株主総会議事録への押印義務とは?対象者や押印の要否について解説

IR
投稿日:2024.07.23
株主総会議事録への押印義務とは?対象者や義務の内容について解説

株主総会は会社法上、会社の意思決定機関として最も強力な権限を有しており、定時株主総会では取締役の選任をはじめ様々な議案が審議・決議されます。


こうした株主総会の開催と必ずセットになるのが株主総会議事録の作成です。では、この株主総会議事録は誰が作成し、誰が押印をする必要があるのか、それともないのかといった点について、明確に答えられる方は少ないのではないでしょうか。


そこで、本記事では株主総会議事録への押印義務と対象者について解説します。


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株主総会議事録と押印について

1.1株主総会議事録への押印義務

会社法(以下、「法」)上、株主総会を開催した場合には株主総会議事録を作成することになります(法第318条第1項)。


株主総会議事録については備置義務などが定められていますが、実は会社法上は押印義務については定めがありません(法第318条参照)。

そのため、原則として株主総会議事録へ押印をしなくても、それをもって直ちに会社法違反になるということはありません。


1.2株主総会議事録作成の意義と実務上の対応

しかし、実務的には株主総会議事録を書面で作成するケースでは、作成をした人(議長の場合が多いように思われます。)が押印をするのが通常です。それは、まず株主総会議事録を作成する趣旨から説明することができます。


会社法上、株主総会議事録を作成することが義務づけられている趣旨は、株主総会の決議事項や決議内容、審議の過程などを文書化して記録しておくことで、株主総会決議取消訴訟など事後的に株主総会の効力を争う際に株主へ判断の資料を提供する点にあります。


そのため、記載内容については株主総会における議事の経過などが正確に記載されていることが求められます。


文書に作成者の押印がされている場合、そこに記載されている内容について作成者自身の意思が現れているものとみなされます(民事訴訟法第228条第4項)。

そのため、法的には押印によって文書の最終的な責任を作成者が取ることになり、文書の記載内容の正確性について作成者が責任を負うことになります。


つまり、株主総会議事録へ押印することによって、そこに記載されている議事の内容等について責任を負わせることを通じて正確性を担保していると言うことができるのです。


また、株主総会議事録は実務的には、株主総会で決議した事項について登記を行う際の添付書類として用いられる事が主な用途となります。詳細は後述いたしますが、その際に決議した内容等に応じて株主総会議事録へ押印をすることが求められるケースがあります。


株主総会議事録へ押印が必要となるケース

先ほど株主総会議事録へは原則として押印は不要とご説明しましたが、以下のケースでは例外的に押印が必要となります。


2.1定款に定めがある場合

実務上よく見られる定めとして、「株主総会議事録へは議長が記名押印をする。」といった定めが置かれているケースは少なくありません。こうした定款の定めも、定款自治の範囲内として有効です。


そのため、自社の定款にこうした定めが置かれている場合には、株主総会議事録へ議長の押印が必要となります。


2.2代表取締役選定の場合

代表取締役の選定は、取締役会設置会社か取締役会非設置会社であるかによって手続きが異なります。取締役会非設置会社においては、代表取締役の選定方法(法第349条第3項)は①株主総会決議②取締役の互選③定款による指名の3つの方法があります。


代表取締役の選定・変更は登記事項のため、これら3つの方法により代表取締役を選定した場合には、変更の事由が生じた日から2週間以内に変更登記をする必要があります(法第911条第3項第14号、第915条第1項)。


このうち、①の株主総会決議により代表取締役を選定する場合には、変更登記の添付書類に株主総会議事録が必要となります。この株主総会議事録へは従前の代表取締役が届出印を押印する場合を除き、議長及び出席取締役全員の押印が必要となります。


これは、代表取締役の定めを置いていない取締役会非設置会社の場合には各取締役が会社を代表するのに対し、代表取締役を選定した場合には代表取締役のみが代表権を有するため、出席取締役全員にその真実性を担保させる趣旨と考えられます(法第349条第1項)。


これに対して、従前の代表取締役が株主総会へ出席している場合で株主総会議事録に届出印を押印している場合には議長及び出席取締役の押印は不要です。


このように、代表取締役の選定が新任なのか重任なのか等によって株主総会議事録への押印義務を負う者の範囲が変わる点には注意が必要です。

なお、株主総会には臨時株主総会と定時株主総会がありますが、どちらで代表取締役を選定した場合であっても押印義務者の範囲は変わりません。


株主総会議事録の押印とフォーマットの解説

では、株主総会議事録への記載内容や押印は実際上どのようにすべきでしょうか。ここからは法務局のホームページにあるフォーマットを参考に解説いたします。


なお、株主総会議事録の記載や体裁について、定められた形式は特にありません。そのため、以下で紹介するフォーマットや様式を必ずしも使用する必要はありません。



以上の記載例では、代表取締役が退任し、新たな代表取締役を株主総会内で選定する際に、選定方法を決議し、その結果代表取締役が指名した者を選定する方法がとられたケースを前提としています。


押印欄へは、先ほども解説したように議長を務める代表取締役が届出印を押印する場合であれば、記載例と異なり議長及び出席取締役全員の押印を省略することが可能です。


まとめ

株主総会議事録へ押印は、株主総会においてどういった内容を決議し、誰が押印するかによって押印義務を負う者の範囲が異なります。株主総会後のスムーズな登記手続きのために、本記事を参考に適切な者が押印を行えるようにしておきましょう。


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執筆者:GVA 法人登記 編集部(GVA TECH株式会社)/ 監修:GVA 法律事務所 コーポレートチーム

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