株式会社の設立登記は、法務省の「登記・供託オンライン申請システム」を使えば、法務局に行かずに電子申請できます。必要なのは、Windowsパソコンにインストールする「申請用総合ソフト」と、申請書や添付書類に電子署名するための電子証明書(多くの場合はマイナンバーカード)の2つです。
つまずきやすいのは、「役員が複数いる場合などで誰の電子証明書が、どの書類に必要か」が分かりにくい点です。設立前の会社には法人の電子証明書がないため、代表者や役員個人の証明書で署名することになります。また、送信した時刻によって設立日が1日ずれることもあります。
この記事では、必要な電子証明書と動作環境、申請の8ステップ、設立日と納付期限の考え方、最短24時間で登記が終わる条件を順に整理します。
設立登記をオンライン申請する手順と必要な電子証明書・環境
設立登記のオンライン申請でできることと申請方法
株式会社の設立登記をオンラインで行う主な方法には次の3つがあります。
申請方法 | 特徴 |
|---|---|
申請用総合ソフト(法務省) | 無料。設立登記のすべての手続に対応 |
法人設立ワンストップサービス(マイナポータル) | 定款認証・設立登記・設立後の届出をまとめて申請できる |
民間事業者のソフト | 登記・供託オンライン申請システムに対応した市販ソフトなど |
ブラウザで使える「かんたん登記・供託申請」もありますが、商業登記で対応しているのは役員の住所・氏名変更の登記のみで、設立登記には使えません(手続ごとの申請方法一覧表)。
また、オンライン申請の申請内容によって2つの方式があります。
方式 | 内容 |
|---|---|
完全オンライン申請 | 申請書も添付書類もすべて電子署名付きPDFで送信する |
添付書類を書面で送る方式 | 申請書だけオンラインで送り、電子署名できない添付書類は紙で法務局へ持参・郵送する |
役員の一部がマイナンバーカードを持っていない場合でも、後者の方式ならオンライン申請を選べます。書面を送るときは、添付書類に申請番号を書くか、申請用総合ソフトから印刷できる「書面により提出した添付情報の内訳表」を同封します(法務省:商業・法人登記のオンライン申請について)。紙の書類の送り方は「設立登記は郵送で申請できる|送付先と同封物の一覧」で解説しています。
設立登記のオンライン申請に必要な電子証明書
電子署名が必要なのは「申請書」と「添付書類」の両方です。設立前は(まだ会社がないため)会社の商業登記電子証明書を取得できないため、個人の電子証明書を使います。
書類 | 電子署名する人 | 使える主な電子証明書 |
|---|---|---|
登記申請書 | 設立時代表取締役(申請人) | マイナンバーカード(公的個人認証)、セコムパスポート for G-ID |
電子定款 | 発起人と公証人 | 定款認証の段階で付与済み |
就任承諾書など、紙なら印鑑証明書が必要な書類 | その書類の作成者全員 | マイナンバーカード、特定認証業務の電子証明書 |
上記以外の添付書類 | 作成者 | 上記に加え、法務省が指定する電子契約サービスの証明書 |
出典:法務省:商業・法人登記のオンライン申請について(第3 電子証明書の取得)
発起人1人・取締役1人の「一人会社」なら、代表者1人のマイナンバーカードで申請書と添付書類すべてに署名でき、完全オンライン申請が可能です(法務省:一人会社の設立登記申請は完全オンライン申請がおすすめです!)。
実務で注意したいのは次の2点です。
- 送信時点で有効な証明書が必要です。 申請書に付けた電子証明書は、送信時に有効でないとエラーになり申請できません。
- 引っ越し直後は要注意。 マイナンバーカードの署名用電子証明書は、住所や氏名が変わると失効します。転居届のあとに市区町村窓口で再発行を受けてから署名します。
電子定款の作り方は電子定款の作り方・自分で作る手順と必要なソフト一覧を解説を参照してください。
オンライン申請に必要なパソコン環境と事前準備
申請用総合ソフトの推奨環境は次のとおりです。なお、法人設立ワンストップサービスで申請する場合は必要なものが異なるので別途確認してください。
- OS:Windows 11(推奨環境にMacは含まれていません)
- ブラウザ:Microsoft Edge または Google Chrome
- .NET Framework 4.8.1
- Adobe Acrobat Reader DC
- ハードディスクの空き容量300MB以上
マイナンバーカードで署名する場合は、さらに次の準備が必要です。
- マイナンバーカード対応のICカードリーダライタ
- 公的個人認証サービスの「JPKI利用者ソフト」のインストール(公的個人認証サービス ポータルサイト)
- 署名用電子証明書の暗証番号(英数字6〜16桁)
- 添付書類のPDFに署名するための「PDF署名プラグイン」(ソフトウェアのダウンロード)
- 登記・供託オンライン申請システムの申請者情報登録(ID・パスワードの取得)
1回の申請で送れる添付ファイルの合計は15MBまでです。通帳のコピーなどをスキャンする場合は、解像度を上げすぎて容量が増えないようにしましょう。
設立登記をオンライン申請する手順8ステップ
法務省の案内に沿った流れは次のとおりです
参考:法務省:一人会社の設立登記申請は完全オンライン申請がおすすめです!
- 申請書を作成する。 申請用総合ソフトで「商業登記申請書」→「登記申請書(会社用)」を選び、登記の事由に「令和○年○月○日発起設立の手続終了」と入力。登記すべき事項は「別紙」に入力します
- 添付書類をPDFにして署名する。 就任承諾書、払込みを証する書面などをPDF化し、作成者が電子署名します
- 添付書類を申請書に添付する。 電子定款は「公文書フォルダ追加」、それ以外は「ファイル追加」から添付します
- 申請書に電子署名する。 設立時代表取締役の電子証明書で「署名付与」を行います
- 申請データを送信する。 「到達のお知らせ」で申請番号と到達日時を確認できます
- 受付を確認する。 法務局で受付されると「受付のお知らせ」が届きます。この受付日が会社の設立日です
- 登録免許税を電子納付する。 「納付」ボタンからインターネットバンキングやPay-easy対応ATMで納付します
- 完了を確認する。 処理状況が「手続終了」になれば登記完了です
登録免許税額は資本金の0.7%で、15万円に満たない場合は15万円です。申請書の書き方は会社の設立登記申請書の書き方・法務局の記載例とひな形リンクを解説でまとめています。会社の印鑑を届け出る場合は、オンライン申請と同時にオンラインで提出することもできます。
送信時刻と設立日・登録免許税の納付期限
オンライン申請で見落としやすいのが時間のルールです。
項目 | ルール |
|---|---|
システムの利用時間 | 平日8時30分〜23時、休日8時30分〜18時(12月29日〜1月3日を除く) |
当日受付の締切 | 平日17時15分まで |
17時15分以降・休日の送信 | 翌業務日の受付=翌業務日が設立日 |
電子納付の期限 | 到達日の翌日から休日を除いて3日間 |
たとえば2026年10月1日(木)の18時に送信すると、設立日は10月2日(金)になります。希望日に設立したい場合は、当日17時15分より前に送信を終えるスケジュールを組んでください。設立日の決まり方は会社設立日は希望日にできる?決まり方と逆算の方法で詳しく解説しています。
また、金曜日の業務終了後に到達した申請は、月曜日から数えて3日目の水曜日が電子納付の期限です。収入印紙で納める方法もありますが、その場合は納付用紙に貼って法務局に提出・郵送する必要があります。なお、現在は準備をしておけば休日を設立日にすることも可能です。上記の記事を合わせて参考にしてください。
最短24時間で登記が完了する条件
株式会社の設立登記は、次の条件をすべて満たすと、原則として受付から24時間以内に登記が完了します。
参考:法務省:完全オンライン申請による法人設立登記の「24時間以内処理」について
24時間で完了するための条件 | 満たさない典型例 |
|---|---|
設立時役員等が5人以内 | 取締役3人+監査役3人の設計 |
添付書類がすべて電子署名付きPDFで送信されている | 1人でも紙の就任承諾書を郵送した |
登録免許税を電子納付している | 収入印紙で納付した |
補正がない | 登記すべき事項の入力ミスで補正になった |
申請件数の多い時期は対象外となることがあります。法務省は完全オンライン申請で多い補正内容と対処法を公開しているので、送信前に確認しておくと安心です。
なお、補正の連絡が来た場合は設立登記で補正の連絡が来たら?対応手順と却下の回避の記事も参考にしてください。
提出先の法務局や2週間の申請期限など、申請方法の全体像は会社設立登記の申請方法における提出先と2週間の期限を解説で、設立手続き全体の流れは「株式会社設立の流れ9ステップ|登記申請の方法と費用で確認できます。