設立登記を申請したあとに法務局から連絡が来ても、その多くは「補正」と呼ばれる訂正の依頼です。指示された箇所を登記官が定めた期間内に直せば登記は通常どおり進みます。補正そのものに追加の手数料や登録免許税はかかりません。
とはいえ、法務局からの電話に身構えてしまい、何をどう直せばよいのか分からないまま時間だけが過ぎてしまうケースは少なくありません。対応が遅れると、登記官が定めた期間内に直しきれず、「却下」や自主的な「取り下げ」につながることもあります。
この記事では、補正と却下の違い、連絡が来る主な原因、電話を受けてからの対応手順、期限内に直せない場合の選択肢、そして補正そのものを防ぐための事前チェックを順に整理します。
設立登記で補正の連絡が来たら?対応手順と却下を防ぐ方法
設立登記の「補正」とは?却下との違い
補正とは、登記官の指示に従って申請書類の不備を訂正することです。商業登記法では、申請に不備がある場合に登記官が申請を却下しなければならないと定めていますが、同条には次のただし書きがあります。
「当該申請の不備が補正することができるものである場合において、登記官が定めた相当の期間内に、申請人がこれを補正したときは、この限りでない」
つまり、不備が訂正可能なもので、指定された期間内に直せば却下になりません。却下は、期間内に補正できなかった場合や、不備の性質上そもそも訂正できない場合(申請先の登記所を間違えたときなど)に対象になります。また、補正の段階で手数料や登録免許税が追加でかかることはありません。
補正の連絡はどう来る?電話が来るタイミングと事前準備
補正が必要になると、担当の登記官から電話で連絡が来るのが一般的です。連絡がつかないと訂正の指示が伝わらず、その分だけ登記の完了が遅れます。申請書には、日中に連絡が取れる携帯電話番号などを記載しておきましょう。
設立登記では完全にオンラインで申請し、かつ不備がない場合は24時間以内に処理される制度もありますが、補正が発生すると審査はいったん止まります。オンライン申請では、申請用総合ソフト上に補正の通知が届き、その画面から「補正」と「取下げ」のいずれかを選ぶ形になります。
補正が発生する主な原因
法務局のチェックで指摘されやすい不備には、次のようなパターンがあります。
原因区分 | 具体例 | 対応の目安 |
|---|---|---|
申請書の記載不備 | 添付書類名の誤字・記載もれ、代表者住所の誤記 | 指示された箇所を訂正すれば完了 |
押印の不備 | 申請書・添付書類への押印もれ、届出印と異なる印影 | 捨印があれば処理できる場合がある。なければ訂正印の押印が必要 |
記載内容の不一致 | 資本金の額や本店所在地が、申請書と定款・議事録の記載で食い違う | 正しい記載に統一して再提出 |
添付書類の不足 | 印鑑証明書や就任承諾書の添付もれ | 不足している書類を追完 |
登録免許税の計算誤り | 資本金に対する税額の計算違い、納付額の不足 | 不足分を追納 |
管轄違いの申請 | 本店所在地を管轄しない登記所への申請 | 性質上補正できないため取り下げが必要 |
補正の連絡が来たときの対応手順
電話を受けたら、まず訂正すべき箇所と訂正内容を正確に聞き取り、メモに残します。曖昧なまま処理すると、再度の補正につながることもあるため、不明な点はその場で確認しましょう。
申請書にあらかじめ捨印(訂正を見越して押しておく印)があれば、法務局側で訂正を処理できる場合があります。捨印がない場合は、申請人本人の訂正印が必要になり、法務局への来庁を求められることもあります。郵送での再提出が可能かどうかは、担当の登記所(法務局は予約制)に直接確認しましょう。
期限内に補正できないときの選択肢
登記官が定めた期間内に補正できない場合や、管轄法務局間違いのように補正できない不備の場合は、申請の「取り下げ」が必要になります。取り下げずに放置すると、登記官が理由を付した決定により正式に「却下」となります。
却下・取り下げのいずれの場合も、要件を満たせば納付済みの登録免許税は還付を受けられます。ただし自動的に返金されるわけではなく、別途「還付通知請求書」の提出が必要です。同じ登記所に近いうちに再度申請する予定がある場合は、還付の代わりに「再使用証明書」の交付を受けることで、取り下げから1年以内に限り、納付済みの登録免許税を次回の申請に充てることもできます。
設立登記の補正を防ぐためにできること
補正そのものにペナルティはありませんが、法務局への往復や書類の再作成には時間がかかり、開業日が想定より遅れる原因になります。次の点を事前に確認しておくと、補正の発生を抑えられます。
- 添付書類の名称・記載事項を、申請書の記載と一字一句突き合わせて確認する
- 押印箇所をすべてチェックし、あわせて捨印を押しておく
- 資本金の額や本店所在地など、定款・議事録・申請書の間で数字や表記を統一する
- 印鑑証明書や就任承諾書など、必要書類の添付もれがないか一覧で確認する
- 紙の押印もれを避けたい場合は、オンライン申請の利用も選択肢になる
登記の申請先や2週間の期限、必要書類の全体像については「会社設立登記の申請方法における提出先と2週間の期限を解説」で確認できます。