上場廃止とは?するとどうなるかメリット・デメリットを解説

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投稿日:2024.11.01
上場廃止とは?するとどうなるかメリット・デメリットを解説

最近、老舗企業が経営の悪化により上場を廃止するというニュースを耳にされた方も多いかもしれません。上場廃止と聞くと何となくネガティブなイメージや経営危機などを想像される方は多いでしょう。しかし、上場を廃止することにより具体的にどのような影響があるのかご存じの方は多くないのではないでしょうか。そこで、本記事では上場廃止について解説いたします。


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株式上場と上場廃止

株式上場とは

株式上場とは、証券取引所において株式公開し、一般投資家による取引を可能にすることをいいます。Initial Public Offeringの頭文字をとって、新規上場のことをIPO、上場した会社は上場会社・上場企業とも呼ばれます。株式の上場後は、自社の株式は譲渡制限のない上場銘柄として公開市場で取引され、市場での価格(株価)や時価総額が形成されることになります。

 

こうした株価を基準に新規に株式を発行することで市場から資金を調達することができるようになります。なお、2022年4月4日から東京証券取引所はこれまであった一部、二部、マザーズ、JASDAQという市場区分から、プライム、スタンダード、グロースの3つの市場区分に変化しています。これに伴い、後述する上場維持基準などが従来のものから変化しています。 


上場廃止とは

株式上場に対して、上場廃止とは証券取引所における売買の対象から自社の株式を除外することをいいます。上場廃止をすることで市場における自社の株の取引が行われなくなるため、株主を一部に集中させたり、経営権の安定化を図るといったことが可能となります。


上場廃止になる理由

株式上場に際しては、日本取引所グループが定める上場審査基準に従い、市場区分ごとに定められた、上場基準を満たすか否かの審査がされます。これに対して、上場廃止の場合にも同様に証券取引所グループが定める上場廃止基準のいずれかに該当する場合には上場廃止となります。


上場廃止基準

上場廃止基準には以下のものが定められています。

上場廃止基準の概要(日本取引所グループWebサイト)


条件を大別すると以下の6種類となります。

  1. 上場維持基準への不適合:株主数や流通株式数、時価総額、売買代金、流通株式比率など市場区分ごとに設定された基準に適合しない(参考:上場維持基準の概要
  2. 有価証券報告書等の提出遅延:監査報告書や有価証券報告書などを法定提出期限の経過後1ヶ月以内に提出しない場合など
  3. 虚偽記載または不適正意見等:有価証券報告書等に虚偽記載や、監査報告書などに不適正意見や意見の表明がなされない場合など
  4. 特設注意市場銘柄等:指定要件に該当した後、内部管理体制等について改善の見込みがないと取引所が判断した場合など
  5. 上場契約違反等:上場契約に関する重大な違反を行った場合など
  6. その他:破産や銀行取引停止、再生・更生手続や事業活動の停止、反社会的勢力の関与など定められた条件に該当した場合


以上の上場廃止基準のいずれかに該当した場合には上場廃止となり、自社の株式が証券取引所での取り扱いをされなくなることになります。

 

なお、前述の通り2022年4月4日に東京証券取引所の市場区分変更がされたことに伴い、上場維持基準への適合性については、それぞれが上場している市場区分ごとに経過措置が設けられています。経過措置の概要については以下の通りです。

上場廃止基準の概要(経過措置)(日本取引所グループWebサイト)


上場廃止したケース

では、実際に上場廃止するケースにはどのようなケースがあるのでしょうか。東京証券取引所のHPによると2022年の1月から7月の期間に上場廃止となる銘柄は41件あり、そのうち上場廃止となった理由は以下の通りです。


  • 株式併合による場合:15件
  • 株式売渡請求による場合:15件
  • 完全子会社化による場合:10件
  • 四半期報告書提出遅延による場合:1件


このうち、株式売渡請求とは、特定支配株主と呼ばれる会社の議決権の90%以上を保有する株主が、少数株主の有する株式を全て強制的に取得する手続きです(会社法第179条)。株式売渡請求が行われると特定支配株主にすべての株式が取得されることになるため、上場基準に定められるような株主数や流通株式の確保、売買高の維持が困難となります。


こうした、株式売渡請求や株式併合、完全子会社化は基本的には経営権の集中や、経営陣による自社買収(MBO)、TOBなどを背景としてなされるM&Aの一形態です。したがって、上場廃止と聞くと多くの方が想像されるような経営が悪化し債務超過した結果、経営破綻し上場廃止に至ったケースはあまり多くありません。(前述の上場廃止基準の「その他」内の「銀行取引の停止、破産手続き・再生手続・更生手続」などの項目が該当します。) また、上場廃止よりもポジティブな意味合いとして「非公開化」などと呼ばれることもあります。


上場廃止が行われる理由

株式上場を目指す企業はたくさんありますが、これに対して上場廃止はなぜ行われるのでしょうか。これについては、上記の上場廃止を行ったケースにも見られるように、M&Aなどを通じた経営権の安定化を目的として行われるケースが多く見られます。


上場を継続するためにはプライム市場であれば株主数が800名以上必要ですが、こうした株主数を維持するということは、株式の議決権の割合が分散してしまうことを意味します。そのため、株主総会により決議が必要となる事項(取締役選任議案や配当など)について、経営陣の意向のみを反映させた経営戦略の実行は難しくなる側面があります。


以上から上場廃止は様々な理由から行われますが、一般的には経営権の安定化を目的として行われるケースが多いといえます。


上場廃止が決定した銘柄は「整理銘柄」となる

上場廃止基準に該当して上場廃止が決まった銘柄は市場にて一定期間「整理銘柄」として扱われます。基準該当時に直ちに上場廃止になってしまうと投資家が売買する機会を失ってしまうため、一定期間(一ヶ月程度)は売買ができる期間を設ける制度です。


上場廃止ではないものの、注意を要する状態(特設注意市場銘柄)

上場廃止に至っていないが、上場廃止基準に抵触するリスクがある銘柄として「特設注意市場銘柄」があります。これは、有価証券報告書等の虚偽記載や監査報告書等の不適正意見など、上場廃止基準に抵触する恐れがあるものの上場廃止に至らず、取引所が内部統制や管理体制を改善する必要があると注意喚起する銘柄をいいます。


特設注意市場銘柄に指定されると、通常の銘柄とは区別して取引されます。対象企業は1年後に内部管理体制確認書を提出し、改善したと取引所が判断すれば通常の銘柄に復帰するという制度です。改善がされていないと判断された場合、上場廃止となります。


上場廃止のメリットとデメリット

上場廃止は必ずしも負の側面だけを有しているわけではない点について解説したところで、では上場廃止にはどのようなメリットやデメリットがあるのでしょうか。


上場廃止のメリット

上場廃止をするメリットは経営権の安定化が挙げられます。上場廃止後は株式が市場に流通しなくなるため、その結果、機関投資家や外部の投資家などに多数の議決権を握られる心配をする必要がなくなります。そのため、会社経営の基盤の安定化を図ることができるという点は大きなメリットと言えるでしょう。


また、上場企業には東証からの要求事項であるコーポレートガバナンスコードの他、機関投資家の要求事項などについてクリアすることが求められ、こうした事項をクリアしない経営陣に対しては選任に反対票が集まるなど、上場企業が外部から求められる事項や対応コストは年々厳しくなっています。


このような外部からの要求事項に対して答える必要がなくなるというのは管理・対応コストを削減し、本来の業務や事業に集中できるようになるというメリットもあります。


上場廃止のデメリット

上場廃止のデメリットとしては、株式が証券取引所で取引されなくなる結果、株式の市場価値が失われるため、市場からの資金調達が難しくなるという点です。また、上場企業であるということにより得ていた社会的信用や従業員などの評価も低下する場合が考えられます。

 

上場廃止までの流れ

実際に上場廃止になる際の流れについて簡単に解説します。


  1. 上場廃止基準への該当性について株主へ通知
  2. 株式の監理銘柄への移行
  3. 会社または第三者による株式の取得
  4. 上場廃止

 

以上のような流れで上場廃止に至るケースがよく見られます。上場廃止基準に該当する可能性がある場合には、①の通り株主への通知がなされ、株主は③の手続きを通じて投下資本の回収を行うことになります。


上場廃止は経営状態の悪化だけでなく、経営体制の変化のために行うケースも少なくありません。本記事を参考に基礎知識をつけながら、上場を維持し続けるべきかについて一度検討を行うのも経営における一つの選択肢といえるでしょう。


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執筆者:GVA 法人登記 編集部(GVA TECH株式会社)/ 監修:GVA 法律事務所 コーポレートチーム

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