会社は、ビジネスを行い、利益を上げることを目的として設立されるのが通常です。しかし、ビジネス拡大を目的とせず、資産管理のみを行う特殊な会社も存在します。
本記事ではこの資産管理会社について、その概要や設立のメリット、注意点などについて解説します。「資産管理会社とは何だろう?」「なぜ個人で管理できる資産を会社で管理するのか?」といった疑問を持っている方は、ぜひご参考ください。
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資産管理会社とは
資産管理会社は、営利を目的としない点で、通常の会社と大きく異なります。本項では、資産管理の通常の会社とは異なった性質について解説します。
資産管理会社の概要
資産管理会社は、不動産投資により所有している不動産や株式といった資産を保有する人が設立する会社です。営利ではなく、保有資産の管理を会社の設立目的としており、「プライベートカンパニー」と呼ばれることもあります。一般的な企業とは異なり、投資家などの資産家や富裕層向けの会社として存在しており、基本的に資産管理以外の事業活動を行いません。
会社種類には、株式会社や合同会社、合名会社など複数の設立形態があります。しかし、それらとは別に資産管理会社という特別な会社形態が存在しているわけではありません。
そのため、資産管理会社も、その設立手続きにおいては、定款の作成や、設立登記の手続きなどが必要となり、法人の設立方法は一般の会社と異なることはありません。設立形態としては株式会社や合同会社が選択されることが多くなっています。
事業承継としては、資産管理外会社を設立し、事業を法人に移管することで、後継者への事業承継をスムーズに行うことができ、相続税対策にもなります。
節税が設立目的
資産管理会社は、資産管理を設立目的とする点以外は、通常の会社と同様です。では、なぜ個人でも管理できる資産をわざわざ会社で管理するのでしょうか。
詳しくは後述しますが、資産管理会社を設立することで、大きな節税効果が得られます。そのため、一定以上の資産を有する人は、資産管理会社を設立することで節税を行っています。
資産管理会社も収益を上げている
既に述べた通り、資産管理会社は、営利を目的としていないことが特徴です。しかし、全く利益を上げていないかといえば、そうではありません。
資産管理会社も、その保有する不動産の賃料(賃貸経営者の場合)や、株式の配当によって利益を上げ、納税しています。そのため、多くの収益不動産を保有する人などは、資産管理会社設立による節税効果を大きくすることが可能です。
会社の設立コストの低さも背景に
2006年の新会社法施行に伴って、資本金1円からでも会社設立が可能となっています。そのため、資産管理会社設立に掛かるコストは、司法書士への報酬や登録免許税など、僅かな費用の範囲に留まります。この設立コストの低さも、資産管理会社設立が勧められる理由の一つです。
損益通算の対象は?
損益通算とは、ある所得で生じた赤字や損失をほかの所得で生じた黒字で相殺できる制度です。
資産管理会社は、法人であるため、損益通算の対象は以下の通りです。
- 不動産所得
- 株式等の譲渡所得
- 事業所得
- 退職所得
- 山林所得
- 雑所得
資産管理会社を設立するメリット
資産管理会社は、保有資産の管理を通した節税対策を目的として設立されます。次から資産管理会社設立のメリットについて、項目を分けて解説を行います。
所得に対する節税ができる
日本においては、個人事業と法人で課せられる税金の種類や税率が異なっています。
個人事業主であれば、所得税や住民税、個人事業税が課せられることになります。また、個人事業に対しては、課税対象金額が大きいほど税率も上がる累進課税制度が採用されており、収入が大きい人にとって、節税は切実な問題です。
例えば、所得税における課税所得が4,000万円を超えると、税率は45%となり、住民税は一律10%であるため、合わせて55%もの負担になってしまいます。折角得た所得の過半を税金として徴収されるのでは、節税を考えるのも無理からぬことでしょう。
一方で法人に対して課される税金は、法人税や法人事業税、法人住民税などがあります。法人税は、資本金1億円以下で年所得が800万円の中小法人(中小法人の軽減税率の特例適用後)であれば、実効税率はおよそ23.2%となります。23.2%という数字は、所得税率の最高税率である45%と比して、大幅に小さく、年所得が400万円以下であれば21.4%と、更に低い税率です。
所得税と法人税は、どちらも所得に対して課せられる税金です。しかし、税率は大きく異なり、所得が高い人であればあるほど、管理会社を設立するメリットが大きいことがわかります。
所得の分散
一般的に所得を分散したければ、贈与という形を取ることが通常です。しかし、贈与には最高で55%もの贈与税が掛かってしまいます。かといって贈与税の非課税枠である110万円以内に抑えているのでは、所得の分散効果も薄れてしまいます。
資産管理会社設立においては、家族を役員とすることも可能となっています。家族を会社の役員とすることによって、役員報酬を支払うという形で所得移転が可能です。このことによって、贈与税を気にすることなく、所得分散が図れます。
所得分散によって、所得を低くすることができれば、徴収される税額も低下することになるため、資産管理会社設立の大きなメリットとなっています。
なお、個人事業であっても、家族を専従者とすることで、節税は可能ですが、法人化した場合よりも限定的な効果しか得られません。
欠損金を最長10年間繰り越せる
資産管理会社を設立すれば、欠損金の繰越期間が延長されます。個人事業であれば、欠損金の繰越が3年までであるところ、法人化すれば最長10年まで繰り越すことが可能となります。所有する資産価額が大きく、変動の影響が大きい資産管理会社にとっては大きなメリットになります。
繰り越した欠損金は、将来の所得(黒字)と相殺することで、徴収される税額を抑えるために利用できます。そのため、繰越期間が延びる資産管理会社の設立は、節税における大きな助けとなるでしょう。
相続対策になる
資産管理会社の設立は、所得における節税だけでなく、相続時における節税にも大きな効果を持っています。日本では、資産を取得した時だけでなく、相続した際にも相続税として税金が徴収されるため、相続への備えは資産家にとって必須の税金対策です。
一般的に相続対策といえば、生前贈与制度を利用することが多くなっています。事前に資産の保有者である被相続人から、相続人に資産を贈与しておけば、課税対象となる相続財産も減少することになります。
しかし、既に述べた通り、贈与では最大55%もの税負担が課せられる恐れがあります。また、相続開始前3年以内に贈与が行われた場合には、贈与した資産も相続税の対象となってしまい、タイミングによっては、節税の効果が発揮できません。
これに対して、資産管理会社を設立し、役員報酬という形で資産を移転しておけば、贈与における3年以内の制限の対象にもなりません。また、役員報酬として資産を移転することで、相続税の課税対象が減少するだけでなく、相続税支払いの原資とすることも可能です。
資産管理会社に資産を一本化しておけば、資産管理会社の株式を分配して相続させることも可能です。相続財産が不動産などの実物資産の場合は、遺産分割協議が紛糾することも多いですが、相続財産を株式とすることによって、相続時の不公平感を軽減し、相続争いを防止することにも繋がります。
資産会社設立の注意点
ここまでの解説で資産管理会社設立には、多くのメリットがあることが分かりました。しかし、メリットばかりでなく、デメリットといえる注意点も存在するため解説します。
資産を自由に利用できない
資産管理会社に移転した資産は、資産管理会社所有となります。そのため、資産管理会社が所有する資産は、オーナーといえども自由に処分することはできません。
個人的な目的で資産管理会社の資産利用したいのであれば、資産管理会社からオーナーである個人に資産を移転させることが必要です。その場合には、役員報酬や配当という形で会社から支払うことになります。しかし、その際に総合課税の対象となってしまい、所得税と住民税が発生してしまうため、注意が必要です。
事務仕事・コストが増える
個人事業であれば、事業の進め方や予算配分など、全ての経営判断を自分一人で決定可能です。しかし、会社であれば、重要事項については株主総会や取締役会の決議が必要となります。仮にオーナー一人でであっても、議事録の作成自体は必要であるため、どうしても個人事業に比べて手間が増えてしまいます。
また、帳簿付けや税務申告においても、個人事業より法人の方が複雑な場合が多く、事務仕事の増加は避けられません。また、会計や税務申告に誤りがあれば、税務調査の対象となり、ペナルティが科せられる恐れもあります。
個人事業主が法人成りする際には 、専門の司法書士や税理士に相談すると良いかもしれません。
メリット・デメリットを理解して資産管理会社を活用しましょう
税負担を減らしたいと考えるのは誰であっても同様で、所得の多寡を問うものではありません。しかし、日本においては、所得や資産の多い人ほど、税負担も多くなってしまいます。
資産運用や税負担の減少を考えているのであれば、資産管理会社の活用を検討してみましょう。資産が多ければ多いほど、設立のメリットも大きく、家族に対して多くの資産を残すことも可能です。本記事が参考になれば幸いです。
資産管理会社の設立・運用に悩んだらコンサルティングの利用も
これまで資産管理会社について解説をしてきましたが、そもそも設立や運用について悩んでいたり、専門家に相談したい場合もあります。そんなときは資産管理会社専門のコンサルティングサービスがありますので、利用してみることをオススメします。
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