合同会社の業務執行社員退社の際の持分譲渡などの登記申請方法と必要書類を解説

合同会社の社員・持分変更
投稿日:2024.11.21
合同会社の業務執行社員退社の登記とは?申請方法と必要書類を解説

合同会社とは、会社法において、社員相互の信頼関係を基礎とした人的会社として認められた持分会社の一形態であり、近年利用されるケースも増加してはいますが、一般的な株式会社と比較すると、未だに認知度は高くないのが現状です。

また、合同会社における「社員」とは、合同会社の持分を有する者のことをいい、従業員を意味する通常の用語とは異なっているため、わかりにくいと感じられる方も多いかもしれません。

そこで、本記事では、まず、合同会社の業務執行社員がどのようなものか解説した上で、その中でも業務執行社員の退社にあたって必要となる社内手続や、業務執行社員の退社に関する登記申請の方法・必要書類について解説します。

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合同会社の業務執行社員の退社とは?

前提として、合同会社の「業務執行社員」が具体的にどのようなものか、また、「業務執行社員」の退社がどのような場合に生じるかについて、みていきましょう。

合同会社における業務執行社員とは?

合同会社においては、原則として、各社員がその業務を執行し、社員が複数存在する場合には、社員の過半数をもって業務執行に関する決定を行いますが、定款に別段の定めを設けることにより、特定の社員に業務執行を委ねることも可能とされています。

合同会社の業務を執行する社員を「業務執行社員」といい、その氏名が登記簿(登記事項証明書)に記載されます。なお、定款で業務執行社員を定めた場合には、その他の社員は、反射的に合同会社の業務を執行する権限を喪失します。

なお、業務執行社員は、合同会社の設立後だけではなく、会社の設立当初から定めることも可能であり、この場合には、会社設立時の定款において業務執行社員につき規定することとなります。

合同会社の業務執行社員は、株式会社における役員と同等の義務や責任(善管注意や競業避止、利益相反、損害賠償責任など)を負います。また、業務執行社員の中から代表社員が定められていない場合には、各業務執行社員がそれぞれ合同会社を代表することとされていますが、代表社員が別途定められている場合には、他の業務執行社員は代表者としての権利を失います。

なお、業務執行社員の地位は、(異なる見解もありますが)株式会社の役員とは異なり委任関係に基づくものではないとされ、法令上の任期は定められておらず、正当な事由がない限り辞任する(辞任届の提出等により一般の社員となる)こともできないとされています。ただし、社員として退社するための手続きが別途設けられていますので、詳細については後述します。少なくとも合同会社の業務執行社員は、株式会社の役員と同じように辞任届などによる辞任の意思表明だけですぐ辞められるわけではないと理解しておきましょう。

業務執行社員は会社の所有者でもある

合同会社においては、一般的な株式会社とは異なり、会社の所有と経営が厳格には分離していません。具体的には、合同会社の社員になろうとする者は、出資等により会社の持分(合同会社における社員たる地位)を取得する必要がありますので、業務執行社員となった者は、単に会社の業務を執行する権限を有するだけではなく、会社の所有者でもあることとなります。

なお、この点は、代表社員や業務執行社員ではない一般の社員についても同様であり、出資等により会社の持分を取得した社員は、同時に、会社の業務を執行する権限をも有するのが原則とされています。ただし、前述のとおり、定款で業務執行社員を定めた場合には、その他の一般の社員は業務執行権を喪失し、代表社員や業務執行社員のみが業務執行権を有することとなります。

業務執行社員の退社とは

「退社」とは、合同会社の会社存続中に、特定の社員の社員としての資格が絶対的に消滅することをいいますが、業務執行社員が退社した場合には、その持分を手放して会社から脱退すると同時に、会社の業務執行権も失うことになります。

業務執行社員を含む社員が退社した場合には、当該社員に係る定款の定めを廃止する定款変更がなされたものとみなされ、退社した社員は、出資した持分の払戻しを受けることができます。ただし、相続や合併等により退社が生じた場合において、その一般承継人(相続人や存続会社)が社員となったときは、当該持分を一般承継人が承継することになりますので、持分の払戻しは行われません。

そして、持分の払戻しは、退社の当時における会社財産の状況に従ってするのが原則とされています。退社した社員が払戻しを受ける額、すなわち当該社員の持分相当分を算定する方法については、会社法にとくに規定がないことから、定款に別段の定めがなければ、出資の価額に応じることとなり、定款に定めがあればこれに従うこととなると考えられます。また、退社時点における会社の状況や定款規定の内容によっては、払い戻される金額と出資した際の金額が異なる(例えば、純資産額がマイナスであれば払戻しがない等)こともあり得ます。

業務執行社員の退社には変更登記が必要

前述のとおり、業務執行社員の氏名は登記簿謄本(登記事項証明書)に記載されますので、退社により変更が生じた場合には、2週間以内に登記申請が必要となります。

なお、(業務執行)社員の退社には、大別して、自らの意思により退社する「任意退社」と、会社側の決定や特定の理由による「法定退社」があります。

「任意退社」については、定款に別段の定めがない限り、6か月前までに退社の予告をすることにより、事業年度の終了時に退社することができます。または、やむを得ない事由があるときはいつでも、自らの意思により退社することができます。

なお、ここにいう「やむを得ない事由」とは、一般論としては、社員が単に当初の意思を変更したというだけでは足りず、定款の規定を定めた時や入社・設立の時に前提としていた状況等が著しく変更され、もはや当初の合意どおりに社員を続けることができなくなった場合などがこれに当たるとされていますが、具体的な事案において「やむを得ない事由」があるかどうかについては、個別事情を前提としたケースバイケースの判断が必要になります。

また、「法定退社」については、合同会社の社員は、次に掲げる事由のいずれかが発生した場合には退社することとされていますが、下記⑤〜⑦の各事由が発生した場合については、なお当該社員が退社しない旨を定款で定めることが可能とされています。

① 定款で定めた事由の発生
② 総社員の同意
③ 死亡
④ 吸収合併による消滅
⑤ 破産手続開始決定
⑥ 解散
⑦ 後見開始審判
⑧ 除名

業務執行社員の退社にあたって持分の払い戻し、資本金の減少を伴うことがある

これらの事由により退社した業務執行社員は、前述のとおり、出資した持分の払戻しを受けることができます。なお、業務執行社員は、保有持分の全部を第三者(他の社員を含みます。)に譲渡することによっても退社することができますが、この場合には、持分の払戻しは行われません。また、合同会社においては、社員相互の信頼関係が会社存立の基礎となっていますので、持分譲渡につき他の社員全員の承諾が必要とされていることに留意が必要です。

退社に伴う持分の払戻しをした場合には、次のとおり社員資本の計数が変動しますので、資本金の額の減少(減資)に係る登記申請が必要となることがあります。

すなわち、退社に伴う持分の払戻しは、資本金・資本剰余金については、当該社員の出資につき資本金・資本剰余金の額に計上されていた額が、それぞれ減少します。また、利益剰余金については、概ね、当該社員の出資につき計上されていた額(資本金+資本剰余金)を超える額の払戻しをする場合には、その帳簿価額上の差額だけ減少します(反対に、出資額を下回る払戻しの場合には、利益剰余金が増加します。)。

また、上記により資本金の額が減少する場合には、別途減資の手続き(登記を含みます。)を履践しなければなりません。

具体的には、合同会社が資本金の額を減少する場合には、当該合同会社の債権者は、資本金の額の減少について異議を述べることができるとされておりますので、合同会社としては、資本金の額の減少の内容や、債権者が一定の期間内(少なくとも1ヶ月)に異議を述べることができる旨を官報に公告し、かつ、知れている債権者に対しては各別にこれを催告する必要があります。ただし、当該合同会社が、上記内容を官報公告に加えて日刊新聞公告又は電子公告によっても公告した場合には、知れている債権者に対する各別の催告を省略することができます。

合同会社における業務執行社員退社の手続き

合同会社における業務執行社員の退社に関する手続としては、大別して、①業務執行社員が退社するための社内手続と、②それを登記簿に反映するための登記申請手続が必要となります。

社内での業務執行社員退社の決定

まず、社員の退社については、任意退社と法定退社とで手続きが異なるため、いずれを前提とするかを確認する必要があります。

なお、社員の氏名・住所は合同会社の定款記載事項ですが、(業務執行)社員が退社した場合には、当該社員に係る定款の定めを廃止する定款変更をしたものとみなされます。

資本金変更に伴う手続き

退社に伴う持分の払戻しにより合同会社の資本金の額が減少する場合には、前述のとおり、債権者保護手続の履践や減資に係る登記申請が必要になります。

他方で、業務執行社員が保有持分の全部を第三者(他の社員を含みます。)に譲渡することによって退社する場合には、資本金の額が変動しないことから、減資に係る登記申請は不要となります。ただし、持分譲渡にあたって他の社員全員の承諾が必要とされていることには留意が必要です。

法務局へ登記申請

業務執行社員の退社により登記事項(業務執行社員の氏名や資本金の額など)に変更が生じた場合には、2週間以内に変更登記の申請が必要となります。もし期限を徒過してしまった場合には、過料の制裁の対象となる可能性もあります。特に、業務執行社員の退社に係る登記手続と減資に係る登記手続を異なるタイミングで申請する場合には、一方の登記申請を失念したりすることのないよう、注意が必要です。

合同会社の業務執行社員退社の必要書類

それでは、業務執行社員の退社に伴う登記申請を行うにあたり、具体的にどのような書類を準備する必要があるのでしょうか。

登記申請の必要書類

業務執行社員の退社及び減資に係る登記申請に必要となる書類は、以下のとおりです。なお、司法書士等の第三者に登記申請を依頼する場合には、当該第三者に対する委任状も必要となります。また、下記のとおり、退社事由等の個別事情に応じて、必要となる書類の内容が異なり得る点にはご留意ください。

<業務執行社員の退社>
退社の事実を証する書面
(1)任意退社の場合

  • 退社予告による退社の場合には、会社宛ての退社予告書(事業年度終了時の6か月前までに予告をした事実が判明するもの)等
  • やむを得ない事由による退社の場合には、その事情を記載した退社届等

(2)法定退社の場合

  • 各退社事由に応じて必要となる書類は異なります。例えば、定款で定めた事由の発生による退社の場合には定款及び当該事由の発生を証する書面、総社員の同意による退社の場合には総社員の同意書が、これに該当するとされています。なお、「総社員の同意書」については、退社員を除く全社員の同意書と退社員の退社届とが添付された場合であっても、登記申請は受理される取扱いがなされている点は前述のとおりです。


<資本金の額の減少>
(1)資本金の額の減少につき業務執行社員の過半数の一致があったことを証する書面
(2)債権者保護手続のための公告及び催告(公告を官報のほか時事に関する事項を掲載する日刊新聞紙又は電子公告によってした場合にあっては、これらの方法による公告)をしたこと並びに異議を述べた債権者があるときは、当該債権者に対し弁済し若しくは相当の担保を提供し若しくは当該債権者に弁済を受けさせることを斟酌として相当の財産を信託したこと又は当該債権者を害するおそれがないことを証する書面
(3)資本金の額が会社法及び会社計算規則の規定に従って計上されたことを証する書面(具体的には、代表社員の作成に係る証明書)

登記すべき事項

業務執行社員の退社に伴って登記すべき事項は、以下のとおりです。

  • 業務執行社員が退社する旨と退社年月日
  • (資本金の額に変更がある場合)変更後の資本金の額と変更年月日


業務執行社員退社の書式は法務局Webサイトでも配布されている

合同会社の業務執行社員の退社に関する登記申請書の様式とその記載例については、法務局のwebサイトでも配布されていますので、適宜ご参照ください。

・法務局webサイトでダウンロードできる登記申請書の書式(テンプレート)のサンプル



合同会社の業務執行社員の退社にかかる費用

合同会社の業務執行社員が退社する場合には、登記申請を行う必要がありますので、株式会社の役員辞任などの役員変更と同様に、一定の費用がかかります。

登記申請にかかる費用

登記申請に要する費用としては、まず、登録免許税が挙げられます。合同会社の業務執行社員の退社に関する登録免許税額は、申請1件につき1万円(資本金の額が1億円を超える合同会社については3万円)ですが、持分の払戻しにより資本金の額が減少した場合には、さらに3万円を加算した額となりますので、資本金の変動の有無に応じて相当額の収入印紙を貼付する必要があります。

その他に、場合によっては、法務局までの交通費や郵送費などが発生することもあるでしょう。また、登記申請手続を司法書士に依頼する場合には、司法書士に対する報酬(数万円程度のケースが一般的)も必要になります。

業務執行社員の退社は手続きが複雑になる場合があることに注意しましょう

これまでみてきたように、合同会社における業務執行社員の退社に関する手続は、一般的にはあまり馴染みがないものであり、また、個別の事情によって必要となる手続・書類が異なるなど、複雑な側面があることも否定できません。もちろんご自身で必要書類を作成して手続を行うことも可能ですが、もし不安がある場合には、信頼できる司法書士等の専門家への依頼をご検討いただければと思います。

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  • 業務執行社員の決定書
  • 辞任届
  • 就任承諾書
  • 定款(原本証明書)
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  • 取締役決定書(法人社員が代表社員として就任する場合)
  • 取締役会議事録(法人社員が代表社員として就任する場合)
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執筆者:GVA 法人登記 編集部(GVA TECH株式会社)/ 監修:GVA 法律事務所 コーポレートチーム

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