法人化で節税できる仕組みを紹介 効果が出ない場合の注意

会社設立の検討(法人化)
投稿日:2026.10.21
法人化で節税できる仕組みを紹介 効果が出ない場合の注意

法人化で節税できる仕組みの中心は、所得税と法人税の税率差と、役員報酬に使える給与所得控除の2つです。個人の所得税は所得が増えるほど税率が上がる累進課税(5〜45%)ですが、中小法人の法人税は所得800万円以下の部分が15%にとどまります。

ただし、法人化すれば必ず税金が下がるわけではありません。会社には社会保険の加入義務があり、赤字でも法人住民税の均等割がかかります。税額が下がっても、社会保険料や維持費で効果が相殺されるケースは少なくありません。

この記事では、法人化で節税できる4つの仕組み、税率差から見た節税額の目安、節税効果が出ない場合の注意点を、国税庁などの一次情報をもとに、2026年10月時点の制度で整理します。

法人化で税金が下がる仕組み 所得税と法人税の税率差

個人事業の利益には所得税と住民税、法人の利益には法人税などがかかります。両者は税率の構造が違います。


課税される所得

個人(所得税+住民税)

中小法人(実効税率)

330万〜695万円

約30%

約21〜23%

695万〜900万円

約33%

約23〜34%

900万〜1,800万円

約44%

約34%

1,800万円超

約51〜56%

約34%


※個人は所得税(復興特別所得税を含む)の限界税率に住民税10%を加えた値で、個人事業税(多くの業種で税率5%)は含みません。法人は東京都・資本金1億円以下・標準税率で、所得400万円以下は約21%、800万円以下は約23%、800万円超は約34%です。


所得税率は国税庁「No.2260 所得税の税率」で確認できます。法人税の軽減税率15%は2027年3月31日までに開始する事業年度が対象の特例です(中小企業庁)。


2026年4月1日以後に開始する事業年度からは防衛特別法人税(基準法人税額から500万円を控除した額の4%)が加わりますが、基準法人税額500万円以下の法人には実質的な負担は生じません。

役員報酬で節税できる理由 給与所得控除と定期同額給与

法人化すると、経営者は会社から役員報酬(給与)を受け取ります。給与には給与所得控除が適用されるため、同じ金額を事業所得として受け取る場合より課税される所得が小さくなります。


給与の収入金額

給与所得控除額

360万〜660万円

収入×20%+44万円

660万〜850万円

収入×10%+110万円

850万円超

195万円(上限)


たとえば役員報酬が年600万円なら、164万円が控除されます。会社側では役員報酬を経費(損金)に入れられるため、利益を会社と個人に分け、それぞれ低い税率の範囲に収めることが節税の基本構造です。なお、令和8年分から給与所得控除の最低保障額は74万円(令和8・9年分の特例を含む)に引き上げられました(財務省「令和8年度税制改正の大綱の概要」)。


注意したいのは、役員報酬は自由に変えられない点です。損金に入れるには、原則として毎月同額を支給する定期同額給与である必要があり、改定は事業年度開始から3か月以内の決議などに限られます(国税庁「No.5211 役員に対する給与」)。期中に利益が増えたからといって報酬を上げると、増額分は損金に入りません。

そのほかの節税の仕組み 家族への報酬・退職金・欠損金・消費税

税率差と給与所得控除のほかにも、法人ならではの仕組みがあります。


  • 家族への役員報酬:家族を役員にして報酬を支払えば、所得が分散され、一人あたりの税率が下がります。ただし実際の職務内容に比べて高すぎる部分は損金に入りません
  • 役員退職金:退職所得は「退職所得控除」を差し引いた後に2分の1を掛けて課税されるため、給与より税負担が軽くなります。役員としての勤続年数が5年以下の場合は2分の1の計算が適用されない点に注意が必要です
  • 欠損金の繰越:青色申告の法人は赤字(欠損金)を最長10年繰り越せます。個人事業の純損失の繰越は3年です
  • 消費税の免税期間:資本金1,000万円未満で設立した法人は、第1期・第2期が原則として消費税の免税事業者になります


消費税の免税には例外があります。第1期の開始から6か月間(特定期間)の売上高と給与支払額がいずれも1,000万円を超えると、第2期から課税事業者になります。インボイス発行事業者に登録した場合も課税事業者です。また、インボイス導入時の負担軽減策「2割特例」は2026年9月30日を含む課税期間までで終了し、令和8年度税制改正で新設された「3割特例」は個人事業者のみが対象です。

法人化で節税できる金額はいくら?|税率差から見る目安

節税額は所得・家族構成・経費によって大きく変わるため、一律の金額は示せません。ここでは税率差だけに注目した目安を紹介します。


個人の課税所得が900万円を超えている場合、増えた所得には約44%(所得税+住民税)がかかります。同じ所得を法人に残した場合、所得400万円以下の部分の実効税率は約21%です。利益のうち400万円を法人に残すと、単純計算で約90万円(400万円×約23ポイント)の差になります。


ただし、この数字には次の要素が含まれていません。


  • 社会保険料の増加分(次の章で説明します)
  • 法人の維持費(均等割・税理士報酬など)
  • 法人に残したお金を個人で使うときの課税(配当にすると所得税が別途かかります)


所得別の目安や法人化を検討し始める年収の考え方は、「法人化の目安は年収いくら?売上1000万円の壁を解説」で整理しています。

法人化しても節税効果が出ない場合の注意

税額が下がっても、次の負担が増えると手元に残るお金は増えません。


負担

内容

社会保険料

社長1人でも健康保険・厚生年金の加入が必須

法人住民税の均等割

赤字でも年7万円(東京23区・資本金等1,000万円以下・従業者50人以下)

税理士報酬

法人の決算・申告は個人より複雑で、依頼すると費用がかかる

設立費用

株式会社は登録免許税(最低15万円)と定款認証手数料(1.5万〜5万円)など


影響が最も大きいのは社会保険料です。たとえば役員報酬が月50万円の場合、健康保険(協会けんぽ東京支部・40歳未満、子ども・子育て支援金を含む10.08%)と厚生年金(18.3%)の合計は月約14.2万円、年約170万円です(会社負担と本人負担の合計)。個人事業で払っている国民健康保険・国民年金との差額が、節税額を上回ることもあります。保険料率は協会けんぽ「令和8年度保険料額表」で確認できます。


厚生年金は将来の年金額に反映されるため、単純な「負担増」とは言い切れません。税と社会保険料を合わせて比較することが判断のポイントです。


維持費の詳細は「法人化の費用と会社設立後の維持費は?赤字でもかかる年7万円」で解説しています。

法人化を判断する前に確認すること

節税を目的に法人化を検討するなら、次の材料をそろえてから比較すると判断しやすくなります。


  • 直近の事業所得と、今後の見込み
  • 現在の国民健康保険料・国民年金保険料の年額
  • 役員報酬をいくらにするか(定期同額給与のため、期首に決める必要がある)
  • 家族を役員にする予定があるか
  • 消費税の課税事業者になる時期(インボイス登録の有無)
  • 法人化後の維持費(均等割・税理士報酬)


設立前後に接点のある士業の1位は税理士で、71.1%にのぼります(GVA 法人登記ユーザー135社調査)。具体的な試算は税理士に相談するのが確実です。


法人化の判断基準と、設立日から逆算する手順は「法人化のタイミングはいつ?判断基準7つと逆算の手順」でまとめています。株式会社設立の全体像は「株式会社設立の流れ9ステップ|登記申請の方法と費用」をご覧ください。


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