会社が資金調達を行う手段は、主に借り入れと新株発行によることが考えられます。借り入れと一口にいっても、現在では様々な方法があり、会社の規模や必要とする金額などに応じた方法を選択する必要があります。今回はこうした借り入れによる資金調達のうち「コミットメントライン契約」について解説します。
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コミットメントライン契約とは
コミットメントライン契約とは、一定期間内に銀行と顧客との間で設定した極度額の中で、その期間内であれば何度でも資金の借り入れや返済を行う事ができる契約のことをいいます。
銀行側はその枠内で顧客から求められる融資について原則として拒否することができず、融資を約束する(コミットする)点に特徴があります。
また、顧客の側は借入額の返済以外にコミットメントフィー(手数料)を支払う必要がある点も通常の融資と異なる、コミットメントライン契約の特徴です。
コミットメントライン契約が用いられるシーンやメリット
コミットメントライン契約は企業の資金調達方法として利用されますが、特に安定した資金調達を行いたいと企業が希望する場面で利用されます。というのも、先ほど少しご説明した通り、コミットメントライン契約では銀行は原則として貸し付けを行うことを拒否することができません。
これに対して、一般的に用いられる借り入れ方法である当座貸越では、コミットメントライン契約と同様に貸付枠が設定されますが、銀行はこの上限に達していない場合でも融資を拒否することができるように契約上定められています。そのため、コミットメントライン契約は、安定した資金の調達方法として広く利用されているのです。
昨今では新型コロナウイルスによる市場の変化など、経済に対して様々な影響を及ぼす要因があり、多くの企業で資金調達の必要がありました。コミットメントライン契約では、こうした市場や経済状態の変化に影響されること無く、資金調達が可能となるため多く用いられました。
コミットメントライン契約を利用できる条件
このように安定した資金調達方法として非常に魅力的なコミットメントライン契約ですが、利用できる企業が原則として限られている点にも特徴があります。というのも、銀行側はあらかじめ設定した極度額の範囲内で融資を拒否することができないため、借り入れ企業に対しては資力を求めることになります。
また、コミットメントライン契約については特定融資枠契約に関する法律の適用がある会社と締結する場合がほとんどです。同法の適用対象となる会社の主な条件は以下の通りです。
① 会社法上の大会社
② 資本金3億円超の株式会社
③ 純資産額10億円超の株式会社
④ 金融商品取引法の規定による監査証明を受ける必要のある株式会社
⑤ 上記 1~4に掲げる法人の子会社
いずれも、いわゆる上場企業やその子会社等を想定したものです。そのため、コミットメントライン契約は基本的には中小企業や未上場の企業は利用が難しいという点はおさえておきましょう。
コミットメントライン契約の契約方法
コミットメントライン契約には2種類の契約方法があります。
①バイラテラル方式(相対型)
バイラテラル方式とは、融資を行う各金融機関と個別にコミットメントライン契約を締結する方法です。企業と1つの銀行との間で契約を締結する方式です。
②シンジケート方式(協調型)
これに対してシンジケート方式では、アレンジャー(幹事金融機関)と呼ばれる銀行を中心に、複数の金融機関と一つの契約書に基づき、同一条件でコミットメントライン契約を締結する方法です。
一つの契約で複数の銀行から資金調達が可能となるため、極度額を高額に設定することが可能となるため、企業にとっても多額の資金調達が可能というメリットがあります。また、銀行にとっても複数の銀行が融資を行うため、貸し付けに伴うリスクを最小限に抑えることができるという点でメリットがあります。
コミットメントライン契約の内容や条項
コミットメントライン契約特有の契約内容や条項としては以下の様なものが挙げられます。利用する企業から見ると負担やデメリットになる可能性もあるので十分理解しておきましょう。
①手数料
前述したとおり、コミットメントライン契約では当座貸越と異なり、手数料が発生します。また、コミットメントライン契約では手数料は実際に借り入れした金額をベースに算出された手数料では無く、極度額をベースにした手数料となるケースが多いです。そのため、手数料の計算のベースとなる金額と手数料割合がどのくらいに設定されているかという点はコミットメントライン契約を確認する際には重要なチェックポイントとなります。
②表明保証条項
コミットメントライン契約は通常の借り入れと比較して審査が非常に厳しく、契約開始時や契約期間中に借入人に対して、財務状況を一定の水準に保つことを義務づけさせている条項や表明保証させる条項が設定されているケースが多く見られます。
こうした、条項に違反した場合の効果(契約終了するのか、それとも一定期間内に改善すれば良いのか)について確認しておき、事前にこうした状況になる可能性がないかは確認した上で契約を締結するようにしましょう。
③契約期間中の弁済
コミットメントライン契約では、前述の通り極度額の範囲内であれば借入人は何度でも借り入れが可能となっていますが、借入金の弁済について利息との関係から借り入れから一定期間内は弁済できないという条項が設定されているケースがあります。
逆に考えるとその期間内に発生する利息については必ず負担することになるため、契約締結前にこうした条項が無いか、またその場合に負担することになる利息はいくらなのかという点は確認しておきましょう。
④利息
コミットメントライン契約も借り入れのため、当然利息が発生します。手数料と利息がコミットメントライン契約を用いた資金調達のコストとなるため、必ず確認しておきましょう。
まとめ
極度額を必ず借り入れる事が可能となるコミットメントライン契約は、安定した資金調達方法として非常に魅力的ですが、審査や条件が厳しい点や契約内容が複雑などのハードルもあります。本記事を参考にコミットメントライン契約について適切に理解した上で、適切な資金調達を行いましょう。
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