発行可能株式総数の決め方、設立時の株式数と1株の金額を解説

会社設立の事前準備
投稿日:2026.10.20
発行可能株式総数の決め方、設立時の株式数と1株の金額を解説

発行可能株式総数とは、会社がこの先発行できる株式数の上限で、定款に定め、登記もされる数字です。設立時に実際に発行する株式の数(設立時発行株式数)とは別の数字で、すべての株式に譲渡制限を付けた非公開会社であれば、両者の比率に法律上の制限はありません。

ややこしいのは、資本金・1株の金額・設立時発行株式数・発行可能株式総数の4つが連動している点です。1株の金額には法律上の決まりがなく、どの数字から決めればよいか迷いやすいところです。しかも発行可能株式総数を後から増やすには、株主総会の特別決議と変更登記が必要になります。

この記事では、4つの数字の関係、公開会社にだけ適用される「4倍ルール」、1株の金額と株式数を決めるときの判断材料、定款への書き方と登記での注意点を解説します。

発行可能株式総数と設立時発行株式数の違い

設立時に決める株式関係の数字は、次の4つです。


数字

意味

定める場所

登記

発行可能株式総数

将来までに発行できる上限の株式数

定款

される

設立時発行株式数

設立時に実際に発行する数

定款または発起人全員の同意

「発行済株式の総数」として登記

1株の払込金額

1株あたりに払い込む金額

定款または発起人全員の同意

されない

資本金

払込金額×株式数(全額を資本金とする場合)

定款に出資額を記載

される


たとえば資本金300万円を1株1万円で発行するなら、設立時発行株式数は300株です。発行可能株式総数は、この300株以上の数を別に定めるものです。


発行可能株式総数は、定款認証の時点で書かれていなくても構いません。その場合は、会社が成立する(設立登記をする)時までに、発起人全員の同意で定款を変更して定めます。定款の記載事項の区分は「定款の絶対的記載事項とは?相対的記載事項との違いを解説」もご参考ください。

非公開会社は上限なし、公開会社は「4倍ルール」

会社法では、設立時発行株式数が発行可能株式総数の4分の1を下回ってはならないと定めています。言い換えると、発行可能株式総数は設立時発行株式数の4倍までです。ただし、設立する会社が公開会社でない場合はこの制限がかかりません。


ここでいう「公開会社」は上場企業のことではなく、発行する株式の一部でも譲渡制限が付いていない会社を指します。


区分

判定

300株発行時の上限

非公開会社

全株式に譲渡制限あり

法律上の上限なし

公開会社

一部でも譲渡制限なし

1,200株まで


注意が必要なのは設立後です。非公開会社が定款を変更して公開会社になるときは、その時点の発行済株式総数の4倍以内に発行可能株式総数を収める必要があります。将来の上場を視野に入れる場合は、この点も注意しておく必要があります。

1株の金額はいくら?法律上の決まりはない

かつては株券に金額を記載する額面株式の制度があり、設立時の1株の発行価額は5万円以上とされていました。2001年(平成13年)の商法改正でこれらの制度が廃止され、現在は1株の金額を自由に決められます。


資本金300万円の場合、1株の金額によって株式数は次のように変わります。


1株の金額

設立時発行株式数

メリット・デメリット

5万円

60株

旧規制の名残で見かける。比率の細かい調整はしにくい

1万円

300株

計算しやすいため、設立時によく見られる

1,000円

3,000株

持株比率を細かく調整しやすい

1円

300万株

細かく分けられるが、桁が大きくなる


登記簿謄本には1株の金額は登記されず、設立後の増資時の払込金額にも縛られません。資本金の額そのものの考え方は会社設立時の資本金はいくらが目安?平均額と決め方の判断材料5つで解説しています。

設立時発行株式数と持株比率の関係

発起人が複数いる場合、それぞれが引き受ける株式数がそのまま議決権の比率になります。


決議

要件(定足数を満たした場合)

主な対象

普通決議

出席株主の議決権の過半数

取締役の選任など

特別決議

出席株主の議決権の3分の2以上

定款変更(発行可能株式総数の変更を含む)など


たとえば資本金300万円・1株1万円で、Aさんが200万円、Bさんが100万円を出資すると、Aさんは200株で議決権の3分の2を持ち、単独で特別決議の要件を満たします。Aさん190万円・Bさん110万円なら、Aさんは約63%となり、特別決議にはBさんの賛成が必要です。


もう一つつまずきやすいのが端数です。各発起人の出資額は1株の金額で割り切れる必要があります。1株5万円にした場合、出資額が123万円では株式数が整数になりません。共同創業の注意点は発起人が2人以上の会社設立における手続きと共同経営の注意点も参考にしてください。

発行可能株式総数を決めるための判断材料4点

非公開会社では上限の制限がないため、何株にするかは会社の判断です。これを決めるために次の4点が判断材料になります。


  • 将来の資金調達の予定:増資で発行済株式数と追加発行分の合計が上限を超えると、先に定款変更が必要です。
  • ストックオプションや役員・従業員への株式付与:新株予約権の行使で発行する株式も上限内に収めます。
  • 株式分割の可能性:分割すれば発行済株式数が増えます。
  • 後から増やす場合の手続とコスト:株主総会の特別決議で定款を変更し、2週間以内に変更登記を申請します。登録免許税は3万円です。


なお、設立登記の登録免許税や定款認証の手数料は資本金の額などで決まり、発行可能株式総数の大小では変わりません。

定款への書き方と登記での注意点

定款には、たとえば次のように記載します(記載例)。


  • (発行可能株式総数)第○条 当会社の発行可能株式総数は、1,000株とする。
  • (設立時発行株式)附則第○条 当会社の設立時発行株式の数は300株とし、その払込金額は1株につき金1万円とする。


設立登記では、発行可能株式総数と発行済株式の総数がそれぞれ登記事項になります。定款、発起人の同意書、払込みを証する書面、登記申請書のあいだで数字がずれていると補正の対象になるため、提出前に照合しましょう。


なお、払込みの手順は資本金の払込方法とは?払込証明書の作り方と見せ金・預け合いのリスクも解説で、定款全体の作り方は株式会社の定款の作り方・記載事項の全項目とひな形を解説の各記事を参考にしてください。


設立前に決める項目の全体は会社設立前に決めること10項目の印刷できるチェックリストで、手続き全体の流れは株式会社設立の流れ9ステップ|登記申請の方法と費用も参考にしてください。


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