株式分割の手続きや決議、登記申請を解説

株式分割
投稿日:2024.07.30
株式分割の手続きや登記申請について解説

「株式分割」は、会社の価値の総額を変えずに株式を一定の比率で分割し、株式数を増やす手続きです。主に株主や株式市場向けの施策で、経営手法の一つとして使われます。

株式分割を行う上で重要なのが登記申請です。登記申請の際には申請書はもちろんですが、各種議事録など、会社が正しい手続きを踏んで株式分割することを示す書類が必要になるからです。

本記事では、株式分割を予定されている方、検討されている方向けに、基礎知識や目的はもちろん、準備や株式総会決議などの手続き、登記申請までの流れを紹介します。ネット上で登記申請書類をスピーディに作成できるサービスも紹介しておりますのでぜひご覧ください。

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株式分割とは?

株式会社において、発行されている株式を分割し、株式総数を増やす手続きです。分割された分だけ1株あたりの価格も小さくなりますが、もちろん物理的に分割するわけではありません。

「2分割」であれば株式総数は2倍になり1株の価格は半分になります。「100分割」であれば総数100倍、株価は1/100になります。株式分割により株式数は増えますが、会社全体の価値や資本金はもちろん、株式分割前に保有者それぞれが持つ株式の価値の合計や持株比率にも変化はありません。それだけに使用目的が限定される施策です。

似たような言葉に「会社分割」「増資」があります。

会社分割は事業を切り離して別の会社に引き継ぐ組織再編の手法の一つですが、株式分割では会社の組織面の変化はないため手続きの対象も限定されます。また、増資では、特定の相手に株式を発行し、出資を引き受けます。資金調達がおもな目的になります。

株式分割の基礎的な知識についてはこちらの記事もご参考ください

関連記事:株式分割とは?言葉の解説から登記申請方法までを紹介

まず株式分割する目的を確認しましょう

では「会社全体の価値(時価総額)を変えずに株式数だけを増やす」ということにはどんな意味があるのでしょうか?株式分割の実行の前に、まず目的を確認しましょう。

①株式の流動性を上げる(= みんなが株を持てるようにする)

株式の数が増え、1株あたりの株価が下がることで、より多くの人に買ってもらえる可能性が高まり、株主の人数も増えます。

上場企業では、一株の価格が高いと個人投資家が売買しづらくなります。安定株という面では良いですが、株価の安定や株式市場での知名度向上という点では「知る人ぞ知る」銘柄に留まってしまう可能性もあります。個人投資家が手軽に売買しやすい株価になるように分割するという理由があげられます。

上場していない企業でも、設立時に定款で定めた株式数が、投資家の増加や時価総額の変化の中でそぐわなくなってくるケースもあります。株価が高いと1株あたりの価値の調整がしづらくなるため、株式分割することで株主ごとの持分の価値を調整しやすくなるという面もあります。

②上場する市場を変更(指定替え)する

上場する株式市場(「東証マザーズ」「東証一部」「東証二部」など)を変更するにあたって、市場ごとに発行株式数などの基準が設定されています。これを満たすために分割することがあります。これは株主というより、市場のルールが理由なので、代替の方法は考えにくいといえます。

③配当や株主優待の方針を変更する

①とセットでの施策になりますが、株主数を増やしながら配当や株主優待の量を増やします。特にBtoC向けサービスではサービス自体の告知、ファン作りができるというメリットがあります。

3つの目的を紹介しましたが、実際の理由として多いのは①でしょう。実務上は、必要な株式数を確保しつつ、手続きが煩雑になってしまわない分割比率を定めることが重要です。

もし、上記に当てはまらない理由で株式分割を検討しているようなら、他の方法がないかなど検討したほうがいいかもしれません。特に株式分割は株主数の多い上場企業が対象になることが多い手続きです。上場していない中小企業の場合、相続や取引先との株式持ち合いなど、分割する理由が異なることもありますので、目的や得られる効果は十分に検討しましょう。


株式会社における株式分割の手続きとスケジュール

株式分割を行うには、法律で定められた手続きを行います。

株式分割の基準日公告や、取締役会または株主総会での決議が必要です。それに伴って株主総会の招集や議事録作成、登記申請と、いくつかの手続きが必要です。以下の流れを参考に全体のスケジュールを決めましょう。

①発行できる株式数(発行可能株式総数)を確認する

まず、株式分割した時に、発行済株式の総数が発行可能株式総数を超えてしまわないかの確認が必要です。もし発行できる発行可能枠が足りない場合は、株主総会で発行可能株式総数に関する定款変更の決議(特別決議)が必要になります。なお、1種のみ株式を発行している場合は、株式分割と同時に発行可能可能株式総数を増やす場合は特別決議は不要になります。

②株式分割について株主総会で決議する

分割する内容について株主総会での決議を行います。
※取締役会設置会社では、取締役会決議になります。

決議の対象は以下のとおりです。

  • 株式分割の比率(1株をいくつに分割するか)
  • 分割を行う基準日
  • 分割の効力が発生する日
  • 分割する株式の種類(複数種類の株式を発行している場合)


分割比率以外で重要なのが、基準日と効力発生日です。意味を確認しておきましょう。

基準日

基準日とは、どの時点の株主が、分割で増加した株式の割り当てを受けることができるか決まる日です。株式分割では基準日を定め、基準日の2週間前までに基準日公告を行うことが会社法で定められています。

効力発生日

分割の効果が生じる日のことをいいます。
この効力発生日をもって、基準日に株主名簿に記載されている株主が基準日に保有する株式に、分割比率を乗じた数の株式を取得します。
分割比率によっては、株式分割により1株に満たない端数株が生じることがあります。このような場合、競売や市場価格での売却などにより処理することになります。

株主への公告(通知)

株式分割においては株主への通知も必要です。決議後に、どのタイミングで株式が分割され割当てられるのか、上記の基準日の2週間前までに公告が必要になります。

③株式分割の登記申請

株式分割が完了したら、会社の登記簿に株式数の変更を反映するための登記申請を行います。効力発生日後、2週間以内に登記する必要があるので速やかに申請しましょう。

④その他書類の更新

登記申請以外にも、株主名簿や定款の変更反映が必要な場合があります。これら書類も忘れずに更新しておきましょう。

株式分割したら2週間以内に登記申請が必要です

株式を分割したら、登記簿上の発行済株式の総数を変更するための登記申請をします。

その会社の発行している株式数は登記簿に記載され、誰でも閲覧できる状態になります。これは関係者に会社の最新の状態を示すことで取引や許認可などをスムーズにするために法律で定められた手続きで、効力発生後2週間以内の申請が必要です。

登記申請は、登記申請書に「発行済株式の総数」を記載し、添付書類として「発行済株式の総数」に変更があったことを証明できる書類を一緒に提出して行います。法務局に提出した申請が受理され、登記簿に反映されることで、株式分割に関する全ての手続が完了となります。


株式分割を登記申請する3つの方法

登記を申請する代表的な3つの方法を紹介します。

この登記申請には、申請書類や添付書類の様式や項目には厳密なルールがあります。記載や書類を間違えるとやり直しとなり、時間がかかってしまうため準備には専門知識が必要です。そのため、今までは司法書士に依頼することがほとんどでしたが、最近はネット上で書類を作成できるサービスも登場しています。

①司法書士に依頼する

最もポピュラーなパターンです。司法書士に依頼して必要な書類を作成してもらいます。依頼ごとに数万円~程度の報酬が必要となります。書類作成〜法務局への申請まで、知識がなくても丸投げできるのがメリットですが、見積もりを取ったり打ち合わせの時間が必要です。専門家が直接稼働するため、他の方法に比べると費用も高めです。

②ゼロから自分で調べる

登記申請方法を勉強し、自分で必要な書類を作成し郵送もしくは持参して法務局に申請する方法です。未経験者がやるにはハードルの高い作業となるでしょう。
なお、法務省が提供するひな型もありますが、ミスのない書類を独力で準備するのは難しく、結局複数回の修正が必要になることが多いようです。

③オンラインで登記書類作成を支援するサービスを使う

最近増えてきた方法です。サービスのWebサイトに会員登録し、登記内容を入力すると申請書類やその他の必要書類をセットで自動作成できます。印刷、押印して郵送するだけで登記申請完了です。スピードが早く、夜や週末など作業タイミングを選ばず、費用も安くすみます。
ただし、自社の事情に合わせた相談などはできないので、申請する登記が決まっているようなケースでは良い方法といえるでしょう。

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本来であれば、法務局にて有料で書類を取得し確認する必要がありますが、GVA 法人登記の、「登記情報自動反映サービス」をご利用いただきますと、システム内で現在の登記情報を無料で取得し、会社基本情報が書類作成画面に自動反映されます。登記知識のない方でもステップに沿って変更情報を入力するだけで簡単に登記書類の作成ができます。



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執筆者:GVA 法人登記 編集部(GVA TECH株式会社)/ 監修:GVA 法律事務所 コーポレートチーム

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