生じる点は次のとおりです。
項目 | 発起人が1人 | 発起人が2人以上 |
|---|---|---|
定款の署名 | 1人が署名または記名押印 | 発起人全員が署名または記名押印 |
株式の引受け | 1人が引き受ける | 各発起人が1株以上を引き受ける |
発行株式数・払込額・資本金額 | 発起人が決定 | 定款に定めがなければ発起人全員の同意 |
出資の払込み | 1人分 | 各発起人が割り当てられた分を払い込む |
設立時取締役の選任 | 発起人が選任 | 発起人の議決権の過半数 |
発起人決定書 | 発起人が作成 | 全員の同意を記載した書面 |
発起人決定書が必要になる場面は発起人の決定書はいつ必要になる?記載事項やひな形も解説、印鑑証明書の必要数は会社設立の印鑑証明書は誰の分が何通必要?一覧で解説を参考にしてください。
出資比率と議決権の決まり方
設立時の発起人の議決権は、出資の履行をした設立時発行株式1株につき1個です。設立時取締役の選任は、この議決権の過半数で決まります。
成立後の株主総会の決議も、持ち株数(議決権)で決まります。決議の種類によって変わることはありません。
- 普通決議:議決権の過半数を持つ株主が出席し、出席株主の議決権の過半数で成立します(定足数は定款で変更できます)
- 特別決議:議決権の過半数を持つ株主が出席し、出席株主の議決権の3分の2以上で成立します。定款変更は特別決議です。
全員が出席した場合に、出資比率ごとに何ができるかを整理すると、次のようになります。
出資比率 | 普通決議 | 特別決議 | 注意点 |
|---|---|---|---|
50対50 | どちらも単独では可決できない | どちらも単独では可決できない | 意見が分かれると決議が成立しない |
51対49 | 多数側が単独で可決できる | 多数側だけでは可決できない | 定款変更には相手側の賛成が必要 |
67対33 | 多数側が単独で可決できる | 多数側が単独で可決できる | 少数側は特別決議を阻止できない |
注意:この表は一般的な仕組みの説明で、特定の出資比率を推奨するものではありません。
共同創業・共同経営の場合に事前に合意しておくこと
共同創業での設立後に認識の違いが表面化しやすい論点は、事前に話し合っておくことが重要です。主な論点は次のとおりです。
- 役割と担当:誰が何を担当し、誰が代表取締役になるか
- 役員報酬と配当:報酬の決め方と、利益の分け方の考え方
- 出資額と払込方法:各自がいくら、いつ出資するか
- 意見が割れたときの決め方:議決権の比率、重要事項の決議方法
- 退出時の株式の扱い:発起人の1人が辞める場合、株式を誰がどう引き取るか
退出や相続への備えとして、定款に株式の譲渡制限を定める方法があります。また、株式を相続した人に対して会社が株式の売渡しを請求できる旨を定款に定めることもできます。当事者間の契約(株主間契約)で定める方法もあります。どの方法が合うかは出資者の関係や事業内容で変わるため、弁護士などの専門家にも相談することをおすすめします。
共同代表(代表取締役が2人)の場合の注意点
取締役会を置かない会社では、代表取締役を定めなければ、各取締役が会社を代表します。代表取締役を定める場合は、定款、取締役の互選、株主総会の決議のいずれかで定められます。代表取締役は複数人置くこともできます。
代表取締役が複数いる場合は、各自が単独で契約を結ぶことができます。代表権の範囲を内部で制限しても、善意の第三者には主張できません。
代表取締役の住所と氏名は登記事項として公開されます。住所の非表示の手続きは代表取締役の住所を非表示にする方法、設立時の申出を解説で解説しています。
発起人が複数のときにつまずきやすい点
発起人が複数の場合は、次の点でつまずきやすくなりますので注意しましょう。
- 払込み:各発起人が自分の割当分を払い込み、その記録をもとに払込証明書を作ります。作成の手順は資本金の払込方法とは?払込証明書の作り方と見せ金・預け合いのリスクも解説で解説しています。当然、全ての払込完了が必要です。
- 書類の持ち回り:定款や決定書は全員の署名・押印が必要で、遠方の発起人がいると日数がかかります。
- 設立登記の期限:調査が終了した日、または発起人が定めた日のいずれか遅い日から2週間以内に申請します。起算日は設立登記の期限2週間の起算日と過ぎた場合の対応方法で解説しています。
会社設立の手続き方法を選ぶときに確認すること
設立の進め方には、自分で申請する、司法書士に依頼する、オンラインのサービスを使う、という選択肢があります。できる範囲は次のように異なります。
進め方 | できること |
|---|---|
自分で申請する | 書類の作成から申請まで、すべて自分で行う |
書類作成のサポートを使う | 書類の作成・購入・郵送申請のサポート。申請者は本人 |
司法書士に依頼する | 書類作成に加え、申請の代理まで行える |
発起人が2人以上の場合は、依頼先や手続き方法を選ぶ前に、次の点を確認しておくと安心です。
- 発起人が複数の場合に対応しているか
- 出資比率が発起人ごとに異なる場合に対応しているか
- 発起人が法人や、現物出資を含む場合に対応しているか
設立前に決める項目は会社設立前に決めること10項目の印刷できるチェックリストで確認できます。設立の全体像は会社設立ガイドにまとめています。