有限会社で監査役を設置していたが、会社の規模や後継者の不在から監査役制度を廃止したいと考える会社は少なくないでしょう。しかし、監査役制度をどのような手続きで廃止すればよいのか、どういった場合に廃止できるのかについて知っている方は多くはないでしょう。そこで、本記事では有限会社の監査役の廃止について解説します。
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有限会社の監査役
株式会社においても株式会社の一類型である特例有限会社においても監査役の設置は可能です。では有限会社の監査役と株式会社の監査役はどのように異なるのでしょうか。ここでは有限会社の監査役について解説します。
株式会社と有限会社の監査役の違い
株式会社の監査役と有限会社の監査役はどのように異なるのでしょうか。株式会社における監査役とは株主総会の決議によって選任され、業務執行を行う取締役の職務執行を監査する役割を果たしています。つまり、取締役の業務執行に法令違反や定款違反がないかチェックする立場も原則としてあります。
これに対して有限会社の監査役は株主総会の決議により選任されるのは同じですが、監査役の監査の範囲としては監査の範囲が会計に関するものに限定さる旨の定款の定めがあるものとみなされています。
有限会社の監査役について詳細解説
有限会社の監査役の監査の範囲は前述の通り会計に限定されています。
また、株式会社と異なり有限会社の監査役には任期がありません。そのため株式会社のように任期満了に伴う役員変更といった登記が必要ない点は有限会社の特徴といえるでしょう。
さらに株式会社と異なる点として株式会社では監査役は氏名が登記事項とされているのに対し、有限会社では氏名だけでなく住所も登記事項とされています。
そのため有限会社の監査役の場合には氏名だけでなく住所が変更となった場合にも変更登記が必要になる点は押さえておきましょう。
また、株式会社の場合には監査役の監査の範囲を会計に限定する場合には、定款で定めるだけでなく、「監査役の監査の範囲を会計に関するものに限定する旨の定款の定めがある」旨の登記が登記事項となりますが、有限会社では法令により監査役の監査の範囲が会計に関するものに限定されているとみなされているため、登記による公示が不要とされています。
有限会社の監査役の廃止とは?
では後任者がいなくなったり、会社の規模から言って監査役が不要になった場合には有限会社の場合監査役を廃止することが考えられます。ここでは監査役の廃止について詳しく解説します。
有限会社の監査役は必須ではない
株式会社のうち、取締役会設置会社や公開会社、大会社といった会社は監査役の設置が義務となります。そのためこれらの会社では監査役を廃止することはできません。これに対して有限会社の場合には監査役の設置は義務とはなっていません。
したがって定款で監査役を設置する旨の定めを置いた場合に設置できる任意的な機関となっています。そのため、定款の定めを排除することで監査役自体を廃止することができるのです。ただし、単に監査役を辞任するだけでは足りず、後述するような手続きが必要となる点には注意が必要です。
監査役設置の定款の定めを削除することにより廃止できる
前述の通り有限会社では定款の定めにより監査役を設置していることから監査役を設置する旨の定款の定めを削除することで監査役を廃止することができます。というより、監査役が辞任するだけでは定款の定めがそのまま残るため監査役辞任の登記ができなくなってしまいます。監査役を廃止するためには後任が必要ないこと、つまり監査役に関する定款の定めを削除する必要があるのです。
有限会社の監査役を廃止するための手続き
では、有限会社の監査役を廃止するためには具体的にどのような手続きが必要になるのでしょうか。ここでは監査役を廃止するための手続きについて解説します。
有限会社の株主総会特別決議
前述の通り監査役を廃止するためには有限会社の定款を変更する必要があります。そのため定款を変更するための手続きとして株主総会の特別決議を経る必要があります。有限会社の特別決議の要件は、総株主の半数以上でかつ、総株主の議決権の4分の3以上の賛成を要します。
これに対して株式会社の株主総会の特別決議の決議要件は、株主総会において議決権を行使することができる株主の議決権の過半数(3分の1以上の割合を定款で定めた場合にあっては、その割合以上)を有する株主が出席し、出席した当該株主の議決権の3分の2(これを上回る割合を定款で定めた場合にあっては、その割合)以上に当たる多数をもって決定します。このように株式会社と有限会社とでは特別決議と要件が異なっているため注意しましょう。
株主総会を開催したら株主総会議事録を作成し、いよいよ変更登記申請です。有限会社の場合、監査役設置会社である旨は登記事項とはなっていません。そのため、登記の事由としては監査役の変更のみとなります。
定款の変更ができたら変更登記申請を行います。
登記申請は株主総会の日から2週間以内に行う必要があります。これを怠ると科料に処せられる可能性もあるため確実に登記は行うようにしましょう。
変更登記申請の必要書類は株主リストと定款、株主総会議事録が必要になります。
また、登記の登録免許税の額は1万円(資本金の額が1億円を超える場合は3万円)です。
監査役の廃止のためには辞任だけでなく株主総会決議も必要
有限会社において監査役を廃止するためには、監査役が単に辞任するだけでなく株主総会の特別決議により監査役を設置する旨の定款の定めを排除する必要があります。
単に辞任届などを添付書類として登記しようとしても、定款に監査役を設置する旨の定めがある限りは後任の監査役が必要となります。
必ず株主総会の特別決議を行い、定款の定めを排除しなければ監査役を廃止することはできません。
本記事を参考にスムーズに監査役の廃止を行いましょう。
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