会社を設立したらすぐ必要になる手続きの一つが法人口座の開設です。
法人口座の開設には、一般に「履歴事項全部証明書」「法人の印鑑証明書」「手続きをする人の本人確認書類」の3点が必要です。口座は会社が成立してからでないと作れないため、申込みは設立登記の申請後、証明書の提出は登記の完了後になるのが基本的な流れです。
ただし、書類がそろえば必ず開設できるわけではありません。銀行は犯罪収益移転防止法に基づいて事業内容や取引目的、実質的支配者を確認し、事業の実態が確認できない場合は開設を断ることがあります。審査に通らなかった理由は説明されないのが一般的で、何を見直せばよいか分かりにくいことが問題になることがあります。
本記事では、必要書類の一覧、開設までの5ステップ、銀行が審査で確認する項目、審査に落ちる主な原因と申込前の注意点を解説します。
法人口座の開設方法と必要書類、審査に落ちる原因や注意点を解説
法人口座の開設に必要な書類
必要書類は金融機関ごとに異なります。三菱UFJ銀行の案内を例に整理すると、次のとおりです。
書類 | 必要になる条件・注意点 |
|---|---|
履歴事項全部証明書 | 全員。発行から6か月以内 |
法人の印鑑証明書 | 全員。発行から6か月以内 |
取引担当者の本人確認書類 | 全員。運転免許証・マイナンバーカードなど |
許認可を確認できる資料 | 許認可・届出・登録が必要な業種の場合 |
委任状と代表者の本人確認書類 | 代表者以外が手続きする場合 |
実質的支配者を確認できる資料 | 代表者以外に支配的な影響力を持つ人がいる場合 |
会社案内・見積書・仕様書など | 事業内容の確認で求められた場合 |
銀行によっては、みずほ銀行のネット受付のように証明書の提出を原則不要とする銀行もあるため、申し込む銀行の案内を確認してください。
証明書の取り方は登記事項証明書(登記簿謄本)の取り方、費用と最短の方法を解説でも解説しているのでご参考ください。
法人口座を開設できるタイミング
法人口座は、会社が登記によって成立してからでないと開設できません。そのため設立手続き中の資本金の払込みは、発起人個人の口座で行います(「資本金の払込方法とは?払込証明書の作り方と見せ金・預け合いのリスクも解説」)。
銀行によっては登記の申請中から申込みを始められます。三菱UFJ銀行の設立前後の法人向け案内では、登記申請中に申込みを開始し、登記の完了後に証明書を提出する流れです。登記の完了までの日数は「設立登記の完了までの日数は?進捗の確認方法も解説」を参考にしてください。
法人口座を開設する手順5ステップ
- 口座の開設先を選ぶ:都市銀行・地方銀行・信用金庫・ネット銀行など。来店の要否、振込手数料、融資の相談のしやすさが判断材料になります。開設のしやすさからネット銀行を選ぶ人も多いですが、最近は都市銀行でも創業時の開設をターゲットにしたプランが用意されています。
- 申し込む:Webまたは窓口で申し込みます。
- 書類を提出する:上の一覧の書類をアップロードまたは持参・郵送します
- 審査を受ける:事業内容や利用目的の説明を求められることがあります
- 口座が開設される:資金の出し入れやインターネットバンキングなどが使えるようになります
審査の期間は銀行や事業内容によって異なります。設立直後は税金などの口座振替の手続きも続くため、各行の案内で目安を確認しておきましょう。
銀行が審査で確認すること
口座開設の際、銀行は犯罪収益移転防止法に基づく「取引時確認」を行います。法人の場合に確認される項目は次の5つです。
確認事項 | 確認の方法 |
|---|---|
名称・本店所在地 | 登記事項証明書・印鑑証明書など |
事業内容 | 定款・登記事項証明書など |
取引目的 | 申告 |
実質的支配者 | 申告(議決権の25%超を持つ個人。いなければ代表者) |
取引担当者 | 委任状や電話などで権限を確認 |
審査に落ちる主な原因
審査に通らなかった理由は示されないのが一般的ですが、みずほ銀行の解説を例にすると、確認が難しくなる典型的なパターンは次のとおりです。
- 事業の実態が確認できない:ウェブサイトや事業計画、取引先との契約などがない
- 事業目的と実際の事業がつながらない:登記簿謄本内の事業目的が明確でなく、主に何をする会社なのか説明できない
- 書類どうしの内容が一致しない:登記上の本店とウェブサイトの住所が違うなど
- 本店所在地で連絡がつかない:郵送物を受け取れない、電話がつながらないなど
- 資本金の出所や代表者の信用情報に懸念がある
なお同じ解説では、バーチャルオフィスの利用や資本金の少なさだけを理由に断られることは一般的にないとされています。特にバーチャルオフィス利用時の本店住所についてはバーチャルオフィスで会社設立できる?本店住所登記の注意点もあわせてご参考ください。
審査に通らなかったときに見直せること
審査の基準は金融機関ごとに異なるため、別の金融機関に申し込むことも選択肢の一つです。再度申し込む前に、次の点を整えられるか確認しておくと事業の実態を説明しやすくなります。
- □ 事業内容が分かるウェブサイトや会社案内
- □ 事業計画書、取引先との契約書・見積書
- □ 登記の事業目的と、説明する事業内容の一致
- □ 本店所在地での郵送物の受取体制と連絡先
株主構成が複雑な場合は、法務局の実質的支配者リスト制度で交付を受けたリストの写しを使うと、金融機関での確認が円滑になることがあります。
開設前後の注意点
代表者の住所を非表示にした場合は追加の書類が必要になります。
2024年10月に始まった代表取締役の住所非表示措置を使った会社には、三菱UFJ銀行は代表者の本人確認書類の提出を求めています(代表取締役の住所を非表示にする方法、設立時の申出を解説)。
証明書は使う時期に合わせて取得します。
銀行は発行から6か月以内などとする一方、年金事務所への届出では発行から90日以内の登記事項証明書が求められます。通数と期限をまとめて確認してから取得すると無駄がありません。
登記内容が変わったら銀行にも届け出ます。
役員変更や本店移転のあとは、銀行への届出も必要です。銀行を含めた変更時の届出については設立後に必要になる変更登記。役員変更・本店移転などの進め方も参考にしてください。
設立後の届出先と期限の一覧は会社設立後にやること13項目と提出期限の早見表リストで、設立全体の流れは株式会社設立の流れ9ステップ 登記申請の方法と費用で確認できます。
登記簿謄本をオンラインで取得するには
法人口座の開設には、登記事項証明書(登記簿謄本)と印鑑証明書が必要です。GVA 登記簿取得なら、オンラインで登記簿謄本を取得できます。