確定申告の前に法人化すべき?判断の目安と進め方

会社設立の検討(法人化)
投稿日:2026.10.21
確定申告の前に法人化すべき?判断の目安と進め方

確定申告の前に法人化しても、前年分の確定申告は個人として行います。法人化した年は、1月1日から個人事業をやめた日までの個人の確定申告と、設立日以後の法人の申告の2本立てになり、翌年以降は原則として法人の申告に一本化されます。

迷いやすいのは、「確定申告の前に法人化すれば個人の申告を省ける」わけではない点と、法人化のタイミングで消費税・社会保険料・住民税の扱いが変わる点です。どちらが得かは売上や家族構成で変わるため、一律の正解はありません。2026年からは個人の廃業届の提出期限も変わっています。

この記事では、年ごとにどの申告が必要か、確定申告の前後どちらで法人化するかを考える判断の目安5つ、期限から逆算した進め方を整理します。

法人化しても前年分の確定申告は個人で行う

確定申告は、その年の1月1日から12月31日までの所得について翌年に行う手続きです。2月に会社を設立しても、前年に個人事業で得た所得の申告義務は消えません。「確定申告 法人 個人 どっち」と迷ったら、その所得が生まれた時点で事業をしていたのが個人か法人かで判断します。


時期

必要な申告

期限

法人化の前年分

個人の確定申告

翌年3月15日

法人化した年

個人(1/1〜廃業日)+法人

個人は翌年3月15日、法人は決算日の翌日から2か月以内

翌年以降

法人の申告(個人は原則不要)

決算日の翌日から2か月以内


個人の確定申告の期限は、令和8年分であれば2027年3月15日(月)です(国税庁「納期限・振替納税日一覧」)。

法人化した年は「個人+法人」の2本立てになる

たとえば2027年4月1日に会社を設立し、同じ日に個人事業をやめた場合は、次のように分かれます。


  • 個人:2027年1月1日〜3月31日の事業所得を、2028年2月16日〜3月15日に確定申告する
  • 法人:4月1日以降の売上・経費で決算を組み、決算日の翌日から2か月以内に法人税等を申告する


個人の最後の確定申告では、翌年に納める個人事業税の見込額を、その年の必要経費に入れられます(見込控除)。事業をやめた年に限った扱いで、翌年には経費にする事業がないためです。


見落としやすいのが個人事業税の申告期限です。 年の途中で事業を廃止した場合は、廃止の日から1か月以内に都道府県へ申告します(地方税法第72条の55。大阪府「個人の事業税の申告」)。都道府県によっては別途、事業廃止の届出に短い期限があるため、都道府県税事務所で確認してください。

確定申告の前後どちらで法人化するか|判断の目安5つ

確定申告の前に法人化するか、申告を終えてから法人化するかは、次の5点を並べて比べると整理しやすくなります。【要確認:税理士監修】


① 作業が重なる時期 1〜3月に設立すると、前年分の確定申告の準備と定款作成・登記申請が重なります。翌年には個人の最後の確定申告と法人の初回決算も控えます。


② 1月1日には設立できない 会社の設立日は、法務局に登記を申請した日です。法務局は土日祝日と年末年始(12月29日〜1月3日)は申請を受け付けないため、「暦年の初日に合わせて設立する」ことはできません。オンラインで送信しても、受付は翌開庁日扱いになります。


③ 消費税の免税とインボイス登録 資本金1,000万円未満で設立した会社は、設立1期目と2期目の消費税の納税義務が原則として免除されます。ただし、2期目は1期目の最初の6か月(特定期間)の課税売上高と給与支払額がいずれも1,000万円を超えると課税されます。インボイス(適格請求書発行事業者)に登録すると、1期目から課税事業者です(国税庁 No.6503)。取引先にインボイスを求められているかどうかで、この免除の意味は大きく変わります。


④ 社会保険料の負担 役員報酬を支払う会社は、社長1人でも健康保険・厚生年金の適用事業所になります。会社負担分と本人負担分の両方が発生するため、税額だけでなく保険料を含めた手取りで比べる必要があります。


⑤ 住民税・国民健康保険は前年の所得で決まる 住民税は前年の所得をもとに課税されます。法人化した翌年度も、個人事業時代の所得に対する住民税の請求は続きます。社会保険に加入したら、国民健康保険の脱退手続き(14日以内)も必要です。


年収・所得ごとの目安は「法人化の目安は年収いくら?売上1000万円の壁を解説」、節税の仕組みと効果が出にくいケースは「法人化で節税できる仕組みを紹介 効果が出ない場合の注意」で整理しています。

確定申告から逆算した進め方と期限の一覧

設立日を決めたら、個人側と法人側の手続きを次の順で逆算します。


手続き

提出先

期限

定款の作成・認証

公証役場

登記申請の前

設立登記の申請(=設立日)

法務局

─

健康保険・厚生年金の新規適用届

年金事務所

設立から5日以内

法人設立届出書

税務署

設立から2か月以内

青色申告の承認申請書(法人)

税務署

設立から3か月以内(1期目の終了日のほうが早ければその前日まで)

個人事業の開業・廃業等届出書

税務署

廃業した年分の確定申告期限まで

個人事業税の申告

都道府県

廃業から1か月以内

個人の最後の確定申告

税務署

翌年2月16日〜3月15日


個人の廃業届は、2026年1月1日以後に廃業した場合、提出期限が「その年分の確定申告期限まで」に変わりました(改正前は廃業から1か月以内。国税庁 No.2090)。古い解説では1か月以内のままのものがあるため注意してください。


設立登記までの手順は「株式会社設立の流れ9ステップ|登記申請の方法と費用」、個人事業の資産や契約の引継ぎは「法人化・法人成り手続き 個人事業の廃業届と引継ぎ方法」、設立後の届出全体は「会社設立後にやること13項目|提出期限の早見表つき」で確認できます。

法人化した翌年以降も確定申告が必要になるケース

法人化した翌年以降は、会社から受け取る役員報酬が給与所得になり、原則として会社の年末調整で所得税の精算が終わります。ただし、次のような場合は個人の確定申告が必要です(国税庁 No.1900)。


  • 給与の収入金額が2,000万円を超える
  • 給与以外の所得(家賃収入・副業収入など)が20万円を超える
  • 自分の会社から、役員報酬のほかに家賃や貸付金の利子を受け取っている(金額にかかわらず申告が必要)


自宅の一部を事務所として会社に貸し、家賃を受け取る形にする場合は、3つ目に当たります。申告義務がなくても、医療費控除やふるさと納税(ワンストップ特例を使わない場合)で還付を受けるには確定申告が必要です。法人化後も「確定申告は不要」と決めつけず、毎年確認してください。


法人化のタイミング全体の判断基準は「法人化のタイミングはいつ?判断基準7つと逆算の手順」でまとめています。


今すぐ変更登記手続きを始める