支店廃止の登記とは?申請方法や届出、必要書類を解説

支店登記
投稿日:2024.10.16
支店の廃止の登記とは?申請方法や届出、必要書類を解説

みなさんは、銀行や保険会社などの金融機関の「支店」や民間企業における「支店」という表現を聞いたことがあると思います。

事業を営む株式会社や有限会社等は、事業拡大に伴い、本店(=本社)とは別に「支店」を設けることがあります。本店のように支店も法務局で登記できるものであり、また廃止することもできます。

本記事では支店の廃止の登記について、概要や申請方法について解説します。

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支店廃止の登記とは?

支店の開設や閉設においては、会社法などでは「設置」と「廃止」という表現をします。まずはこのうち支店の廃止について解説します。

支店の登記とは?

支店とは、本店とは別に意思決定や契約などの手続きの権限を持って営業活動ができる拠点のことをいいます。管理部門など会社運営に必要な機能まで持っていることが多く、支店長として取締役や部長クラスが務めるのが一般的です。

商法上では「ある範囲において会社の営業活動の中心となり、本店から離れ独自に営業活動を決定し、対外的取引をなしえる人的物的組織のこと」とされており、本店とは別に会社の支店を設置するための登記がなされています。つまりは登記事項証明書(登記簿謄本)にも記載されていることです。

飲食店などの店舗でも2号店以降を支店と呼ぶことがありますが、本記事でいう「支店」とは意味合いが違いますので注意しましょう。また「営業所」もよく聞く名称ですが「これも支店と同じものとして考えていいの?」と思われる方も多くいらっしゃると思います。営業所は地理的な面を重視した拠点であり、支店よりは規模が小さく、権限も弱いことが一般的です。つまりは、「支店よりも小さい拠点」という認識で良いでしょう(税務署の届出は必要です)。

支店の設置や廃止の決議は取締役会で取締役の過半数以上の賛成により決定されるものであり、登記事項となりますが株主総会の決議までは必要としません。

これまでは本店と支店との管轄法務局が異なる場合、両方での登記が必要でしたが、2022年9月1日以降は、本店所在地における支店登記のみでよくなりました。

支店廃止の登記とは?

設置した支店を何らかの理由で閉鎖・廃止する場合には支店廃止の登記申請が必要です。

なお、本店を閉鎖・削除することはできませんので注意しましょう。支店登記や廃止登記は会社種類を問わず、株式会社、合同会社、有限会社でも可能です。他の登記事項と同じく廃止が決定したら2週間以内に法務局に申請が必要ですので忘れないようにしましょう。

支店を廃止する背景・理由

支店を廃止する背景や理由にはどのようなものがあるのでしょうか。本店所在地における支店登記のみとなったこともふまえて見ていきましょう。

事業縮小・方針変更による削減や統廃合による廃止

失われた30年や団塊の世代の退職、人口減少など、企業にとっては人手不足や市場縮小という課題が重くのしかかっています。そういった景気の悪循環に陥った企業は、経営資源を集約化させるために近隣支店との機能を統廃合させています。もしくは撤退という道を選ぶ企業もあるでしょう。

また、M&Aも活発になっている昨今、業績の悪化を背景に本社に権限を集中させるなどの理由やリストラ・人員削減による費用削減の効果を見込んで、支店の統廃合が進んでいるというのも背景にあります。みなさんの住む町でも銀行など金融機関の支店が統廃合したというお知らせも記憶に新しいのではないでしょうか。

支店設置による効率化メリットが得られなくなったため

支店設置のメリットは、細分化されたエリア内で集中して商いを行えることにありますが、ITやDX化が進み、支店に契約や資金調達等の権限を持たせても経営の効率化が得られない状況になったため、支店維持管理コストを下げるために統廃合されるケースもあります。

また、コロナ禍でZoomなど非対面での営業ノウハウが蓄積され、支店の集約化が進んでいる背景も考えられます。

支店を設置していた条件が変わったため

支店設置のメリットとしては、その地域における事業や自治体との繋がりが持てるというのも特徴のひとつですが、時間経過とともにそれらとの取引等の条件が変わったため、支店を廃止するというケースもあるようです。

また、公共事業の入札や自治体の補助金を受けることに対して、その都道府県での支店登記が条件となるため現地進出し支店登記をしている企業もありましたが、その地での業務や補助金がなくなると支店を設置しておく意味がなくなるため、支店を廃止する可能性が生じます。

支店廃止の登記の申請方法

支店廃止の登記の申請は、どこにどのような手順で申請するのか見ていきましょう。
 

支店廃止の登記の手続きは2つのステップに分かれる

支店廃止の登記については、手続きが大きく2つのステップに分かれています。

①社内(取締役会)での支店廃止決議の手続き
支店廃止の案が出た場合、取締役会にて決議することが必要です。支店の廃止は重要事項なので、株主総会ではなくていいのかと思う方もいるかもしれませんが、支店関連は取締役会においての決定事項となります。(会社法第295条第2項、第362条第4項第3号)。

取締役会で支店廃止を決議するためには、取締役会設置会社では取締役会の決議、取締役会非設置会社では取締役の過半数の一致が条件となります。

②書類を作成し、法務局に登記申請
支店廃止後は法務局に登記申請します。決議後速やかに議事録を作成し、2週間以内に法務局に届け出を行います。支店の廃止は比較的シンプルな手続きなので自分たちで申請することもできますが、手間を考えれば司法書士に依頼するのもひとつの手でしょう。

支店廃止の登記を申請する場所は、本店所在地の管轄法務局になります。登記申請書や議事録を添付して申請しますが、法務局のホームページでは、支店の設置や移転の書式や記載例がダウンロードできますので、参考にしましょう。

支店登記の登録免許税
支店廃止の登録免許税は3万円(支店一箇所につき)です。自分で登記申請書を作成するなら費用は登録免許税のみかかります。司法書士など専門家に依頼する場合は報酬が必要です。

会社法改正以前は支店所在地の管轄法務局へも登録免許税の納付が必要でしたが今は不要となっていますので間違えて準備してしまわないよう注意しましょう。

支店廃止の登記の後に必要な届出

支店廃止の登記申請後にもいくつか必要な手続きがありますので忘れずに済ませておきましょう。

税金関連の異動届

支店廃止登記完了後は、税務署、都道府県事務所、市町村の役所に異動届でが必要になります。法人税、地方法人税など、対象になる税金を記載しなければなりません。各手続きについては、税理士に任せるか相談しながら行うのもひとつの手でしょう。国税庁のホームページでテンプレートも配布されています。

その他の届出

その他、以下の届出も必要になることがあります。

  • 金融機関への届出 住所変更や口座廃止などが考えられます。口座振替等の変更なども行うことを忘れずにしましょう。


  • 都道府県への届出 本業の取引にも影響してくる部分です。許認可など届出が必要な場合は忘れずに行うようにしましょう。


  • 年金事務所・ハローワークへの届出 「適用事業所全喪届」などの手続きが必要となります。


支店廃止登記後に自社がどこに何を届出すればいいのか、前もってリストアップしておくことも大事です。

内容が専門的な部分が多く、大きい会社であれば担当部署に任せることもできますが、小規模な会社だと1人の担当者が全部をせざるをえない場合もあります。基本的には、税理士や社労士のアドバイスを受けながら対応するのがよいでしょう。

支店の廃止にも登記が必要なことを忘れずに

支店を廃止する手続きは、支店設置に比較すると残務処理的になってしまい、手続きの抜け漏れが生じる可能性があります。

担当者を決めた上で、いつまでに、どこに届け出るか、必要書類は何か、専門家はどこか、進捗はどうなっているかを確認できるようにしておきましょう。

手続き以外でも、取引先へのお知らせやホームページの更新なども必要です。特に直接取引をしていた事業者にとっては影響が大きくなりますので、余裕を持って準備できるようにしましょう。

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執筆者:GVA 法人登記 編集部(GVA TECH株式会社)/ 監修:GVA 法律事務所 コーポレートチーム

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