法人化の目安は年収いくら?売上1000万円の壁を解説

会社設立の検討(法人化)
投稿日:2026.10.20
法人化の目安は年収いくら?売上1000万円の壁を解説

個人事業主の法人化の目安としてよく挙がる数字は2つあります。1つは売上(課税売上高)1,000万円、もう1つは所得(利益)800万円前後です。前者は消費税の納税義務が生じるライン、後者は所得税より法人税のほうが税率が低くなりやすいラインを指しています。

「年収」という言葉は、売上を指す人もいれば、経費を引いた所得を指す人もいます。売上1,000万円を超えても経費が多ければ所得は小さく、法人化しても税負担が下がらないことがあります。どちらの数字で考えるかによって、結論が変わります。

この記事では、2つの数字それぞれの根拠(消費税の免税ルールと、所得税・法人税の税率比較)と、社会保険料など法人化で新たに増える負担、所得帯ごとの判断材料を整理します。

法人化の目安は「売上」と「所得」を分けて見る

まず、2つの目安が何を意味しているかを整理します。


目安

関係する税

意味

売上1,000万円

消費税

超えると2年後から課税事業者になる

所得800万円前後

所得税・法人税

個人の税率が法人の税率を上回りやすくなる


売上1,000万円は消費税の免税期間に関わるタイミングの話、所得800万円は税率の水準の話です。両方に当てはまるか、片方だけかで検討の重みが変わります。

売上1000万円の壁とは|消費税の納税義務

個人事業主は、前々年(基準期間)の課税売上高が1,000万円を超えると、その年は消費税の課税事業者になります。また、前々年が1,000万円以下でも、前年1月〜6月(特定期間)の課税売上高が1,000万円を超えると課税事業者になります(特定期間は、課税売上高に代えて給与等の支払額で判定することもできます)。


一方、新しく設立した法人には基準期間がありません。そのため、資本金1,000万円未満で設立した法人は、設立1期目・2期目が原則として免税事業者になります。これが「売上1,000万円を超えたら法人化」と言われる理由です。


ただし、次のいずれかに当てはまると免税になりません。


  • 資本金1,000万円以上で設立した
  • 2期目の特定期間(1期目開始から6か月)の課税売上高と給与等の支払額がどちらも1,000万円を超えた
  • 課税売上高5億円超の会社などに支配される法人(特定新規設立法人)に該当する
  • 適格請求書発行事業者(インボイス)の登録を受けた


取引先からインボイスを求められる業種では、法人化しても登録が必要になり、免税期間の効果は得られません。なお、個人事業者には2027年分・2028年分に納税額を売上税額の3割とする「3割特例」が設けられましたが、法人は対象外です。


出典:国税庁「No.6501 納税義務の免除」「No.6503 基準期間がない法人の納税義務の免除の特例」

所得800万円前後が目安とされる理由|税率の比較

所得税は所得が増えるほど税率が上がる累進課税で、住民税10%と合わせると次のようになります。


課税所得

所得税

住民税込み

330万円超〜695万円以下

20%

30%

695万円超〜900万円以下

23%

33%

900万円超〜1,800万円以下

33%

43%


(復興特別所得税は含まず)


これに対して、資本金1億円以下の法人の法人税率は、年800万円以下の所得部分が15%、800万円超の部分が23.2%です(15%の軽減税率は2027年3月31日までに開始する事業年度まで)。地方税を含めた実効税率でも、所得800万円以下の部分はおおむね20%台半ばにとどまります【要確認:自治体・事業規模で異なる】。


個人の課税所得が695万円を超えると住民税込みで33%に達し、法人との差が広がります。これが「所得800万円前後」が目安とされる理由です。法人化すると利益を役員報酬と法人の利益に分けられ、役員報酬には給与所得控除も使えます。仕組みの詳細は「法人化で節税できる仕組み5つ|効果が出ない場合の注意」で解説しています。


出典:国税庁「No.2260 所得税の税率」、中小企業庁「法人税率の軽減」

法人化で増える負担|社会保険料と赤字でもかかる税金

税率だけで比べると、法人化で増える負担を見落とします。主なものは次の3つです。


負担

内容

社会保険料

役員報酬を払うと、社長1人でも健康保険・厚生年金への加入が必要。会社負担分と本人負担分の両方が発生する

法人住民税の均等割

赤字でも年7万円(資本金1,000万円以下・従業者50人以下の場合の標準額)

設立・運営の費用

株式会社の設立に約20万〜25万円。決算申告を税理士に依頼する場合はその報酬


特に社会保険料は、国民健康保険・国民年金より負担額が大きくなることが多く、税金が下がった分を上回るケースもあります【要確認:税理士監修】。設立費用と維持費の内訳は「法人化の費用と会社設立後の維持費は?赤字でもかかる年7万円」にまとめています。

所得帯別に見る法人化の判断材料

所得帯ごとに整理すると次のとおりです。実際の損益は経費や家族構成で変わります。


事業所得の目安

税率差

確認したいこと

500万円未満

小さい

均等割・社会保険料の増加分を吸収できるか

500万〜800万円

出始める

役員報酬の設定次第で効果が変わる

800万円超

大きくなりやすい

社会保険料を差し引いても税負担が下がるか


売上1,000万円を超えている場合は、上の表に加えて「インボイス登録の要否」も確認します。登録が必要なら、消費税の免税期間は判断材料から外れます。


試算は、現在の確定申告書の数字をもとに税理士へ依頼するのが確実です。GVA TECHがGVA 法人登記ユーザー135社に行った調査でも、設立前後に接点のある士業の1位は税理士(71.1%)でした。

数字以外で法人化を検討するきっかけ

所得や売上の水準とは別に、次のような事情が法人化のきっかけになることもあります。


  • 取引先から法人との契約を求められる
  • 融資や補助金の申込みで、法人のほうが審査に必要な書類を整えやすい
  • 従業員を採用し、社会保険を整備したい
  • 事業上の債務について、出資額を限度とする有限責任にしたい


判断基準の全体像と、法人化する時期から逆算した準備の手順は「法人化のタイミングはいつ?判断基準7つと逆算の手順」で解説しています。

法人化を決めたら設立の手続きへ

法人化を決めたら、定款の作成、資本金の払込み、設立登記申請と進みます。全体の流れと費用は「株式会社設立の流れ9ステップ|登記申請の方法と費用」、個人事業の廃業届や資産の引継ぎは「法人化・法人成り手続き 個人事業の廃業届と引継ぎ方法」で確認できます。


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