株式譲渡承認の議事録とは?書き方やひな形(テンプレート)を解説

株式実務
投稿日:2024.11.05
株式譲渡承認の議事録とは?書き方やひな形(テンプレート)を解説

譲渡制限株式を発行している会社では、株式を譲渡する際に会社の承認が必要となり、その承認を証明する議事録の作成が求められます。しかし、「どのような手続きが必要なのか」「議事録には何を記載すべきか」などの疑問を持つ方も多いのではないでしょうか。

そこでこの記事では、株式譲渡承認制度の基本的な仕組みから、承認手続きの具体的な流れ、取締役会や株主総会での承認を記録する議事録まで、実務を想定して解説します。さらに、すぐに活用できる議事録のひな形(テンプレート)も用意しましたので、実際の手続きに役立てください。

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株式の譲渡承認とは?

譲渡制限株式を発行している会社では、株式を譲渡する際に会社の承認が必要となります。この承認制度の目的と基本的な仕組みについて解説します。

株式の譲渡承認とは?

株式の譲渡承認とは、株式譲渡の際に必要となる会社からの承認のことです。

通常、株式会社の株式は自由に譲渡できますが、定款に譲渡制限の規定を設けることで、株式の譲渡に制限をかけることができます。すべての株式に譲渡制限が設けられた会社のことを「公開会社でない会社」「非公開会社」「株式譲渡制限会社」などと、制限された株式のことを「譲渡制限株式」とよびます。

非公開会社の株式を保有する株主は、自由に株式を譲渡することができません。これは、会社にとって望ましくない人物や競合企業、反社会的勢力などが知らないうちに株主となることを防ぐための仕組みです。

非公開会社の株式を譲渡するには、まず株主が会社に対して株式譲渡承認請求書を提出します。会社から承認が得られた場合は、株式譲渡の手続きと併せて株主名簿の名義書換申請を行うことで、譲渡手続きが完了します。

承認が得られなかった場合は、会社あるいは会社が指定する第三者に対して、その株式の買取りを請求することができます。

譲渡制限のある会社は譲渡制限会社・非公開会社と呼ばれる

すべての株式に譲渡制限が設けられている会社は「非公開会社」、1株でも譲渡制限のない株式を発行している会社は「公開会社」となります。ただし、「公開会社」であることが必ずしも「上場企業」であることを意味しないという点には注意が必要です。

上場企業の場合は、株式の流通性を確保する必要があるため、株式譲渡制限を設けることはできません。そのため、IPO(株式上場)を目指す企業は、上場のタイミングで定款の譲渡制限規定を削除する手続きを行うことになります。

実際のところ、国内企業の大半を占める中小企業は、ほとんどが非公開会社となっています。これは、株主構成を管理しやすくし、会社経営の安定性を確保するためです。

株式の譲渡を制限するメリット

企業経営において、株式の譲渡を制限することには、いくつかのメリットがあります。

第一に、最も重要な効果として、会社が株主となる人物を把握・管理できることが挙げられます。これにより、意図しない人物への株式の流出を防ぐことができ、会社経営の安定性を確保できます。

第二に、非公開会社となることで、次のような中小企業向けの規定が適用されます。

  • 役員の任期延長:通常2年の取締役任期を最長10年まで延長できます。なお、役員任期の延長には定款への規定が必要です。


  • 取締役会の設置が任意:取締役会の設置が任意となり、会社の規模や実情に応じた柔軟な対応が可能となります。


  • 役員資格の制限:取締役や監査役などの役員資格を株主に限定するなどの制限を設けられます。


  • 手続きの簡素化:株主総会の招集などの社内手続きを簡略化できます。

譲渡承認には株主総会や取締役会での決議・議事録が必要

株式譲渡の承認には、株主総会または取締役会での承認決議が必要です。ただし、定款に規定することで別の承認機関を定めることができます。ここでは、株主総会または取締役会の具体的な手続きについて解説します。

どの承認が必要かは定款で規定される

非公開会社において、どの機関の承認を必要とするかについては、会社の定款で規定されます。一般的な定款の記載例としては、次のようなものが挙げられます。

  • 「当会社の株式を譲渡により取得するには、当会社の取締役会による承認を要する」 


  • 「当会社の株式を譲渡により取得するには、株主総会の承認を受けなければならない」


具体的な承認機関を規定していない場合は、取締役会が設置されている会社なら取締役会、取締役会がなければ株主総会となります。

譲渡承認後は議事録の作成が必要

株式譲渡の承認がなされたあとは、承認の証明となる議事録を作成する必要があります。

定款に沿った会議体(取締役会または株主総会)で承認の決議をしたあと、それぞれの決議内容を記した議事録を作成します。議事録は承認の事実を証明する重要な書類です。

株式譲渡の承認自体については、登記申請は不要です。しかし、譲渡制限に関する規定は登記事項証明書に記載される事項です。譲渡制限に関する規定を変更する場合には登記申請が必要となり、この際に登録免許税として3万円を納付しなければなりません。

譲渡承認を必要としないケースもある

前述したとおり、株式譲渡制限制度のおもな目的は、会社にとって好ましくない者が株主になることを防ぐことです。そのため、多くの中小企業では定款で株式に譲渡制限を設け、株式の譲渡には株主総会または取締役会の承認を必要としています。

ただし、この譲渡制限は、売買や贈与などによる株式譲渡(特定承継)の場合に適用される制度です。一方で相続や合併などによる株式取得(一般承継)の場合は、譲渡制限の対象とはなりません。

また、すでに株主である者への譲渡などは、承認したものとみなす旨を定款で規定しておくことで、承認手続きを省略することもできます。

なお、会社法では一般承継により望ましくない者が株主となることを防ぐため、相続人などに対して株式の売渡を請求できる制度を設けています。定款に定めておくことで売渡請求制度を活用できます。

株式譲渡承認の議事録のひな形・テンプレート

株式譲渡の承認を証明するための議事録について、取締役会用と臨時株主総会用の具体的なひな形をご紹介します。実務ですぐに活用できるテンプレートを用意しました。

司法書士が監修しているテンプレートなので、安心してお使いいただけます。



株式譲渡承認の株主総会議事録のテンプレートはこちら
株式譲渡承認の株主総会議事録のテンプレート

株式譲渡承認の取締役会議事録のテンプレートも以下にご用意しています。
株式譲渡承認の取締役会議事録のテンプレート

議事録作成の基本とポイント

株式譲渡の承認決議を証明するための議事録には、取締役会と株主総会の2種類があります。特に、今回は株式譲渡の承認に関する議事録であり、譲渡制限の規定変更に関する議事録とは異なる点に注意が必要です。

なお、臨時株主総会と取締役会のそれぞれの議事録については、実務で使えるひな形(テンプレート)をご用意しています。以下の「株式譲渡承認の臨時株主総会議事録」「株式譲渡承認の取締役会議事録」からダウンロードしてください。

株式譲渡承認の臨時株主総会議事録

株式譲渡承認の臨時株主総会議事録では、次のような事項を記載します。

1. 会議の基本情報:開催日時と場所/出席株主数と議決権総数/定足数を満たしていることの確認/
 議長の氏名/議事録作成者の氏名

2. 議事の内容:株式譲渡承認に関する決議事項/譲渡株式数/譲渡当事者(譲渡人・譲受人)/
 譲渡の理由や条件

3. 決議結果:承認・否認の別/決議要件を満たしていることの確認/賛成・反対・棄権の票数

実際の議事録作成にあたっては、会社の実情に応じて必要な事項を追加してください。

株式譲渡承認の取締役会議事録

株式譲渡承認の取締役会議事録では、次のような事項を記載します。

1. 会議の基本情報:開催日時と場所/出席取締役および監査役の氏名/定足数を満たしていることの
 確認/議長の氏名/議事録作成者の氏名

2. 議事の内容:株式譲渡承認に関する決議事項/譲渡株式数/譲渡当事者(譲渡人・譲受人)/譲渡
 の理由や条件

3. 決議結果:承認・否認の別/決議要件を満たしていることの確認/賛成・反対・棄権の票数

実際の議事録作成にあたっては、会社の実情に応じて必要な事項を追加してください。

議事録は承認の事実を証明する重要な書類

議事録は、会社が株式譲渡を正式に承認したことを証明する重要な書類です。また、株式譲渡の有効性を証明する書類でもあるため、必要な記載事項を漏れなく記載し、決議の手続きが適切に行われたことを示す証拠として、適切に保管することが大切です。

非公開会社では、定款の規定に基づき、取締役会または株主総会での承認が必要となります。この承認手続きは、意図しない株主の参入を防ぎ、会社の経営の安定性を確保するための重要な仕組みです。

譲渡承認は、株主からの譲渡承認請求にはじまり、定款に定められた取締役会か株主総会で承認決議をします。議会の内容を議事録に記載し、作成した議事録は大切に保管。株主名簿を書き換えて手続きは完了します。承認されなかった場合は、会社が買い取るか会社が指定する第三者に譲渡するかの判断をします。

なお、相続などの一般承継の場合や、定款で定めた特定の条件下では承認が不要となるケースもあります。

このように、株式譲渡の承認制度は、会社と株主双方の利益に配慮しながら、適切な株主構成を維持するための制度として機能しています。

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執筆者:GVA 法人登記 編集部(GVA TECH株式会社)/ 監修:GVA 法律事務所 コーポレートチーム

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