会社設立後に必要な労務関連書類、就業規則と36協定の順序を解説

会社設立後の手続き
投稿日:2026.10.21
会社設立後に必要な労務関連書類、就業規則と36協定の順序を解説

会社設立後に従業員を雇うときは、①雇う前に労働条件通知書(雇用契約書)を用意し、②雇い入れ後に適用事業報告と労働保険・社会保険の届出を出し、③残業させる前に36協定を届け出て、④常時10人以上になったら就業規則を届け出る、という順序で労務書類を整えるのが一般的です。

迷いやすいのが、就業規則と36協定の関係です。就業規則は従業員が10人以上になるまで届出義務がありませんが、36協定は従業員が1人でも、残業や休日出勤をさせる前に届出が必要です。「就業規則がまだだから36協定も後でいい」としないように注意が必要です。

この記事では、設立後に必要な労務関連書類の一覧、それぞれの届出先とタイミング、36協定と就業規則の作成手順、備え付けが必要な法定帳簿を、従業員を雇用する流れに沿って解説します。

会社設立後に必要な労務関連書類の一覧

労働基準法の手続きは、労働者を雇ったときに発生します。役員だけの会社では、ここで紹介する書類のほとんどは不要です。


書類

タイミング

届出先

労働条件通知書(雇用契約書)

雇い入れ時

届出不要(本人に交付)

適用事業報告

雇い入れ後、遅滞なく

労働基準監督署

労働保険・雇用保険の届出

雇い入れ後10日以内

労基署・ハローワーク

社会保険の資格取得届

雇い入れ後5日以内

年金事務所

36協定届

残業・休日労働をさせる前

労働基準監督署

就業規則

常時10人以上になったとき

労働基準監督署

法定帳簿(労働者名簿など)

雇い入れ時から

届出不要(備え付け)


税務署や自治体への届出を含めた設立後の手続き全体は、会社設立後にやること13項目と提出期限の早見表リストにまとめています。

雇う前に用意する労働条件通知書と雇用契約書

労働基準法は、労働契約を結ぶときに賃金・労働時間などの労働条件を明示するよう定めています。そのための書面が労働条件通知書です。双方が署名する雇用契約書と1枚にまとめた「労働条件通知書兼雇用契約書」を使う会社もあります。


2024年4月から、明示する事項が追加されました。


  • すべての労働者:就業場所と業務の変更の範囲
  • 有期契約の労働者:契約更新上限の有無と内容
  • 無期転換申込権が発生する更新時:申込みの機会と転換後の労働条件


古いテンプレートではこれらの項目が抜けていることがあるので注意しましょう。

雇い入れ後すぐに出す届出

従業員を雇ったら、業種を問わず労働基準監督署に適用事業報告を「遅滞なく」提出します。労働基準法の適用を受ける事業場になったことを届け出る書類です。


同じ時期に、労働保険(10日以内)と社会保険(5日以内)の手続きも必要です。これらの詳細は会社設立後の社会保険の手続きを解説。5日以内の期限に注意で解説しています。

また、書類ごとに届出先が労基署・ハローワーク・年金事務所と3か所あることにも注意です。中には同じ窓口を経由して提出できる書類もありますが不安な場合は社労士などの専門家にも確認しましょう。

36協定は残業させる前に届け出る

労働基準法で定める法定労働時間(1日8時間・週40時間)を超えて働かせる場合や、法定休日に働かせる場合は、労使で36協定を結び、労働基準監督署に届け出る必要があります。届け出る前の時間外労働は認められません。従業員の人数は関係なく、1人でも対象です。


36協定で定められる時間外労働の上限は、原則として月45時間・年360時間です。臨時的な事情がある場合に結ぶ特別条項にも、次の上限があります。


  • 時間外労働は年720時間以内
  • 時間外労働と休日労働の合計は月100時間未満、2〜6か月平均で80時間以内
  • 月45時間を超えられるのは年6か月まで


届出は様式第9号で、電子申請も可能ですが、設立間もない企業では書面のほうがトータルで負担が少ない場合もあります。なお、新設法人でつまずきやすいのは協定の相手方です。労働組合がなければ労働者の過半数代表者と協定を結びますが、会社が一方的に指名した人は認められないため、選出方法を記録し、書類内の確認チェックボックスにチェックを入れます。

就業規則は常時10人以上で作成・届出の義務

労働基準法第89条により、常時10人以上の労働者を使う会社は、就業規則を作成して労働基準監督署に届け出なければなりません。届出の際は、過半数労働組合または過半数代表者の意見書を添付します。作成した就業規則は、従業員がいつでも見られる状態にして周知します。


10人には正社員だけでなく、パート・アルバイトなど常時使用する労働者も含まれます。役員は含みません。10人未満の会社には作成・届出の義務はありませんが人数が増えることを見越して作成しておくことは可能です。なお、作成するかどうかの判断材料として、次の点があります。


  • 服務規律や懲戒の定めは、就業規則に書いておかないと根拠を示しにくい
  • 雇用関係の助成金には、就業規則の整備を要件とするものもある
  • 作成した場合も、10人未満なら届出は任意


作成するときは、厚生労働省「モデル就業規則」(令和7年12月版)の条文と解説も参考にしてください。

就業規則と36協定の順序の整理

従業員数の変化に沿って並べると次のとおりです。


時点

必要になる書類

1人目を雇う前

労働条件通知書(雇用契約書)

1人目を雇った直後

適用事業報告・労働保険・社会保険の届出、法定帳簿

初めて残業させる前

36協定届

常時10人以上になったとき

就業規則の作成・届出


36協定は「残業させるかどうか」、就業規則は人数でタイミングが決まります。設立直後の少人数の会社では、36協定が先に必要になるのが一般的です。36協定は有効期間を1年とするのが一般的で、毎年結び直して届け出ます。

備え付けが必要な法定帳簿

労働者を雇ったら、次の帳簿を作成して保存します。届出は不要です。


  • 労働者名簿:氏名・雇入れ年月日・業務の種類など
  • 賃金台帳:労働日数・労働時間数・賃金の額など
  • 出勤簿:始業・終業時刻などの記録


保存期間は労働基準法第109条で5年と定められていますが、経過措置により当分の間は3年です。


労務関連書類は、自分でひな形をもとに作成するほか、社会保険労務士に依頼する方法、GVA 労務書類のような書類作成ツールを使う方法があります。


また、会社設立から設立後までの全体の流れは、株式会社設立の流れ9ステップ 登記申請の方法と費用もご参考ください。


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